住宅の受動喫煙はいまだに深刻! 被害例、被害者の活動から科学ジャーナリストが考察「近隣住宅からの受動喫煙問題を考える」
受動喫煙・タバコ問題を追及するジャーナリストの石田さんが、住宅問題についてあらたな論説を発表しています。※末尾に石田さん他の関連記事リンクを記載。
「お隣さん」から致死性の「タバコ煙」が我が家へ。近隣住宅からの受動喫煙問題を考える
=石田雅彦科学ジャーナリスト(’25)5/16(金) 11:56=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。
“ タバコ煙は風に乗ればかなり遠くまで届き、ちょっとした隙間があれば侵入……近隣住宅に喫煙者がいればタバコ煙による受動喫煙の害が生じることも……近隣住宅からの受動喫煙問題は、新たなタバコ問題に”
“タバコ煙は、喘息などの持病を持つ人や化学物質過敏症の患者さんなどにとっては死活問題だ。だが、日本はもちろん世界各国でも、近隣からの受動喫煙に関して被害者を救済する法律はほとんどない”
“プライベート空間での近隣の喫煙者による受動喫煙の被害は、世界的にも大きな問題になりつつある。改正健康増進法のような公共空間の禁煙化や受動喫煙防止対策がプライベート空間での喫煙者の行動変容や禁煙に影響をおよぼすことはあるが、受動喫煙問題は明らかに公共の場からプライベート空間へ移ってきている”
“ そのため、改正健康増進法の5年後改定に、こうした近隣からの受動喫煙防止対策を盛り込むべきだろう”
「日本禁煙学会」が国へ提言
「採用する方向で検討を進めている」と回答
“タバコ問題の関連学会が2023年にマンションや賃貸住宅を所管する国土交通省と国土交通大臣に対し、マンション標準管理規約コメントの改定を求める政策提言を出している。この提言を政府はどう受け取っているのだろうか”
“ 政府は2025年3月に「マンションの管理・再生の円滑化のための改正法案」を閣議決定し、国会に提出した。区分所有法やマンション管理適正化法などを一括で改正する内容で、成立すれば2026年4月からの施行”
“国土交通省に確認したところ、前述した政策提言を受け、審議中の今回の改正案に盛り込む形でマンション標準管理規約コメントに受動喫煙防止の内容を採用する方向で検討を進めていると回答……実現すれば、ペットに関する管理規約と同じように今後、各マンションの管理規約の内容は受動喫煙対策を講じるように変わっていくだろう”
集合住宅の被害は“格差問題”でもある
健康被害は
“低所得者など喫煙率の高い層が集合住宅に住むことが多い。こうした理由から、プライベート空間での受動喫煙問題は社会経済格差や健康格差の問題とも言える”
“ 日本では今、近隣からの受動喫煙の被害に苦しむ人たちが声を上げ始めている。実際に被害を受けた経験を持つ人が立ち上げた「住宅での受動喫煙被害を考える会・兵庫」もその一つで、この会のサイトには被害を受けた人たちのアンケートが寄せられている”
“ 米国で集合住宅の喫煙可能エリアから禁煙エリアへタバコ煙由来の微小粒子状物質(PM2.5)がどのように流入するのかを調べた研究によれば、流入量には風向きや換気扇の稼働、喫煙量など、多数の要因が関係するものの、禁煙エリアの住人をタバコ煙から守るためには集合住宅全体を禁煙にするしかないと結論づけている”
“約5000人の子どもを戸建て住宅と集合住宅で比較した米国の研究によれば、集合住宅に住む子どものほうがニコチンの代謝物であるコチニンの濃度が45%多かった……両者の違いは近隣からのタバコ煙の影響が考えられると”
“近隣からのタバコ煙は容赦なく禁煙宅へ侵入する。韓国ソウル市内の集合住宅に住む禁煙家庭の受動喫煙状況を調べた研究によれば、1年間に約3/4の禁煙居住者が受動喫煙を1回以上経験していた”
“ 微小粒子状物質(PM2.5)が増えれば死亡率も上がる……タバコ煙にも当然、含まれ、受動喫煙も肺疾患などの健康への悪影響を起こし、これはお隣の喫煙者から送られる致死性物質とも言える”
“シンガポールの集合住宅で、隣室からの受動喫煙によるタバコ煙の微小粒子状物質が非喫煙者の居住者へどのような影響をおよぼすのかを調べた研究によれば、タバコ煙の影響を受けない非喫煙者の居住者より、受ける非喫煙者の居住者のほうが微小粒子状物質の曝露濃度が3倍以上高かった”
対策、“禁煙マンション”は
“集合住宅の禁煙化も進んでいる。日本でも例えば東京都住宅供給公社(JKK東京)が、専有部分を含む敷地全体を完全禁煙化した賃貸住宅を提供し始めている。こうした案件はいずれも高倍率となり、集合住宅の禁煙化を望む入居者が多いことを物語っている”
“禁煙化したせいで、集合住宅から喫煙者が出ていったり賃料収入が不安定化することはない。米国では公営の集合住宅の禁煙化が進んでいるが、マサチューセッツ州の禁煙化された公営集合住宅の居住変化を調べた研究によれば禁煙化前と転居数に大きな変化はみられなかった”
“集合住宅における禁煙化と喫煙者の行動、受動喫煙に関する17の論文をまとめて比較検討したところ、集合住宅を禁煙化すれば喫煙者の喫煙量が減ったり禁煙するなどの行動変容がみられ、受動喫煙の害も減少することがわかった”
“残留タバコ煙(三次受動喫煙)は、喫煙者が居住していた住居を禁煙化した後も残る。賃貸住宅などの集合住宅を禁煙化する場合、次に入居する居住者に対して残留タバコ煙による汚染の除去も重要だ”
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