吸いガラからの毒性と環境への影響
以前に、火が消えた吸いガラからも有害物質が発生しているという研究結果を紹介しましたが、
→火が消えたタバコの吸い殻からも有害物質が発生…! 消しても消えない受動喫煙 ’20年2月
『STOP受動喫煙 新聞』38号・42号
環境への負荷について、石田記者が調べ上げ、解説しています。
ポイ捨てされた「タバコの吸い殻」はどれくらいの「毒性」があるのか
=石田雅彦ライター、編集者(’23年)7/2(日) 9:30=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。
“水族館で、屋外に置いていた水槽の魚類がほぼ死んでしまった……水槽内を調べると、タバコの吸い殻が1本出てきたということで、これが原因だった可能性が”
“ 海水浴場へ行くと、よくタバコの吸い殻を見つける。シーズンではない清掃前は特にひどい……浜辺で吸われてそのままポイ捨てされたものもあるが、多くは繁華街などの街中でポイ捨てされ、それが排水口から河川を経て海へたどり着き、浜辺に漂着したものだ”
“吸い殻は小さくて軽く水に流れやすいため、雨が降った後などは特に海へ流れ、浜辺を汚染する。喫煙者はよく道路脇の排水口をめがけてポイ捨てするが、そのタバコの吸い殻がやがて海へ至り環境を汚染することを知っているのだろうか”
“吸い殻は毒物のかたまりだ……ハゼ(ムツゴロウに似た種類……)に対し、タバコの吸い殻を浸した水溶液がどんな影響を及ぼすか調べたところ、喫煙後の吸い殻が最も毒性が強く、低濃度の水溶液でも血液中のヘモグロビンが減ったり白血球数が大きく増えるなど、ハゼを殺す危険性があることがわかった”
“ムール貝(ムラサキイガイ……)に対するタバコの吸い殻の影響を調べたところ、タバコ由来の化学物質……重金属の体内蓄積、免疫系の変化、抗酸化反応や神経毒性反応などの増加……DNA損傷といった変化が観察された……ムール貝にはニコチンを代謝する酵素がないため、ニコチンを吸収しても代謝せず、神経毒性が悪影響を及ぼすと考えられている”
“吸い殻による生態系の影響については、ここにきて多くの研究が出てきている。海の夜光虫の発光が減ったり、貝類の細胞の自死が増えたり、ゴカイのDNA損傷が増加し、生態が変化して穴を掘らなくなるなどの悪影響が報告されている”
“ 1本のタバコの吸い殻が環境中へポイ捨てされると、1リットル当たり2.5ミリグラムの濃度に……ニコチンは殺虫剤に使われるように毒性も強く、ヒトの大人の経口致死量は30ミリグラムから60ミリグラム……吸い殻1本でも小さな生物にとっては生死に関わる濃度になる”
“吸い殻にはニコチン以外にも多くの有害物質が入っていて、ヒ素、重金属類、多環芳香族炭化水素といった有害物質が検出……それは加熱式タバコの吸い殻でも同じ”
“加熱式タバコにも付けられているタバコのフィルターは一種のプラスチック繊維だ。自然環境中へ放棄されると分解されにくく、マイクロプラスチックとして長期間残存する汚染物質となるフィルターは、そのままの形で環境中に存在し続け、2年経っても38%ほどしか分解されず、完全に分解されるまでには2.3〜13年ほどかかる”
“ 毎年、世界で約6兆個のタバコの吸い殻が生まれ、そのうちの4兆5000億個がポイ捨て……吸い殻やタバコ由来の廃棄物は世界の海岸で清掃された総廃棄物の19〜38%……生産量の3/4が吸い殻としてポイ捨てされるとすれば、日本の場合、年間1000億本以上がポイ捨てされているというわけだ”
“諸外国も悩まされている。アイルランドはタバコ会社にポイ捨てされた吸い殻の清掃費用の負担を義務づけ、スペインではタバコ会社にポイ捨てされた吸い殻の撤去費用の支払いを義務づけるなどの動きがあり、これはEU全体の取り組みで他のEU各国にも広がる可能性が……オーストラリアでは、プラスチック汚染の原因になっているタバコのフィルターを規制する動きがある。タバコにフィルターを付けられなくなれば、タバコの売り上げが減り、環境への負荷も減ると”
吸いガラ6兆のうち4.5兆が不法投棄されているとは!
そして筆者は最後に、短絡な「喫煙所が必要」論を事実で否定しています。
“ポイ捨ては、いくら喫煙所を増やしても解決しない。街中の喫煙所へ行くとわかるが、喫煙所の周辺の植え込みにはたくさんのポイ捨てタバコを見つける”
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