部分的な規制では不十分!実態を明らかに 「改正健康増進法」5年目の“見直し”迫る ~ 神戸大学などの調査発表

 全国的な改正健康増進法や、先ごろ大阪で実施された条例など各地の法令について、「不十分」であることを、神戸大などの研究者がまとめ、大学サイトで発表しました。

 原文は長くカタイのでなるべくわかりやすいように抜粋してみました。

 飲食店の禁煙化に部分規制を伴う法改正では不十分な実態を明らかに
 部分規制による限界と法律の再整備の必要性を示す
  =神戸大学サイト(片岡葵特命助教)2025.04.22=

 以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

“神戸大学……筑波大学……大阪医科薬科大学……の研究グループは、改正健康増進法および東京都受動喫煙防止条例(以下、法律・条例)の施行前後における飲食店の全面禁煙化の実態を明らかに”

“施行されている法律・条例では飲食店は全面禁煙化とはならず、いくつかの条件のもと喫煙が継続できるようになっています。本研究は……法律・条例の施行が飲食店の禁煙化に与えるインパクトを評価した国内で初めての研究”

2025年は改正健康増進法の見直しが予定されているほか、改正健康増進法よりも規制が厳しいとされる大阪府受動喫煙防止条例が施行……本研究では、部分規制を伴う法律・条例のもとでは、十分な禁煙化は望めないことが明らかとなっています。本研究の成果は今後、改正健康増進法や各都道府県の受動喫煙防止条例の改正・施行に際して、部分規制による禁煙化の限界を示し……法律・条例の検討を促す重要な知見となることが期待されます”

ポイント
・法律・条例の規制対象外となる小規模店舗で、分煙・喫煙可能から全面禁煙に変更した店舗はわずか35%のみ。
・法律・条例の規制対象店舗全面禁煙に変更しなければならないことが義務付けられているが、「分煙・喫煙可」の飲食店のうち78%が法律・条例施行後も分煙・喫煙を継続していた。
・全国での推計では、全面禁煙の飲食店の割合は55%から69%に増加した。しかし、仮にすべての規制対象店舗が法律に則って禁煙化をしていれば、禁煙化の割合は86%となるはずであった。
・2020年度の法律・条例の変更はその内容の理解や規制が不十分な可能性が示された。日本における包括的な規制が求められる。”

研究の背景
2002年に受動喫煙対策を努力義務として盛り込んだ「健康増進法」が制定……公共交通機関やオフィスなどで禁煙や分煙の取組が広がりました。しかし、店舗や施設によって対策が異なり、受動喫煙対策が十分に行き届いていない状況が課題となっていました。

そこで、受動喫煙対策を強化するため……「改正健康増進法」※1が成立、2020年4月に全面施行となりました。この改正により飲食店が原則禁煙となりましたが、2020年4月以前より経営をしている小規模な飲食店(客席面積100㎡以下、資本金5,000万円以下)に関しては法律の規制対象外となり、禁煙か喫煙かを店主が自由に選択できることになりました。東京都ではこれより厳しい「東京都受動喫煙防止条例」……2020年に施行され、従業員を雇用する飲食店はすべて屋内禁煙とすることが義務付けられています”

“しかし、規制の適用外となった小規模な飲食店では、法律・条例の施行後にどの程度禁煙化が進んでいるのかについては、十分に把握されていません。

そこで本研究では……施行前後に……東京都……2025年に受動喫煙防止条例が全面施行された大阪府……条例の制定がなく、かつ日本で喫煙率が2番目に高い青森県で営業をしている飲食店を対象に……調査を行い、特に法律・条例の「規制対象外」となっている飲食店において禁煙化がどの程度進んだかを明らかにすることを目的としました”

研究の内容
まず、2020年3月と2021年3月にアンケート調査……結果……「全面禁煙」店舗は55%(386/707)から68%(476/707)……「規制対象外」店舗では「全面禁煙」店舗は51%(233/457)から67%(308/457)に増加……「規制対象外」店舗で「分煙・喫煙可」から「全面禁煙」に変更した店舗は35%(78/224)でした。一方、禁煙化が法律・条例で義務付けられている「規制対象」店舗にもかかわらず、法律・条例施行前に「分煙・喫煙可」だった店舗のうち78%(76/97)が禁煙化をせず、「分煙・喫煙可」を維持していました”

“次に、……全国の飲食店における屋内喫煙状況の推計を行い……結果、「全面禁煙」店舗は法律・条例の施行前:55%、施行後:69%と推計”

“仮に法令遵守が徹底され、すべての規制対象店舗が禁煙化を行ったとしたら、法律・条例施行後の「全面禁煙」店舗の割合は全国で86%と推計されました”

“今後の展開
現在の法律・条例が部分規制であることにより、日本における飲食店の禁煙化への効果は限定的であることが明らか……規制の上では本来禁煙化が必要な飲食店であるにも関わらず、分煙・喫煙を継続している店舗が78%見られたことから、法律・条例の適用の徹底が必要といえます。

本研究の結果は……政策立案者、研究者、レストラン・バーの経営者、従業員らとの議論をする必要性を示しています。また、現在の法律・条例の理解や遵守の課題を共有し、受動喫煙防止のための法律・条例改正の検討が求められることを示唆しました”

 上記を書いていたら、遅れて報道がありました。発表をうまくまとめているようです。

 受動喫煙防止の改正健康増進法施行5年 飲食店全面禁煙いたらず 部分規制では限界指摘も
  =『產經新聞』2025/5/8 07:00=

“ 受動喫煙防止を目的とする改正健康増進法が令和2年に施行されて今年で5年、飲食店も従業員への受動喫煙防止のため原則禁煙とされたが、小規模店舗は対象外となっており、全面禁煙化が進んでいないのが現状だ。実際に、施行前後で全面禁煙に移行した小規模飲食店が3割程度にとどまることが神戸大などのチームの研究でわかっており、「部分規制では限界がある」と法改正の必要性を訴える専門家も多い”

“施行後5年で内容見直しも検討するとしており、今年はその年にあたる”

“「喫煙目的店」として登録されれば喫煙を認めているほか……既存小規模店舗については、喫煙専用室を設けることなどの経過措置が設けられているが、法律上例外にできる要件が曖昧という指摘もあり、当初から「全面禁煙は困難」という懸念の声が上がっていた”

“条例を施行した東京、類似の条例を完全施行予定だった大阪……条例がなく喫煙率が全国2位の青森の3都府県の飲食店にそれぞれアンケート……結果、規制の対象外となっている小規模店舗で「分煙・喫煙可」から「全面禁煙」に移行した店舗は35%にとどまっていた……規制対象の店舗でも、78%の店舗が……全面禁煙に移行せず、分煙・喫煙可を維持し、屋内喫煙が維持されていることがわかった……維持した店舗は主にアルコール類を提供する飲食店だった”

“研究チームでは「店側の法律の認識不足ではないか」と分析”

“東京、大阪、青森という地域差で有意差は見受けられなかった”

“全規制対象店舗が全面禁煙していれば、全国で86%の店舗が全面禁煙化しているはずなのに、69%にとどまっていると推計”

“ 調査に加わった神戸大大学院の片岡葵特命助教(公衆衛生・社会疫学)は「部分規制を伴う法律や条例では十分な禁煙化は望めない」と指摘”

“ スペインでは2006年禁煙法が施行、職場などでの喫煙は禁止されたが、飲食店では店主の裁量に任せたため、たばこを認める店が続出。効果が見られないとして、11年に飲食店を含むあらゆる公共の場での喫煙を禁止する法律が施行されている”

“ 片岡氏は「……全面禁煙のためには法律や条例の適用の徹底が求められる」としたうえで、完全規制する法律が施行された国では、飲食店の店員の健康被害が減少するという先行研究があると説明。改正健康増進法にも罰則はあるものの、基本的に警告で、即時の営業停止や罰金につながらないことも背景にあるのではないかとして、「国や自治体、飲食業界と議論していく必要がある」としている”

 日本のやることって、どうして中途半端ばっかりなのでしょうね。

 人にタバコの煙・臭いを嗅がせるのは暴力であり、犯罪とみなすべきです。本来そうであるという視点を持てば、公共の場なんか全部禁煙が当然となるでしょうが。

 
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