条件を満たさず「喫煙目的店」とする違法営業 ~ 石田記者論説・弁護士見解
みなさん、改正健康増進法による、「喫煙可能店」という分類の意味は、名称からしてすぐわかるでしょうが、では、
「喫煙目的店」というのは、ご存じでしょうか?
当サイト記事や、『STOP受動喫煙 新聞』でも「用語事典」や松沢成文理事の連載などでお知らせしてきましたが、(→末尾に過去の関連記事リンクを記載。)
その違反、脱法が横行し、法律違反となる喫煙可能営業の店が、多発しているのです。
この問題について、あらためて石田記者がまとめています。
タバコも吸えて飲食もできる「喫煙目的店」って何? 受動喫煙を防げない「抜け穴」、弁護士に見解を聞いた
=石田雅彦 科学ジャーナリスト(’24年)11/24(日) 9:30=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。
“2020年4月から全面施行された改正健康増進法だが、原則として屋内禁煙とした飲食店に喫煙目的店なる「抜け穴」がある……脱法行為だが、タバコ問題に詳しい弁護士に喫煙目的店について見解を聞いた”
“飲食店など第二種施設の屋内には、喫煙専用室と加熱式タバコ専用喫煙室(紙巻きタバコの喫煙は不可)のいずれかを設置することができる(タバコ煙が外へ漏れ出ないなどの技術的基準を満たすことが必要)。喫煙専用室での飲食はできない”
“ 一方、改正健康増進法では小規模飲食店に配慮し、当面の間、特例措置が講じられている。小規模飲食店とは、2020年4月1日の時点で営業していて客席面積が100平方メートル以下、かつ資本金5000万円以下のケース”
“小規模飲食店は既存特定飲食提供施設とされ、施設の中で喫煙しながら飲食が可能な喫煙可能店として、店内での喫煙は当面の間、可能となる”
と、ここまでが改正法と、それで許された「喫煙可能店」の定義です。
そして、問題の「喫煙目的店」の説明が続きます。
“改正健康増進法には、喫煙所や店内で喫煙可能なタバコ販売店などの喫煙目的施設の中に「喫煙を主たる目的とするバー、スナック等」という項目がある……この「喫煙を主たる目的とするバー、スナック等」を喫煙目的施設の中の喫煙目的室(店)といい、施設全体を喫煙目的室にしたものを喫煙目的店という”
“ 喫煙目的店の条件としては……つまり、タバコの対面販売をし、タバコを吸うことを目的する場所を提供し、主食を出さずに主食以外を飲食させる営業をする飲食店は面積や資本金、営業日、従業員の有無などの縛りを受けず、店内で喫煙できるということになる”
つまり、「喫煙目的店」とは、新規店だったり規模が大きかったりで「喫煙可能店」とはできない(飲食席は禁煙にしなればならない)店でも、主食を出さず(おつまみ程度の軽食のみにして)、タバコの販売もすれば、全席で喫煙できる店になれる、ということです。
以下の石田さん作成の図にあるように、「店内で喫煙可能なタバコ販売店」ということです。
そして、その条件を満たしていない店があることの解説。
“特例措置の小規模飲食店に当てはまらなかったり、2020年4月1日よりも後に新規開店した飲食店などの中に、この喫煙目的店の要件を「抜け穴」にするため、タバコの出張販売の許可を得て営業するケースが多くある”
“問題になっている理由の一つは、既存特定飲食提供施設が届出義務がある一方、この喫煙目的店には届出義務がないため、行政が実態を把握できない点だ”
“ こうした喫煙目的店の拡大解釈による「抜け穴」については、東京都が2022年に厚生労働省へ要望書を出している……「飲食を主目的とする居酒屋などが喫煙目的施設をうたって営業する事例が多くあり、都や保健所などへ情報提供や苦情が増えている。喫煙目的施設の定義や要件を明確にするよう、都は国に対して求めている」”
“喫煙目的店では、タバコの出張販売許可を取得することと主食を提供できないことになっているが、実態としては必ずしもそうではなく、例えばご飯や麺類、お好み焼きなどを提供する居酒屋が喫煙目的店として営業している”
“そもそも本当にタバコの出張販売許可を持っているのかどうかも怪しい。また、東京都や千葉市など、従業員の雇用の有無によって飲食店での喫煙ができないという自治体条例に違反しているのではないかという疑念も生じる”
弁護士への取材。
“タバコ問題に詳しい藤原唯人弁護士……に見解をうかがった。
──……入口に喫煙目的店という表示を掲げる店を見かける……主食を提供しているような居酒屋が喫煙目的店を名乗るのは、改正健康増進法に違反しているのではないか……藤原「そもそも居酒屋やレストランバーなどの喫煙目的店は飲食が主な目的なわけで、改正健康増進法28条にある喫煙目的施設の定義『喫煙をする場所を提供することを主たる目的とする施設』とは言えないのではないかと思います」”
“──タバコの出張販売許可についてはどうお考えでしょうか。
藤原「タバコ店といった喫煙目的施設は対面によってタバコを販売し、その施設の屋内で喫煙できる場所を提供する目的の施設という定義ですが、飲食をさせる喫煙目的店はこの定義に併せて設備を設けて客に主食以外の飲食をさせる営業形態と定義できます。つまり、出張販売許可を有する主体こそが、喫煙目的店として『主食以外の飲食をさせる営業形態』を営んでこそ、本来的な定義に合致するものと考えます。しかし、実態として喫煙目的店では飲食を提供する営業者が主体であり、タバコを販売する者は主体ではなくなっています。これは単なる名義貸しであり、法律の定義を正しく反映できていないと思います」”
“──主食の提供を除くという要件もあいまいなのではないでしょうか。
藤原「この『通常主食と認められる食事を主として提供するものを除く』という要件について、厚生労働省はランチだけなら『主として』に該当しないとか、電子レンジでの加熱は該当しないなどの見解を出していてかなりあいまいです」”
“──喫煙目的店の問題について、法的にどう解決していけばいいのでしょうか。
藤原「喫煙目的店は喫煙可能店とは異なり届出義務がないため、実態がよくわかっていません。ただ、法律の構造でも飲食店は第二種施設であり、喫煙目的施設としての運用は限定的に解釈すべきというのが私の法的な見解です。改正健康増進法は5年後の2025年に見直しすることが定められています。もしこの先も喫煙目的施設に飲食店を含めるのなら、喫煙目的施設全てに届出義務を課し、ご飯類などを提供する居酒屋の形態は喫煙目的店に該当しないことを明示するよう改正すべきですし、タバコの対面販売を必須とし、出張販売は不可とするなど厳格な運用を明示することが必要と思います」”
“ 筆者も店先に「店内に喫煙目的室あり」という表示を認め、店内のどこかにタバコ煙が漏れ出ない区切られた喫煙室があるのかと思って入ったところ、店全体が喫煙可で辟易した経験が一度ならずある”
“喫煙可能店や加熱式タバコ専用店、また喫煙目的店など、多種多様な形態の飲食店があるが、こうしたうっかり受動喫煙にあわないためにも、法的な基準をしっかり作ることが重要だろう”
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