「日本が問われる人権意識」子どもへの受動喫煙は「虐待」、法制化は近い
逆らえない子どもへの受動喫煙は、虐待であると、私たちは主張、そのような記事も多くあり紹介してきました。(→末尾に過去記事リンクを記載。)
最近、法制化にも言及する論説が出ました。
いままでも虐待だと訴えてきた、禁煙運動のなかでは著名な女子大名誉教授の解説もあります。
子どもの前での喫煙が「児童虐待」になる日は近い?日本が問われる人権意識
=『DIAMONDO online(ダイヤモンド・オンライン)』窪田順生:ノンフィクションライター 2022.12.8 4:45=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。
“ 少し前、……ニュースがあった。
『小児期に親が喫煙していた男性の子どもは喘息リスクが高い(CareNet 10月18日)』
子どものまわりでタバコを吸うと、受動喫煙によって小児喘息などの健康被害が引き起こされる――という話はよく知られているが、なんとその悪影響は、受動喫煙した子どもが成長した後に授かる子ども、つまりは「孫世代」にまで及ぶということが、オーストラリアのメルボリン大学の研究で明らかになったという”“ 東京医科歯科大学……藤原武男氏らの研究によれば、親が喫煙をしていると、「子どもの肥満リスク」が高まる可能性があるという”
“ 20年以上前から「受動喫煙は児童虐待」と訴え続けてきた、小児科医でもある齋藤麗子・十文字学園女子大学名誉教授……「……海外では親がたばこの煙を吸わせることも虐待だと判断をされています。例えば、親が子どものいる自動車内で喫煙することを罰則付きで禁じているのは、米国ではカリフォルニア州やオレゴン州など8つの州、オーストラリア、カナダ、イングランド、フランス、バーレーン、キプロス、モーリシャス、南アフリカ、アラブ首長国連邦など例を挙げればきりがありません。日本でも子どもの命を削り、健康を害する受動喫煙を虐待の定義に入れてもよいのではないでしょうか」”
“ 日本人は「ワールドカップで日本人のゴミ拾いを世界が称賛」みたいに外国人から褒められることは大好き……しかし、「海外の文化や習慣からも学べることがあるよ」と言われるとなぜか途端に不機嫌になって、「日本には日本のやり方がある!」と閉鎖的に”
“今年6月には、「こども基本法」が成立した。同法の理念の中には、国や自治体は子どもの意見を政策に反映する仕組みをつくるように義務づけられている。これは喫煙者にとってかなりまずい。子どもの意見に耳を傾けると、「たばこの煙がいやだ」という意見が圧倒的に多いからだ”
“山形市内の小学6年生、1753人に「近くでたばこを吸われたとき、そのたばこの煙をどう思うか」と質問をしたところ、1508人(86.0%)が「とてもいや」と「どちらかというといや」と回答……8割以上の子どもはたばこの煙は吸いたくないと思っている。しかし、この調査の中でも835世帯(47.6%)という半分近い子どもは、家庭内に喫煙者がいることがわかっている”
“つまり、日本には父親などのたばこの受動喫煙被害を受け、「臭い」「気持ち悪い」という言葉が喉まで出ていながらも、自分の心を殺している子どもが山ほどいるということだ”
“ こういう肉体的、精神的な「虐待」を受ける子どもの意見を政策に反映しないで、「子ども家庭庁」もへったくれもない”
齋藤麗子氏の提言が続きます。加熱式タバコの急速な販路拡大の影響について。
“「日本では今、加熱式たばこが急速に普及しています。この背景には喫煙者の多くが、紙巻きたばこと比べて煙が出ないので、受動喫煙の害が少ないと考えているということがあります。しかし、これは間違いで、加熱式たばこであってもニコチンや発がん性物質が入っているのでまわりの人は受動喫煙の被害を受けます。つまり、加熱式たばこが普及することで、家庭内や飲食店などで子どもの受動喫煙被害が増える恐れがあるのです」(齋藤氏)”
“消費者庁の「家庭内における、乳幼児のたばこの誤飲実態の把握」……「子どもの前でたばこを吸うことがあるか?」という質問……「吸っている」「時々吸うことがある」と回答をしたのは、紙巻きたばこの場合は46.1%だったが、なんと加熱式たばこは49.8%”
“もうひとつ忘れてはいけない危険性があると斎藤氏は言う。
「それは乳幼児の誤飲です。加熱式たばこのカートリッジは、紙巻きたばこよりも小さいので、赤ちゃんが間違って口に入れてしまうとそのまま喉に入ってしまうんです。また、紙巻きたばこの吸い殻は放置していると火事などの危険性もあるので、親もちゃんと後始末をしますが、カートリッジは熱くもないので、テーブルの上などその辺に置いてしまう。それを食べてしまうという被害が増えているんです」(齋藤氏)”“先ほどの消費者庁の調査でも、「吸い殻」を乳幼児が誤飲しそうになった経験があるかを調べたところ……紙巻きたばこでは15%だったが、加熱式たばこは20.1%”
“ つまり、……加熱式たばこへとスイッチしたことで、「煙も出ないしなんか体に良さそう」と感じている人もいるかもしれないが、実はそう思っているのは本人だけで、周囲の子どもや乳幼児からすれば、受動喫煙や誤飲の危険性が高まっている”
“「私も昔、新聞にも受動喫煙を児童虐待だと書いたら言い過ぎだと言われた経験がありますが、ニュージーランドでは、2009年以降に生まれた子どもが生涯にわたって喫煙できないような法改正案が提出されるなど、世界では『たばこのない国』が確実に増えています。日本政府も“こどもまんなか社会”の実現を掲げているわけですから、子どもの近くでたばこ吸うことは虐待だと認めるべきでしょう」(齋藤氏)”
記者は、日本の法の問題にも言及しています。
“ 世界では、たばこは健康を害するものという位置付けなので、厚生労働省のような健康行政の役所が管轄をすることが多い。しかし、日本では「たばこ」は戦争をしていた時の財源という位置付けを今も引きずっているせいで、今も財務省が管轄……「たばこ事業法」という法律に基づいて、たばこ産業の「健全な発展」を国が後押しをしているという珍しい国だ”
“ だから、受動喫煙で健康を損なう子どもがいくら増えても、「安定財源確保」のため国は「たばこ問題」をスルーする”
“このあたりの日本特有の人権感覚は、「お国のためには、子どもの命など喜んで捧げよ」と叫んでいた戦時中とそれほど変わっていない”
“子ども家庭庁の発足で、「たばこがいやだ」「煙が気持ち悪い」という日本の子どもたちは、諸外国の子どものように救いの手が差し伸べられるのか。それとも、これまで通りに、「親の付属物」という扱いで、望まない煙を吸わされ続けるのか”
この窪田順生(くぼた まさき)氏はいままでもよい記事を書いていますね。一例→加熱式タバコの「大誤解」を暴く 周囲への受動喫煙、健康被害は紙巻タバコ同様に
今後も期待しましょう。
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