受動喫煙対策「先進市」が「後退」 ~ 奈良県香芝市
情けない話です。
「先進」だったはずの自治体が、露骨に後退しました。
受動喫煙対策先進市で喫煙所設置決議 奈良・香芝 反対の動きも
=『毎日新聞』2022/1/19 21:14=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。
“改正健康増進法の成立(2018年7月)に先駆けて議員提案で受動喫煙防止条例を定め、奈良県内12市で最も早く市庁舎(議会棟を含む)など公共施設の敷地内禁煙を実現した香芝市で、これまでとは逆行するような動きが……公共の場所に屋外分煙施設(喫煙所)の設置を求める決議を可決した……“先進”自治体に、一体何があったのか”
“「市の大きな安定財源とされるたばこ税の継続的・安定的な確保にも資する」”
“ 改正法は……「特定屋外喫煙場所」の設置を認めている。しかし、香芝市は……敷地内禁煙とした際、当時設置されていた屋外分煙施設も一斉に撤去。また、条例では市民にも受動喫煙防止の努力義務を課す徹底ぶりだった”
“「全面禁煙が一番いいのは明らか。でも議会で決議された以上、(屋外分煙施設の)設置も検討せざるを得ない」。受動喫煙対策を進めてきた市保健センターの担当者は戸惑いを隠さない”
“「役所の敷地を一歩出て喫煙している人がおり、受動喫煙が起きている」。決議を提案した真鍋亜樹議員は、理由をこう説明する”
“「たばこ税の議論もあって提案を決めた」というが、市税収入全体(約94億円)に占めるたばこ税の割合は3・1%(約3億円)だ”
“賛成した議員にも話を聞くと、「役所近くの河川敷で職員や議員がたむろして喫煙していて、あまりにも見苦しい。囲い込む場所が必要」との言い分”
またもや、“タバコ税収のためにも喫煙所を” 論が出ています。だからタバコの税など廃止すべきなのですが、記事ではちゃんと“全体の3.1%にすぎない”とは書いています。
愚論・暴論に対して、やはりまともな声もあがっているようです。記事の続きです。
“ これに対し、市のある幹部職員は「マナー違反をやめてもらう方法は必要だが、喫煙所の設置はさすがに時代に逆行するのでは」とし、これまでの対策で「敷地内では受動喫煙のリスクはほぼないと考えている」”
“ 「議員提案でルール化したはずの受動喫煙対策を議会自らゆるめるのか」「職員や議員の喫煙行動を正すのが先では」――。市民の間では、近く喫煙所設置に反対する会を結成する動きもある。21年末に市役所を訪れた70代男性は「立ち小便する人がいるから税金でトイレを作るような話で筋が通らない。モラルのない人にまで配慮する必要があるのか」と憤慨した様子だった”
“立ち小便があるからと税金でトイレ”、なるほど、しかしその例なら、まだありえます。(ちなみに横浜駅西口では夜の酔っぱらい立小便対策で公衆トイレを作りました)
“犬の糞があるから税金で要所に犬用トイレ、または糞拾い係を雇う” “万引きがあるから商品無料配布を税金で” “性犯罪者がいるから無料性風俗店を” くらいのレベルだと思います。(受動喫煙の被害は、もっとかもしれませんが)
【追記】その後、地元メディアいよる詳しい報道が出ました。
香芝市公共施設、敷地内禁煙後退の可能性 議会が屋外分煙施設求める決議 3分の1は反対
=『ニュース「奈良の声」』2022年2月12日、2月13日更新=
“市議会が昨年12月、市施設への屋外分煙施設設置を市に求める決議を可決……議員の3分の1は反対”
“反対する市民の動きもあり、「喫煙所新設に反対する市民の声」(代表者・曽根秀一、15人)は2月14日、市議会に対し、市の公共施設敷地内に喫煙所の新設を行わないよう求める請願書を提出する”
“敷地内禁煙は、2018年4月の市受動喫煙防止条例施行と同時に実施……それまで公共施設に設置していた職員、市民向けの喫煙所を撤去……同条例は議会発議によるもので、当時、同市議だった福岡憲宏市長が提案、全会一致で可決された”
“ 条例に敷地内禁煙の規定はないが「市の責務」が定められ……「受動喫煙による市民の健康への悪影響が生じないよう適切な措置を講じなければならない」と課している”
“ 決議があったのは12月17日の市議会12月定例会本会議。市のホームページで録画を見ることができる。眞鍋亜樹議員(無所属)が……屋外分煙施設整備に向け、速やかに予算措置などを講ずるよう求める内容……眞鍋議員は敷地内禁煙について、3年半を経て定着したが敷地を一歩出た場所での喫煙が見受けられ、通行者の受動喫煙を招いているなどと提案理由を説明”
“反対の立場からは「社会で禁煙が進む中、目標となる市において屋外分煙施設をつくるのはどうなのか。子供の教育においても、いかに喫煙による健康被害があるか健康教育が行われている」(青木恒子議員〈共産〉)などの意見が……結果、決議は賛成10、反対5で原案通り可決された”
“「市民の声」の関係者の一人は、厚生労働省が「健康増進法の一部を改正する法律」の施行について2019年2月22日付で都道府県知事などにあてた通知が「敷地内禁煙が原則であり、特定屋外喫煙場所を推奨するものではないことに十分留意すること」としている点を挙げて、制度の誤った運用だと批判”
“健康増進法の一部改正に伴って敷地内禁煙は大幅に増えている。全39市町村のうち施行前の2019年4月1日現在で本庁舎、議会棟共に敷地内禁煙を実施していたのは香芝市を含む5市町にとどまっていたが、施行後の2020年4月1日現在では、特定屋外喫煙場所を設置せず敷地内を禁煙とする市町村は16に”
“禁煙から分煙へと後退したのは平群町だけだった”
“ 県内市町村で最も早く本庁舎、議会棟の敷地内禁煙を実施したのは王寺町(2012年)。次は平群町(2016年)で3番目が香芝市だった”
画像は’20年6月、神奈川県庁の喫煙所の昼の行列。
(会員提供・既出、『STOP受動喫煙 新聞』31号にも掲載)
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓で引いてみてください。
「違反職員」のために、喫煙所を復活させようとしている自治体 =広島= ’21年8月
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