出入り禁止など、違反対策をより徹底した老舗「禁煙」旅館のその後の苦労 ~ 「サービス業が下に見られがちな風潮が日本にはずっと」「いつも怒っている」わけではない
’22年末、客に違反の喫煙をされた禁煙の旅館が、その後’23年にかけて、対策を講じたこと、その客が旅行サイトにケチをつける投稿をしたことなどが何度も報道されましたが(→末尾に主な当サイト記事リンクを記載)、最近、他の旅館でも同様の被害があったことや、同館でのその後の対応、心無い身勝手な投稿などへのご苦労の記事が出ました。
山形の老舗旅館女将が“逆ギレ喫煙客”をSNSで告発して炎上騒動に、女将が目指した「大胆改革」とは
=『週刊女性PRIME』2025/2/8=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。
“「禁煙」の部屋で、隠れて客が喫煙する――。違反客の行為を写真付きでSNSに投稿し、公に抗議する旅館が増えている”
“「お客様は神様」
客商売にはずっとつきまとってきた価値観……しかしここへきて、マナー違反の客にたまりかねて抗議し、SNS上でトラブルの詳細を俎上に載せる。そんな旅館側の態度が支持される出来事が相次いでいる”“ 今年の新年早々、規則に反して客室で喫煙した客に対し、栃木県の老舗旅館『塩原温泉 元湯 ゑびすや』がSNS上で「出禁」宣告……コメント欄には《その毅然とした姿勢に拍手》などの賛意が寄せられ、5万4000超の「いいね」を集めた”
ルールなのだから徹底が当然。多くの民衆が違反喫煙に対して怒りの意志、旅館の姿勢への賛同を示しているとのことです。
そして本題の、以前から対策に追われていた山形の旅館の話が続きます。
“ 同じくルール破りの喫煙客をSNSで公表し、のちにその客の“逆ギレ”書き込みの対応に追われたのが……米沢市から車で30分ほどの山懐にある白布温泉『湯滝の宿 西屋』……2022年12月16日。「館内全面禁煙」の規則なのにタバコを吸った形跡が……
「お客様がお帰りになった直後……部屋に入るとタバコの煙が立ち込めていて、これは出発直前まで吸っていたなって。畳にも灰がうっすらと落ちていて、かなり吸ったなという印象でした」”“ “許せない”と思った女将の遠藤央子さん(45)は雪が舞う中、宿泊していた50代の男性客を追いかけた。駐車場にいた男性に遠藤さんは「お待ちください」と声をかけ、怒りを極力抑えながら……
「当館は禁煙の旅館なんですけれども、あなた、お部屋でタバコを吸いましたよね。寒い(から外で吸えない)のはわかりますけど、なぜ守ってくださらなかったんですか」
……客は素直に「すみません」と謝り、その場は収まったかに思えた。しかし部屋に戻ると、清掃スタッフ2人が窓を開け放ち、極寒の中で懸命に掃除する姿が”“「土壁なのでニオイが染み込みやすい……今回のように何本も吸われた場合は3日間、扇風機を回して換気しなければなりません……すべて洗ってニオイを抜かなければならない。
真っ白な息を吐きながら、アカギレをつくった手で拭き掃除するその姿があまりにも痛ましく、いったんは収まりかけていた怒りが込み上げて、ツイッター(現・x)に書き込みました」(遠藤さん、以下同)”“投稿はややもすると炎上して旅館のイメージダウンとなる諸刃の剣だ。だが2日ほどで1000リツイート。共感と激励がほとんど……
《“契約違反”なのだから(中略)“逸失利益”を請求してもいい》《毅然とされた対応、尊敬致します》《ひどいですね…スタッフの方々お疲れ様です》《喫煙者のひとりとして大変申し訳ない。オトナの嗜みがない喫煙者はものすごくカッコワルイ》”“ 一方、一部否定的な反応も……
《私も煙草は苦手だけど??貴女もしつこい、、面と向かって注意したならもういいのでは?(´д`)》《女将の品格を疑う》《喫煙所をきちんと作ればいいのに、喫煙者だけ他所へ行けと爪弾きするなどサービス業にあるまじき傲慢さ》”“ その「喫煙所」、実は旅館にもともとあり、存廃が議論されてきた。しかし2000年3月25日にあった大火事が……「それをきっかけに火元の管理について、非常に神経質に……古い建物なので、喫煙所の煙が他の部屋にも流れてしまい、クレームを受けたこともあり……2020年に厚生労働省が分煙を強化する通達を出したので、タバコのニオイが苦手な人も安心して泊まれる旅館にしよう、同時に古い建物を火災から守るためにも完全禁煙にしようと決めたのです」”
“ 宿泊の際に、禁煙の旨を口頭で伝えたり、「館内・敷地内禁煙」という注意書きを館内や客室など目立つ場所に表示していた。それでもごく少数の宿泊客がトイレの中や、室内でビールの空き缶を灰皿代わりに吸った形跡を残して帰ることがあった”
“スタッフにこれ以上負担をかけるわけにはいかない――そう考えSNSに投稿……反応に安堵し、勇気づけられたが、蒸し返す人が……当の喫煙宿泊者本人である。利用した宿泊予約サイトに“逆ギレ”評価を書き込んだのだ。騒動から2日後……総合評価2(5点満点中)。サービスは最低の1。コメント欄には《冬は雪が多く、個人で雪かきしないと車出れません。スキー場感覚で行かないと行けません》と記載されていた”
“「喫煙を咎められたことには触れずに雪かきがどうのこうのと。もちろん私たちは車が出られるように除雪はするのに、ですよ。論点をズラした的外れなコメントで、これはもうまかりならんと」
遠藤さんは宿泊サイトの評価に返答する形でコメントした。事の経緯と全面禁煙に至った理由などを書き、
《本来であれば相応の弁償(クリーニング代)をご請求致したいところですが、恐らく応じて頂けることはないだろうと判断し、この返信を以て遺憾の意を改めてお伝えしたいと思います》”“ この騒動にメディアも注目し、遠藤さんに取材依頼が舞い込む……記事が出ると……同業者や飲食業、レンタカー会社などの人からも、
《私たちも喫煙で被害を受けたことがあります。よくぞ言ってくれた》
と溜飲を下げるコメントが複数届いた”“ 批判的な反応も覚悟して、遠藤さんが取材を受けたのは、ずっと抱えてきた違和感があったからだ。
「サービス業が下に見られがちな風潮が日本にはずっとあります。いまはネット社会……なかには参考になる意見もあるのですが、単なる感情的な感想や理不尽な意見もある。そうした意見に対しても、“お客様は神様”だから、旅館は唯々諾々と頭を下げるべきなのかと疑問に思ったんですね。そうじゃないだろうと」”“弁護士と相談し、約款や利用規則の見直しを進めた。チェックインの際に利用規則を提示し、〈当館は全館禁煙〉であることを説明した上で、「同意する」場合にはチェックを入れるという手順に……変更してから、トラブルが激減した”
“「あれ以来、私はいつも怒っているという印象を一部で持たれがちなんですが、そんなことはありません(笑)。でも勇気を出して声をあげてよかったのは、マナーだけでなく、お客様や宿のあり方についての議論を社会に提供するきっかけになったことです」”
“ 老舗旅館の一女将が見せた違反客と闘う姿勢─その背景には、老舗旅館を守る者の覚悟と責任があった……騒動を経たいま、「応援する客」と「旅館」という、存続を願う同志のような新しい関係性が築かれつつある”
“お客様は神様”だからこそ、神なら率先してルールを守るのが当然ですし、優良な多くの“神様”客に迷惑があってはならないのです。
(そもそも「客は神」の解釈がおかしいのです。以下の過去記事参照。)
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓やカテゴリーで引いてみてください。
禁煙の旅館で喫煙犯が! 怒りの声をネットに 共感・応援多数 ’22年12月
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