受動喫煙「被害者にも加害者にもしないで」

 5年前の記事を知りました。
 元喫煙者がガンになり、受動喫煙の害についても言及したものです。

 たばこをやめた肺がん患者が語る 受動喫煙「被害者にも加害者にもしないで」 自分が肺がんになって初めて、たばこの煙の恐怖を知りました
  =『BuzzFeed News』2017年6月8日=

 以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

“飲食店内での原則禁煙を目指す健康増進法改正案が自民党の根強い反対で宙に浮いている。BuzzFeed Newsは、受動喫煙の加害者被害者両方の立場を経験した再発肺がん患者の女性(50歳代半ば)の切実な声を聞いた”

“肺がんと診断されたのは、50歳の時です。手足のむくみや関節痛が続き、「更年期障害かな」と思って検査を受けたら、初期の肺がんが見つかりました”

20歳からずっとたばこを吸っていたんです。父も喫煙者で私や姉が幼い頃から目の前でたばこを吸っていましたし、若い頃やっていた美容師の仲間はみんな喫煙者。たばこに抵抗感はなく、私も吸うのが「働く女っぽい」という憧れがあって、自然と”

“2010年に300円のたばこが410円になる値上げ……1000円で3箱買えていたのが2箱しか買えないなんてアホらしくなって、禁煙外来に通いました。
喫煙者って病気です。自分の意志では絶対やめられないのがわかっていましたから、禁煙薬をお医者さんに出してもらって、ようやくやめられました。その4年後に肺がんと診断されたんです。「ああ、たばこを吸っていたせいだ」と後悔しましたね”

 26年ほど吸っていたのに、自分で考えて禁煙外来にも行って卒煙したとは、立派なほうではないでしょうか。

 ガンと判ってからの状況の説明が続きます。喫煙店で働いていたこともガン悪化の一因でしょう。

“診断される3か月前から、公共施設の中にある喫茶店でパートをしていました……原則禁煙の施設の中で、喫煙ルーム以外で唯一喫煙できる場所でした。お客さんはみんなたばこを吸い、煙がもうもうでした……店内中の煙が集中して吸い寄せられる場所で働いていた”

“肺がんの手術後、復職すると、煙の側にも近づきたくなくなりました。マスクをつけて店に立ちましたが、どうしても煙は防げないし、煙を吸うとそのまま体に悪さをして再発するのではないかと怖くてたまりません。煙の匂いを感じるだけで死が頭をよぎりました”

“その後、店の改装があって、ちょうどヤニで汚れた壁紙やいすを新調すると聞いたので、店長に「これを機会に禁煙にできませんか?」と相談してみました。でも、「お客さん売り上げ減るから難しい」と言われました”

“その公共施設は原則禁煙で、四方をきっちり囲まれた喫煙室でしかたばこは吸えないのに、屋内にたばこの自動販売機が……店長からは「たばこをすぐそばで売っているのに、うちで吸えないのはおかしいだろ?」とも言われました”

 おかしな発想をする店長ですね。酒の自販機のそばの店は酒を持ち込めるようでないといけない・ペット店の近くの店はペット持ち込み可でないといけない・花火店のそばの店では花火できなきゃいけないんですか。

 この女性が、受動喫煙に意識が目覚めたことが続きます。

“改装休店中にがんが再発し、抗がん剤治療を始めるのを機に、復職を諦めました。抗がん剤治療をすると白血球の数値が下がって抵抗力や免疫力が落ちるので、余計たばこの煙でがんが悪化すると思ったのです”

“今まで当たり前だった「働く」ということが奪われたのはショックでした……がんになったことで、自分が社会から切り離されたように感じました”

“就職活動をしています……絶対にたばこのないところで働きたいです”

“自民党の議員が、がん患者はたばこを吸うような職場で働かなくていいという趣旨のことを発言したそうですが、当然がん患者はそれを望んでいるのに、なかなかそんなに都合のいい職場は見つからないのが現実です”

 受動喫煙の「加害者」だったことにも気づきます。

病気になって初めて、人が吸うたばこの煙の恐怖を知りましたが、喫煙者の頃は飲食店でおしゃべりを楽しみながら長時間たばこを吸っていました。きっと周りのお客さんや従業員の人に嫌な思いをさせたと思います。本当に申し訳ないことをしたと思っています”

“タールやニコチンが喫煙者自身に与える害については、病院で真っ黒な肺の写真を見たりして知っていました。だけど自分だけはならないというおかしな思い込みがありました”

“さらに、自分のたばこの煙が他人の健康にまで害を与えるとは知りませんでした……良い治療法はないかと勉強会やシンポジウムに行くようになって初めて、煙の中に有害な発がん性物質が含まれていて、周囲の人の遺伝子にも傷をつけるということを知りました”

“問題となった自民党の議員は、自分は吸っているけれども子供や孫は誰も文句を言わないし、みんな健康と言ったそうですが、喫煙者の感覚を代弁していると思います”

“自分が喫煙して自分ががんになったら自業自得で諦めもつくでしょう。でも自分の煙のせいで自分の家族や私が吸わせた人たちががんになったら、後悔どころではなく、取り返しがつかないことです。償いようもありません”

“私たち国民を被害者にもしてほしくないし、加害者にもしてほしくないです”

職を追われた人は他にも

 女性のインタビューは以上です。記事は続いて、肺癌患者全般への調査結果を述べています。

“「日本肺がん患者連絡会」などが……肺がん患者にアンケート……9割を超える患者が受動喫煙を「不快」と答えた。

「肺がんが再発・進行するのではないかと脅威」「肺がんになってからは特にたばこの煙が恐怖」など、病気に与える影響を恐れる声が目立つ”

“働いている人の中で、職場で受動喫煙に遭った人も30.5%いた”

“「取引先の喫煙者が目の前で吸うため非常に困っている」(50代男性)、「小さい会社で社長が吸っていると下っ端の自分が意見を言えるはずない」(40代女性)、「地方ほど職場の禁煙は徹底されていない。受動喫煙のない職場を選ぶとなると失業状態が長く続くことを覚悟せざるを得ない」(40代女性)など、受動喫煙から逃れたくても逃れられない苦しさを訴える声が多い。

受動喫煙で仕事を辞めざるを得なかった人も8人(4.2%)いた。その一人が冒頭の体験談を語った女性だ。

このアンケートは、受動喫煙防止策について議論した席で自民党の大西英男議員が「(がん患者は)働かなくていい」「私は 50 年たばこを吸い続けています。我が家も自由にたばこを吸い続けており、子供4 人、孫 6 人、誰も不満を言いません。みんな健康です」などと発言したことに憤り、患者の生の声を届けようと先月末に緊急に行われたものだ”

“アンケートの最後には患者の悲痛な訴えが並ぶ。

「食事に行き、禁煙室を希望して入っても、仕切りがないところがあります……何よりまだがんになっていない方、子供達にがんになってほしくありません。なってからでは遅いです。私は一度もたばこを吸ったことがないので、喫煙者の気持ちが理解できませんが、人に迷惑のかからない所でお願いします」(60代女性)

「元喫煙者だからこそ申し訳ないという気持ちでいっぱいです。せめてもの救いは自分が病気になったことです。誰もが加害者となる可能性は持っています。ですから法律で律することが大切と思います」(50代男性)

「……大切だと思う人たちの20、30年後の健康を考えてください」(50代女性)

「肺がんを患ってから、禁煙店以外の飲食店に恐怖で入ることができなくなりました。……飲食店以外でも自宅ベランダで隣の住人からの受動喫煙の被害にあっています。どうか助けてください。世の中から受動喫煙被害が減りますように法律改正をお願い致します」(40代女性)”

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