“喫煙料理人”の舌・鼻、腕は大丈夫か
先日の記事、喫煙する料理人の料理はまずいと 芸能人が正論を主張 の問題について、検証する論説がありました。
タバコを吸う料理人の味覚を信用できるか:喫煙「寿司」職人論争を考える
=石田雅彦 ライター、編集者 4/6(木) 10:59=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。
“喫煙者の料理人の味覚、果たして信用できるのだろうか。過去の研究から考えてみる”
“嗅覚や味覚は複雑で、生まれ育った環境や生活習慣、体調、かかっている病気、加齢などによって影響される。その最たる物がタバコだ。喫煙者の嗅覚、味覚について調べた研究の歴史は古く、1950年代からいろいろな仮説が提唱されてきた”
“スウェーデンの1980年代の研究によれば、タバコ煙を吸ったりさらされた場合、嗅覚障害を起こす危険性が考えられたが、嗅覚の慣れと混在して自覚的な違いはなかなかわからなかった……紙巻きタバコと電子タバコの喫煙者の嗅覚の違いを調べたオーストリアの最近の研究によれば、非喫煙者の嗅覚が最も優れているようだ”
“米国のペンシルバニア大学の研究グループが、638人を対象に調べたところ、タバコを吸う本数が少ないほど、また禁煙後の期間が長いほど、嗅覚の障害が良くなった。また、喫煙者は非喫煙者と比べ、約2倍、嗅覚障害を示した”
“ 米国の3528人(1526人の元喫煙者を含む)の57歳以上の高齢者を調べた研究によれば、禁煙後15年以上経つと嗅覚機能が元に戻ることがわかったという。逆にいえば、タバコをやめて15年経たないと元に戻らない”
“ このように喫煙と嗅覚の関係については、すでに悪い影響があるという結論が出ている。対象11論文を比較した研究によれば、喫煙者の嗅覚は統計的に有意に低下し、嗅覚障害のリスクは非喫煙者より6割ほど高くなることがわかっている”
では味覚は。
“ 甘味、塩味、酸味、苦味の4つの味覚について、男女で36人の喫煙者(1日10本以上)と33人の非喫煙者を比較した日本の研究グループの調査によれば、喫煙者は4つ全ての味覚で感覚が鈍くなっていた。同研究グループは、喫煙者はおそらく味蕾の数が少なくなっているのではないかと述べている”
“ タバコを吸うと、特定の味覚を強く感じるという研究も……米国の2374人を対象にした味覚に関する調査によれば、喫煙者は苦味(キニーネ)と酸味(クエン酸)を非喫煙者より強く感じることがわかった”
“別の米国の研究グループが、砂糖を加えたココア、塩味の野菜ジュース、酸味のあるオレンジジュース、苦いブラックコーヒーといった飲料に対する味覚と喫煙の関係を調べたところ、これらを飲む5分前にタバコを吸った喫煙者は、実験の2時間前までタバコを吸わなかった人や非喫煙者より、特にブラックコーヒーを苦く感じた”
“ 喫煙と嗅覚では、喫煙量と禁煙後の期間が機能障害の度合いと関係していたが、喫煙と味覚でも同じような結果が出ている”
“フランスの研究によれば、ニコチン依存度が高いほど味覚の感度が低く、禁煙期間が長くなるほど味覚の感受性が戻った”
“まとめると、喫煙によって嗅覚が鈍くなり味覚の感度にも影響が出ることがわかっているが、タバコをやめると嗅覚、味覚ともに感度が戻るようだ”
“ ネット上で議論になっているのは、喫煙者の寿司職人に対する好悪の感情だが、タバコを吸うと味覚、嗅覚が鈍ったり、非喫煙者とは違った感覚になるのは明らかだ。指先に付着したタバコ成分や臭いがうつった寿司はカンベンだが、料理人が喫煙者だった場合、調理する料理の味に影響が出ている可能性は十分にある”
そういえば、禁煙運動の人から聞いたこんな話がありました。
その人のむかしの職場で、出入りの弁当業者がアンケートを取ったときがあり、その人が回収する係をやったので目を通してみたところ、「味が濃い・薄い」の欄は、喫煙しない職員は全員「濃い」に丸をし、喫煙者は全員「薄い」に丸という、ハッキリ分かれていたとのことです。
料理人は、喫煙者用に味を変えないといけないのでしょうか?
また、喫煙者の作る料理は、喫煙者にはおいしいと感じるのでしょうか?(喫煙料理人は味がわからず作っているのだからまずいでしょうが、喫煙者にはそれがわからない、ということでしょうか?)
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