職場の受動喫煙撲滅はどう進めるか~大和浩教授が解説 自宅での他家への受動喫煙も言及
受動喫煙撲滅活動の第一人者・『STOP受動喫煙 新聞』連載でもおなじみの大和浩教授が、保健医療のサイトで、職場の受動喫煙撲滅、禁煙の必要性について、わかりやすく論説しています。
職域の「禁煙」を確実に進めるために ―「喫煙」対策の最新情報と「禁煙」の実践紹介―
=『保健指導リソースガイド』「オピニオン/保健指導あれこれ」2022年10月11日~=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。
“ 2003年に制定された「健康増進法」では、公共空間や事務室等での受動喫煙を防止することが求められ、『職場における喫煙対策のための新ガイドライン』では「一定の要件を満たす喫煙室」を設置することが推奨されました。
そして、2020年に施行された「改正健康増進法」により、現在では「望まない受動喫煙をなくす」ことがすべての国民に求められています”
では、大和教授による連載第一回を見てみましょう。主に受動喫煙の記述を引用します。
No.1 職場から「喫煙できる場所と時間」をなくすこと
=産業医科大学 産業生態科学研究所 教授 大和 浩 2022年10月11日=
“ 2003年に制定された「健康増進法」……排気装置により出入口で0.2m/sの内向きの気流を確保した「一定の要件を満たす喫煙室」を設置することが推奨され……多くの企業に喫煙室が設置され、事務室等が禁煙化されたことで、職場の空気環境は格段に改善した”
“ しかし、“喫煙室の周囲は微妙にタバコ臭い”という状況は今も続いている。その原因は以下の3つである。
1.ドア(蝶番式)の開閉によるフイゴ作用による煙の押し出し
2.退出する喫煙者の後にできる空気の渦に巻き込まれた煙の持ち出し
3.肺に充満している煙の禁煙区域での呼出”“屋内に喫煙室を残すことによる5つの問題
2020年に「改正健康増進法」が施行され、「望まない受動喫煙をなくす」ことがすべての国民に求められ……職場に喫煙室を残していることについて、以下の問題点が指摘されている。
1.廊下に漏れてくる煙、喫煙後の呼気に含まれる煙により、受動喫煙が防止できないこと
2.清掃業者が高濃度で職業的に曝露される受動喫煙が防止できないこと
3.喫煙者の口腔~気管支粘膜、衣服、毛髪、手指に付着したヤニから発生するタバコ臭(三次喫煙)が快適職場づくりの妨げになっていること
4.勤務時間中の喫煙者のタバコ離席が不公平感をもたらすこと
5.職場で喫煙できるために禁煙企図が高まらないこと”“敷地内に喫煙場所を残すことによる5つの問題
……屋外に喫煙場所を移動しただけでは問題は解決しない。屋外喫煙を認めた場合の問題点として、以下が挙げられる。
1.屋外であっても風下25メートルで受動喫煙が発生する
2.屋外であっても清掃業者は受動喫煙に曝露される
3.口腔〜気管支と手指に付着したヤニから三次喫煙が発生する
4.屋外の喫煙所への往復はさらに時間がかかる
5.敷地内に公認の喫煙所があると、やはり、禁煙企図は高まらない”“職域で喫煙者ゼロを目指す意義
1.職員に期日を予告した上で敷地内禁煙とする
2.敷地外の商業施設での喫煙も禁止する
3.出勤前、昼休みの喫煙も禁止する(三次喫煙防止)
4.禁煙治療を受けるための費用の一部・全部を補助する
5.チームを作って禁煙挑戦者を社員同士が励ます”“吸える場所が限定されてきたにもかかわらず喫煙しているのは、「吸いたいから吸っている」のではなく、「やめられないから吸っている」、つまり、ニコチン依存症の患者であるという観点からこの問題に取り組まねばならない”
“周囲で生活する非喫煙者も毎年1万5,000人が死亡する他者危害が発生していることを考えれば、職域における健康問題の最優先課題として取り組むべきである”
第二回。
No.2 職場外でも「喫煙できる場所と時間」をなくすこと
=2022年10月24日=
“ 喫煙者本人はタバコ離席が周囲に作業負担をかけていることに気づいていない。一方、非喫煙者は「仕事をさぼっている」「不公平」という不満を募らせている”
“勤務日の禁煙で「三次喫煙対策」
三次喫煙(thirdhand smoke)とは、別の場所で喫煙した人の呼気や衣服・毛髪から長時間にわたって発生するタバコのニオイを吸わされることを指す。わが国では、2010年の厚生労働省健康局長通知で「残留タバコ成分」として初めて紹介されている”
“屋外で1本喫煙した後の呼気を5分おきに測定したところ、以下に示す図のように喫煙前の状態に戻るのに45分かかっている。
”“ このデータが参考となり、イオン社では喫煙する職員に対して、職場に入る前45分間の喫煙をしないこと、具体的には出勤前と昼休みの喫煙の自粛を求めることになった。
また、北陸先端科学技術大学院大学では喫煙後45分間以内での敷地内入構、および最寄り駅からのシャトルバスの乗車が禁止された。
京都府の洛星高等学校では「タバコ臭い教師はNG」という生徒の要望により、教師は講義の45分前の喫煙が禁止されている”“お客様に不愉快な思いをさせないことは、接客業の基本である。接客部門ではなくても、職場に“タバコ臭”を持ち込むことは厚生労働省が推進する「快適な職場環境の形成」の妨げとなる”
“すかいらーくホールディングス社では、各店舗の敷地内禁煙と通勤途中の喫煙を禁止し、部下を禁煙させた上司のボーナスをアップさせた”
“SCSK社(旧・住商情報システム)では……懇親会は喫煙NGの旨が就業規則に追加された”
“ 2015年1月から敷地内禁煙としたリコー社……敷地外で働く従業員がいる。内勤者と勤務条件に不公平が発生しないように「就業時間中はどこに居ても禁煙」というルールが導入……「敷地外の喫煙禁止をどうやって確認するのか?」との質問を受け……「リコーマンのプライドに期待しております」”
そして、家に帰ってからの喫煙もテーマに。
“自宅での喫煙も「望まない受動喫煙」の原因
ベランダで喫煙すると、上のフロアはもちろん、同じフロアの隣家にも「望まない受動喫煙」を強いる加害者になってしまうのだが、そのことを意識している喫煙者は少ない……換気扇の下で喫煙した場合でも、その排気口から半径少なくとも25メートルで「望まない受動喫煙」が発生”
“ 住宅街を歩いていると「どこかでカレーをつくっている」ことがわかる”
“吸わない人のヒトの鼻はタバコ臭に対して敏感なのだ。喫煙者の鼻はタバコの臭いに対して鈍感になっているからわからない”
“テレワークを導入した企業では、野村ホールディングス社や味の素社のようにテレワーク中に他家に対する加害者にならないように喫煙禁止の注意喚起を行うべきである”
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓で引いてみてください。
受動喫煙は25m先まで発生、ベランダ喫煙が大問題なワケ ’22年5月
ベランダ喫煙が“在宅”で増えている!? 被害の実際を大和教授が測定 ’21年7月
ドキッ! とする警告看板 ~ タニタ ’21年7月
タバコ臭い教師に生徒が「三次喫煙」禁止令を制定 ’20年9月
また教員が“隠れ喫煙”! 子どもたちが受動喫煙の被害 “頭が痛くて授業に集中できない”! 悲痛な訴えに地方紙が調査 ’21年7月
分譲マンションに住んでいますが、隣が1年ほど前に分譲賃貸になりました。賃貸で入ってきた隣人が独身で1時間に1本のペースで朝6時台~23時までタバコを吸います。
迷惑だから外で吸ってと注意する家族もいらっしゃいません。
普通のサラリーマンと違って在宅時間が多いです。レンジフード喫煙ですが受動喫煙の被害を受けています。
それよりも何よりも隣人の自室に積り積もって染み付いた強烈な悪臭にびっくりです。24時間換気で共用廊下に部屋に染み付いた悪臭を流される(サードハンドスモークの害)、窓全開で部屋の悪臭を出されベランダに悪臭がこもる。吐き気がします。
管理会社にも「自室で喫煙する方は外に匂いをもらさない工夫をして下さい」と注意喚起していただきましたが、当事者はその意識が薄いのか、とぼけているのか臭いを垂れ流しのままで、直接本人にも言いましたが人間関係が悪くなる一方です。
何故公共の場だけが望まない受動喫煙ルールが通用して、一番リラックスしたい自宅がそのルールが通用しないのか全く理解できません。
hiyokoさん
受動喫煙撲滅機構です。
管理会社は被害をわかっているようで、他のマンション被害よりその点まだましなほうですから、あとはその掲示をたてに
「他の家へ悪臭被害が発生しているので、工夫できなければ外で吸ってください」
との注意を、させることが考えられます。
同じような被害、解決に向けて苦労している話を非常によく聞いています。
当機構に相談され、例会参加などで、方法を考えることをおすすめします。