タバコは「嗜好品」ではない ~ 『広辞苑』などで削除されています

 直接、受動喫煙の話でなくて当サイトとしては恐縮ですが(しかし、受動喫煙被害の際に関係する場合もあります。後述)、興味深い発見、考察が禁煙運動関係者の間でありましたので紹介します。

 日本禁煙学会のメール配信で、有名な辞書『広辞苑』のなかの「嗜好品」の項目に、以前はその一例としてあった「タバコ」が、今は書かれていないというのです。

 私は、家にある、1980年代に買った同書を見てみました。

   
 このように、1976年に発行された第二版補訂版では、「……酒・茶・コーヒー・タバコの類」と、最後にあげられています。
 それが今は無くなっている、というのです。もちろん良いことで、現代的には当然のことですが、なぜでしょうか。

 これについて、禁煙運動に関わる石田記者が、他の辞書はどうか、またこうなった理由の可能性についても調べて記事にしてくれました。

 なぜ「タバコ」は国語辞典の「嗜好品」から消えつつあるのか
  =石田雅彦 ライター、編集者 2/12(日) 10:55=

 以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

同じ出版社でも違いがある「嗜好品」の説明
 日本語に「嗜好品」という言葉がある……他の言語に同じような意味を持つ言葉は少ないという

“岩波書店の『広辞苑』の第四版(1991)の「嗜好品」の説明には「栄養摂取を目的とせず、香味や刺激を得るための飲食物。酒・茶・コーヒー・タバコの類」とあるが、同第七版(2018)の「嗜好品」の説明から「タバコ」の単語が削除されている”

“ 他の辞書も調べてみると……入っている辞書もあれば入っていない辞書もあり、同じ出版社でも辞書によって違いが……『広辞苑』の岩波書店が出版している『岩波国語辞典』(第八版)の「嗜好品」の説明には「タバコ」が入っているし、三省堂の『三省堂国語辞典』(第八版)……には「タバコ」が入っているが、同じ三省堂の『新明解国語辞典』(第八版)には入っていない”

 そして、過去の裁判でも問われた、タバコが“嗜好品”か否かと、辞書の項目から消えていった背景に、活動者らの尽力があったことをあげています。

“ 東京地方裁判所において2003年……判決が出されたいわゆる「たばこ病裁判」……裁判官は、被告である日本タバコ産業ら主張を引いて「たばこは、アルコール飲料、茶とともに国民のし好品として社会に定着している」と述べている。
 だが、この判決は約20年も前のもので『広辞苑』の説明が変わったように、今も同じような認識で判決が出るかどうかわからない

“なぜ『広辞苑』の説明が変わったのだろうか。筆者が岩波書店に聞いてみたところ、以下のような回答を得た。

読者から「タバコは嗜好品ではない」とのご指摘があり、日本口腔衛生学会ほか9学会による「禁煙ガイドライン2010」で、喫煙は「趣味・嗜好」の問題ではなく「喫煙病(ニコチン依存症+喫煙関連疾患)、喫煙者は患者」であるという認識を基本としているとのことから、第七版では「タバコ」を削除しました。


“ この読者とは誰なのだろうか。「子どもに無煙環境を推進協議会」の代表理事を務める野上浩志氏に聞くと、1990年代から辞書の出版社へ「嗜好品」から「タバコ」を削除したほうがいいと指摘を続けてきたという”

“歯科医の花島直樹氏も辞書の出版社へ働きかけてきた一人……「喫煙は、禁煙治療に健康保険が適用されているようにニコチン依存症という病気です。タバコはいわば合法ドラッグ……多くの喫煙者が亡くなっている以上、嗜好品に入るはずがないのです」……認識を改める必要があるとし、岩波書店の『広辞苑』の対応を評価している”  

戦前には、嗜好品の説明にアヘンも入っていた”

“ タバコ会社は依然としてタバコを嗜好品とし、あたかも日常のマイルドな楽しみのように印象づけようと必死だ”

“喫煙の健康への害が広く知られるようになり「タバコ」を「嗜好品」に含むことに対する違和感が強くなった。こうして、辞書の「嗜好品」の説明から「タバコ」は消えつつある”

喫煙者の屁理屈を認めないために

 受動喫煙の被害の声で最も多い、住宅での近隣住民からの受動喫煙では、被害者が集合住宅の管理会社などや喫煙者本人へ、受動喫煙の発生をやめるように言うと、「嗜好品だから、喫煙は自由」と、他者への受動喫煙被害を無視して、能動喫煙の自由というまちがった反論をする場合が多くあります。しかし被害者は、それで黙ってしまっていることが非常に多いのです。

 「受動喫煙の問題であり、能動喫煙の是非を論じているのではない」「他者への危害であり、それを発生させる自由はない」という視点が大事ですが、“嗜好品”論に対しては、このように、つねに世相を反映している辞書の通り、今は嗜好品とされていない、ということを、念頭に置いて交渉するとよいでしょう。

 
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓で引いてみてください。
 「World No-Tobacco Day」は“世界禁煙デー”? “禁煙の日”でよいか? ’18年5月

 「タバコ」「たばこ」「煙草」「莨」…どれが正しい? 使い分けは? ’18年9月

 「受動喫煙防止条例」の解説ユーチューブ映像(東京都)/“愛煙家”って何だ! ’18年10月

 「喫煙者を加害者扱い」??…「望まない受動喫煙」って何?! ’19年10月

 住宅や職場などでの受動喫煙被害への対策はあるか? ’19年8月

 『STOP受動喫煙 新聞』38号(よくある表現への疑問=中久木一乘氏)40号(喫煙側の屁理屈への反論・会話例)

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