禁煙の宿での違反喫煙、法的には?

 先日記事を紹介しました、禁煙の旅館が違反喫煙に対し嘆きの声をあげた問題ですが、
 →禁煙の旅館で喫煙犯が!  怒りの声をネットに 共感・応援多数

当サイトでもよく引用させていただいている、受動喫煙問題も多く取り上げている法律サイトで、弁護士の見解をあげていました。

 完全禁煙なのに喫煙する客、法的責任を問える? 女将は「良心に委ねてきたが…」対応に苦慮
  =『弁護士ドットコムNEWS』2022年12月23日 10時32分=

 以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

“宿「西屋」女将……「禁を犯す方は後を絶ちません。(建物の外にある)駐車場までわざわざ足を運んで喫煙するのが面倒なのか、部屋で吸われてしまうケースが続いております」”

“ホームページのトップには「当館は全面禁煙です」と表示されており、電子タバコも不可と明確に方針を示しています”

“完全禁煙ルールにしたきっかけは、2020年4月に施行された改正健康増進法で、公共施設での原則完全分煙が義務化されたこと”

“元々西屋では館内に喫煙所を1カ所設けており……ましたが、「築100~200年になる建物は良くも悪しくも通気性が抜群で、タバコ臭がどうしても館内にもれてしまいます」という事情や、2000年の火事の教訓や嫌煙の客との兼ね合いもあり、完全禁煙に”

“しかし、完全禁煙後も「年に3~4回ほど」はルール違反する客が現れているとのこと。一度部屋に染みついたタバコの臭いは簡単には消えず、「部屋は消臭作業の為数日は使えない」(ツイートより)ため、対応に苦慮してきました”

“喫煙した客を見つけた場合は、口頭で注意する、後から発見した場合も要注意人物として記録しておくなどの対応にとどめてきた……「きちんとマナーを守って外で喫煙されるお客様がほとんどですので、皆様の良心にゆだねておりました。今回は、違反した場合の具体的なルールを設けていなかった西屋にも落ち度があったと反省しております」”

“今後……「もしも喫煙の痕跡を認めた場合はクリーニング代として追加料金を請求する旨を明示しようかと考えております。ただ、その料金は他の施設の例を見る限りまちまちですし、いわゆる『現行犯』でないとだめなのか、あとからでも請求できるのか、詳しい知識がないため中身を決めかねております」”

“しかし、今回喫煙した客に対して「対抗措置などは取らない方針」……ネットなどで大きな話題となったことにより「当人への社会的制裁は果たされただろうと見なした」ことも理由の一つですが、「何より万年人手不足の小さな旅館ですので、賠償請求など法的手段に打って出るほどの余力が正直残っていません」”

 さて、弁護士の見解は。

“——宿泊施設が全面禁煙のルールを定めることは問題ないでしょうか。

……改正健康増進法……旅館・ホテルを含め、多くの人が利用する施設は、原則屋内禁煙が義務づけられ、指導や命令による改善がみられない違反者には罰則が……旅館・ホテルにおいては、客室の喫煙は認める一方、宴会場やコンベンションホールロビーなどの公共空間禁煙となります。ただ、煙が外に漏れない喫煙専用室の設置は認めています。館内に飲食店を設けている場合は、小規模店舗のみ当分の間、喫煙を認めています

“旅館・ホテルでも館内の全てや一部を禁煙にしたり、喫煙室を設けたりする動きが出ています”

“旅館・ホテル等の宿泊施設は自由に宿泊約款を定めることができます。宿泊施設が全面禁煙のルールを定めることは問題ありません”

“——全面禁煙のルールを破って客が喫煙した場合、どのような法的責任を負う可能性がありますか。

法律上客室内での喫煙が禁止されているわけではなく、あくまでも宿泊施設の利用規約に違反するものですから、宿泊施設としては、まずは喫煙行為に対する警告をすることになるでしょう。
その警告を無視するようであれば、迷惑行為とみなし、宿泊契約の解除をすることになると思います”

“ただ、この点は解釈上争いがあるかもしれません。規約に違反したことをもって直ちに解除できるという見解もあり得ます”

“利用規約や宿泊約款に禁止された行為に及んだ場合、クリーニング代や客室の売り止め費用について、賠償額の予定(民法420条)を定めておくことをお勧めします”

“——……さらなる喫煙防止策としてどのような方法が考えられますか。

宿泊施設としては、ルールの周知徹底をするほかありません。旅館業法5条との関係で、喫煙者であることをもって宿泊契約締結を拒否することは原則としてできないと思います。

事後的な対応にはなりますが、喫煙の事実が判明した場合には、利用規約や宿泊約款に規定された火災予防上必要な行為に違反したとして、宿泊契約を解除できることは可能です”

 賠償を定めておくのがよい、との助言はわかりました。しかし、契約を解除とは、直ちに追い出すということでしょうか。連泊で予約の違反者に次の日から拒否、というならわかりますが、夜中とか時間帯によっては追い出すことはできないのでは。

 それから、この弁護士は「喫煙者であることをもって……拒否することは原則としてできない」と言っていますが、以前、「ノンスモーカーズホテル」という、喫煙者は利用不可とするホテルが東京で実在していました。(『STOP受動喫煙 新聞』第8号掲載)
 もともと全室・全館、屋外も敷地内禁煙だった同ホテルは、違反には5万円の罰則としてチェックイン時に誓約書を書かせ、違反者には必ず払わせていたそうですが、違反は続き、徴収の労力も大変なうえ清掃やその間部屋が使えないなどの損害は5万円ではまったく足りなかったため、弁護士と相談、ホテルの名称もそう変えて、予約時に喫煙者かどうか確かめることになったそうです。当時電話取材しましたが、世の中には女性専用ホテルもあるので、非喫煙者限定も問題ないとのことでした。

 
『STOP受動喫煙 新聞』8号の禁煙ホテル紹介記事の一部。

 
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓で引いてみてください。
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