学校の喫煙所・喫煙教員の問題、NHKが被害者の声から広く取材し報道

 改正健康増進法の段階的施行の最初の施行の、’19年7月から敷地内禁煙となったはずなのに、いまだ存続しているところがある、学校の喫煙所。

 この問題を追及した報道がありました。

 大和浩教授もインタビューを受けています。

 どうする?学校の喫煙所
  =『読むNHK福岡』2023年04月26日=

 以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

“「学校の喫煙所から漂ってくるタバコのにおいがくさくて、困っています」。福岡県内の高校生からNHKに寄せられた声をきっかけに、高校での教員の喫煙ルールがいま、どうなっているのか取材しました”

“高校生に直接、取材したところ、学校には教員などが使う喫煙所があって、朝と夕方の登下校の時間帯などにタバコのにおいが漂ってくる……喫煙所の周囲にはついたてが置かれているものの、上下はふさがれていないので、漏れ出てくるタバコのにおいの影響で体調気分を悪くする生徒も”

“「改正健康増進法」により、20歳未満の生徒が通う学校などは原則、「敷地内禁煙」です。ただ、受動喫煙を防止する措置をとれば、推奨はされていないものの、喫煙所を設置することは可能だとされています。

【受動喫煙を防止する措置】
① 囲いを設けるなど、喫煙できる場所を明確に区画
② 喫煙できる場所とわかる標識を掲示
③ 吸う人以外が立ち入らない屋外に設置

“県内の高校がどう対応しているのか取材したところ、県立高校は「全面禁煙」……私立高校60校の……およそ7割が「喫煙所はない」”

“この中には「改正健康増進法」の全面施行をきっかけに喫煙所を撤去したという学校も多く……1校を取材……福岡市中央区の筑紫女学園高校……決めた理由は、生徒からの「先生がタバコくさくて授業に集中できない」という声だった”

“取材者
全面禁煙にしてよかったことは?

「全面禁煙」を決めた校長の松尾圭子先生
やはり生徒のほうからくさいとかいう話は全く聞かなくなりました。それは良かったかなと思います。先生方のほうには聞いておりませんけど、どうでしょうかね…。これは喫煙者の先生に答えてもらいますかね(笑)”

“校長から指名された喫煙者は、教頭の栗山宏之先生……校舎の裏にあった灰皿とベンチの撤去が決まったとき、喫煙者の教員の間からは「なんとかならないか」と言う声も……「教頭先生なんとかしてくださいよと。プレハブの喫煙所でもなんでも作れませんかと。でも、やっぱり学校で決めたことはね、みんなで守っていくしかないねということで、受け入れました」”

“当時、20人ほどいた喫煙者の先生たち。校内が全面禁煙になったことをきっかけに禁煙した人もいれば、お昼休みの時間を利用して学校から離れた場所にある喫煙所で一服してくる人も”

 街頭で一般の人の声も。

“学校での教員の喫煙についてどう思いますか?街頭で話を聞いてみると、自身が喫煙者か否かで意見は真っ二つに”

“非喫煙者
目の前で教員が喫煙していることを見てタバコを吸う生徒もいたので、良くないだろうなと思います”

 そして、大和教授登場。(記事が“喫煙者との共存”をテーマにしているところが引っかかりますが)

“では、生徒と喫煙者の教員がうまく共存できる道はあるのでしょうか。喫煙対策の第一人者として知られる、北九州市の産業医科大学の大和浩教授……教授も以前は喫煙者で、7回の失敗を経て、禁煙を実現した”

“大和浩教授
「吸っている人の気持ちもわかりますし、やめたらどれだけ体が楽になるか知っていますから、それをいま、吸っている人たちに味わってほしいんです」”

“これまでの研究で特に印象に残っている共存の取り組みがあるといいます。

大和教授
京都のある高校の事例があります。とっても感動しましたね”

 そして記者らは京都へ。

“京都市北区の洛星高校……副校長の藤原先生に喫煙所を案内してもらいました。玄関から歩くこと2分。校舎の外の駐車場の一角に喫煙所がありました。プレハブ小屋を使い、タバコの煙が周囲に漂いにくいようにしています”

“この喫煙所、単に、ふだんは生徒が立ち入らない場所に設置されているだけではありません。中をのぞいてみると、大和教授を感動させた共存の取り組みの核心と言えるものがありました……
藤原先生
教員がタバコを吸う場合は、授業開始まで45分空けるというルールを決めて、守ってもらいましょうということにしました”

“そこには科学的な根拠が……受動喫煙のうち、他人のタバコの煙そのものを吸い込んでしまうことを「二次喫煙」、そして、火が消えた後も喫煙者の呼気などに残るにおいや化学物質を周りの人が吸い込んでしまうことを「三次喫煙」……大和教授の研究では、この三次喫煙を防ぐのに必要な時間、つまりタバコを吸った人の呼気が喫煙前の状態に戻るまでにかかる時間が45分とされている”

“大和教授
……吸ってる人はわからないんですよ。自分がタバコくさいというのは。喫煙している人も悪気があって、タバコのにおいをさせてるわけじゃないんですよ。気がつかないだけなんです”

三次喫煙も防いでこそ生徒と喫煙者の教員が共存できると、洛星高校が取り入れた45分ルール。そこにはある生徒の奮闘が……喫煙ルールの見直しを主導したのは、今は大学1年生の井上天智さん。洛星高校に通っていた当時、先生たちからの三次喫煙に悩んでいた”

“井上天智さん
「自分自身にぜんそくがあったり、そういう呼吸器系のちょっと持病があって。のどが痛くなったりぜんそくが出るっていうのが、やっぱりいちばんきつかったですね」”

“悩んだ井上さんはある決意を固めます……生徒会長への立候補……喫煙マナーについて学校をあげて考えたいと訴え、見事、当選”

“井上さん
タバコを吸っている先生には個別に言いましたけど、きりがない。生徒全員の意見となったら、それは力を持つようになるんじゃないかと考えました”

“学校側も、本気でこの問題に取り組み始め……校舎の中にあった喫煙所を校舎の外のプレハブ小屋に移し……45分ルールを取り入れることを、学校側から生徒会に提案したのです。 それにより、井上さんたちの学校生活は一変した”

“井上さん
……全くしんどくなくなりましたし、全然違いますね。本当にありがたいなと思いましたし、言ってみる、行動に移すというのが、すごい大事だなと思いましたね”

“実は喫煙者の藤原先生も、このルールができて以来……意外なメリットが…。以前よりも仕事のメリハリがついたといいます”

“藤原先生
授業の直前には吸えないから、まず吸って、それから45分の時間を有効に何かほかの仕事をする。授業の準備するとか。ちょっと仕事の段取りも変わるかなというふうに思いますね”

 じゃあ、卒煙したら、もっと時間を有効に使えるだろう、と思いますが。その考えには至らないようです。

 記事はまとめとして、この教員と元生徒会長からの、受動喫煙に悩む生徒への助言が続きます。

“藤原先生
そういうのは遠慮なく先生に訴えればいいと思いますね。それは、どっちかというと吸っている人間はわからないので。どういう影響周りに及ぼしているかということをですね。先生がしっかり受け止めてもらっていろんな対策を考えてもらえればいいかなと”

“井上さん
先生って評価する側じゃないですか。ちょっと権力に差があるというか、そこがたぶんその生徒さんもちょっと怖いところなんじゃないかなって思うんですよ。僕も実際、怖かったですし。だから、そういうときは生徒会を使うとか、みんなで一緒にじゃないですけど、票を集めて意見を通すというのはいちばん筋が通ってるんじゃないかなと”

 この学校のことは、報道や大和教授からの情報で知って、当サイトでもとりあげましたが、タバコ臭い教師に生徒が「三次喫煙」禁止令を制定 ’20年9月

45分ルールを学校から提案してきたこと、生徒の内面の葛藤など詳しいことは初めて知りました。

 この若者の勇気、学校の良い対応は、私たちの活動の模範になりますね。

 
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓で引いてみてください。
 改正健康増進法、一部が開始! 受動喫煙被害撲滅の各地の動きは ’19年7月

 また教員が“隠れ喫煙”! 子どもたちが受動喫煙の被害 “頭が痛くて授業に集中できない”! 悲痛な訴えに地方紙が調査 ’21年7月

 教員たちがそろって校舎の中で法律違反! 喫煙を繰り返す ~ 岐阜 ’23年3月

 「吸っていない」ウソつき教頭が懲戒処分に ’20年11月

 まだ続く仕事中の“タバコ離席”は「職場の理不尽」……三次喫煙の被害はどうなるか? ’22年11月

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