タバコと化学物質過敏症

【本記事は、受動喫煙撲滅機構の関係団体による寄稿です】

他の人が吸っているタバコからの煙(副流煙や呼出煙)を吸い込むこと(受動喫煙)によって、様々な体調の不調が生じることがあります。

また、眼の前で吸われたタバコの煙だけでなく、床や壁、衣類に付着した煙や、その他残留している物質によって、症状が起こることもあります(「三次喫煙=サードハンドスモーク」とは?)。

受動喫煙によって発生する症状に対して、「受動喫煙症」と診断をする医師もいますが、タバコによる「化学物質過敏症」との診断をする医師もいます。

受動喫煙症の診断医でない、一般の医師には、「受動喫煙症ですか?」と尋ねても、「そのような病名はない」と回答する医師もあります。

そのひとは、確かに、タバコの煙で苦しんでいるのに、なぜでしょうか?
医師による「診断」という視点から、見直してみましょう。

受動喫煙症とは?

「受動喫煙症の分類と診断基準」とは、日本禁煙学会と禁煙医師連盟・診断基準委員会で策定したものです。

なおこれは、(2018年9月現在)標準病名マスターに登録されている標準病名では、ありません。※レセプト病名(標準病名マスター)とは
この点などから、新しい考え方である「受動喫煙症」の診断を、行わない医師も多いのでしょう。

☆受動喫煙症に関する詳しい情報は、当サイトの過去のコラム「受動喫煙症知っていますか?」または『STOP受動喫煙 新聞』第25号の特集をご覧ください。

化学物質過敏症とは?

ごく微量のさまざまな化学物質によって引き起こされる頭痛・吐き気・自律神経の異常などの症状。 CS 。

※三省堂 大辞林より

CSという単語がでてきました。何でしょうか?

CSって何?

Chemical Sensitivity の頭文字。
さいきんは、MCS(Multiple Chemical Sensitivity, 多種化学物質過敏症) と呼ぶこともあります。
ここで、化学物質過敏症についての、環境省と厚生労働省の考え方を見てみましょう。

環境省の見解

まず、呼び方ですが、2018年9月現在においても、2015年の研究報告書が最新であり、その中では、

環境中の微量な化学物質のばく露によって多様な症状の誘発や増悪を訴える本態性多種化学物質過敏状態(以下、「いわゆる化学物質過敏症」と言う。
平成27年度「環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究」報告書

とあり、「いわゆる化学物質過敏症」とし、「化学物質過敏症」とは呼称していません。
また、

これらを踏まえると、いわゆる化学物質過敏症とは1つの疾患というよりも、化学物質ばく露も含めた、いくつかの要因による身体の反応や精神的なトラウマが重なって表現される概念と考えることが、現在の時点では妥当と考えられる。

とし、一つの病名としてはふさわしくないという見解のようです。

ただ、化学物質にさらされて症状に苦しんでいる人々がいることを否定して言うわけではありません。

実際に健康影響を訴える集団が存在しているにもかかわらず、病態や発症メカニズム等未解明な部分も多く、その科学的知見を基盤とした実態はよく分かっていない

としています。

厚労省の見解

既存の疾病概念で病態の把握が可能な患者に対して、「化学物質過敏症」という診断名を付与する積極的な理由を見いだすことは困難

「室内空気質健康影響研究会報告書:~シックハウス症候群に関する医学的知見の整理~」の公表について

としており、病態の存在自体を否定はしないけれども、「化学物質過敏症」の呼称が、かえって「科学的議論を行う際の混乱の一因」となっていると指摘している。

これは、現時点においては残念ながらCS・MCSは科学的に解明されていないため、「化学物質過敏症なのか?」を議論していると、いちばん大切な患者の治療に進めないことになり、
アレルギーや中毒と言った、既存の疾患によって説明可能な症状は、その診断で治療に進むべきだと指摘しているのではないでしょうか。

なお、「臨床検査法及び診断基準が開発され、微量化学物質による非アレルギー性の過敏状態についての研究が進展することを期待したい」としており、CS・MCSの存在を否定しているわけではなく、病名としては認めているようです。

標準病名マスターへの登録

2002年にシックハウス症候群 を 標準病名マスターに登録

2009年10月1日 に、化学物質過敏症を 標準病名マスター に登録

タバコと発症

タバコ(受動喫煙)によって、いわゆる化学物質過敏症の症状を発症する人は、実際にいます。

診断の難しさ

タバコによって症状が発症している人にとっては、その症状の原因がタバコの煙であると、認めてもらいたいものです。

ですが、医師の視点で考えた場合、その症状が本当にタバコによるものなのか、それとも、他の物質に対して発症したものなのかを判断する必要があり、それが非常に難しいという面もあります。

化学物質過敏症と受動喫煙

タバコの煙を吸うことによって、体調が悪くなる人は、多く存在します。

その人達にとっては、医師に「タバコの煙が原因だ」と断言してもらうことによって、さらなる回避行動をとったり、喫煙環境を変えてもらったりと言った、実際の行動に進むことができるようになります。

1日も早く、受動喫煙と、その症状の因果関係が明確になることを、願ってやみません。

そして同時に、現時点において、既にその因果関係に確信を持った医師によって、受動喫煙症の診断が行わております。

受動喫煙で苦しんでいる方は、ぜひ一度、受動喫煙症の診断医を受診なさってください。

なお、受動喫煙撲滅機構では、「受動喫煙オンライン相談」を開設しています。
健康問題についてはこちらにお問い合わせください。

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タバコと化学物質過敏症” に対して9件のコメントがあります。

  1. ぶたみみこ より:

    私は職場にて受動喫煙症になり退職しました。オフィス自体は禁煙でしたが喫煙者があまりにも多く三次喫煙によるものです。

    勤務先は小さなテナントビルでしたので、空間が狭いこともあり、エレベーターの中や廊下もタバコ臭く、周りにいる喫煙者やその方のカバンや服、喫煙後の呼気からもタバコ臭がスゴい状況でした。

    退職後はじめの4日間は体調がよくなり、これでタバコ害とは無縁になったと思ったのですが、五日目以降は、今まで使っていたシャンプーで頭がヒリヒリしたり、頭痛、心拍数上昇、洗濯洗剤臭で喉や目が痛くなり、電車の中で匂いの強い柔軟剤や整髪剤や香水などやタバコ臭のする喫煙者がすぐ近くにいると頭痛、鼻水が出る、息苦しさ、心臓がドキドキしてくる、気持ち悪くなる等の化学物質過敏症と思われる症状が一ヶ月ほど続いています。

    ネット検索にて私と同じ症状の方がおり、有害物質で溢れかえっていた空気から、通常の環境のキレイな空気に移ると、離脱症状が現れて様々な症状が出てきとありました。
    それが2、3か月続き、その後も症状は緩和するものの、化学物質過敏症は何年も続いていると。

    離脱症状は長年服用していた薬剤を急に止めるのと同じ原理だそうです。

    このように私と同じタバコが蔓延した職場を離れた後に化学物質過敏症を発症した方の意見や情報を頂ければと思います。

    もっと早くタバコが蔓延した職場を辞めていればと後悔の念しかありません。
    また、三次喫煙ということを早く知っていればと。

    どうか宜しくお願い致します。

    1. ユカタン より:

      ぶたみみこさんへ

      あまりにも辛い様子がわかります。
      そして、悔しさなどもありますよね。

      わたしのピーク時の受動喫煙症状などに、よく似ております。
      そういうときには、周囲には、理解者いなくて、ひとりで悩むことばかりでした。
      職場が喫煙者ばかりだということで、それだけで弱みを握られたような気持ちでしたね。
      結局、喫煙者の課長にも気まずいままで、退職するしかありませんでしたが、何事も辛抱が第一などと、無理をして半年闘い続けました。
      結果的に、心身ともに厄介な不調ともなり、退職することにしました。
      常日頃、受動喫煙や第三次喫煙などは、これからは絶対にそういう状況にならないという、強い気持ちを持つことが、身を守るために大切だと思いました。

      ぶたみみこさん、何かとうまくはいかないと思いますが、どうか、お身体を最優先にしてくださいね。わたしも、そのようにします。

  2. パンダ より:

    安易に世の中に出した為、このような健康被害が起こったのでしょうね。
    便利さや新商品の開発で、結果や売上重視だったのではないでしょうか。
    しかし研究者の方も言われていましたが、研究には時間がかかり、そんなに新しい発見などすぐには出来ないと。
    結果を求められる世の中では、いつ結果を出せるか分からない職業は正社員での安定した雇用がないと言われていました。
    ノーベル賞を受賞される方も、何十年も研究された結果の方が多いのではないでしょうか?
    タバコも海外に影響され、追加される化学物質の安全性を見落としたのだと思います。

    ただ一番問題なのは、これからの子供や若い人、働く世代が病気になる事です。
    そして、高齢者の中には余生を楽しみ、充分長生きしたから健康でもっと長生きしたいとは思っていない人は、禁煙をしようと思っていないと言う事です。
    それも若い世代の病気になる人を増やすのです。

    「それぞれが自分だけの問題ではないのだ」と言う意識を持たなければ、この喫煙問題は解決しません。

  3. パンダ より:

    九州・山口の方

    9月5日(木) 午前7時10分~ KBC九州朝日放送 「アサデス。」
    で化学物質過敏症の放送があるそうです。
    みらいクリニックの今井院長がご出演されるそうです。
    化学物質にはタバコも含まれますので、放送地域の方はご覧になって下さい。

    今後、受動喫煙症の特集も取り上げて頂けると嬉しいですね。

  4. いろは より:

    煙草って香料も入っているのですか?それともニコチンやタール等の匂いに虫が集まるかも…と言うことでしょうか?
    どちらにしても恐ろしいですね。

    私は化学物質過敏症と診断されていて、その前から香料断ちは勿論ケミカルフリーな食事法を始めて既に4年、特にアルカロイド系の物質に弱い体質らしく有機トマト少量でさえ食べると全身が痛くなります。

    あまり知られていないのが不思議なのですが、煙草に含まれるニコチンは数あるナス科の植物(茄子・じゃがいも・トマトなど)の中でも強力なアルカロイドの一種。
    煙草に対するアレルギーと他のナス科の野菜やチョコレート(カカオはアルカロイドを含む)などへのアレルギーは結び付きが強いのは当然と言えるはずです。
    それらの食べ物の摂取量と受動喫煙が一定量に達して、ある日突然アルカロイド全般へのアレルギー反応が出始める、と言うこともあり得ると思います。

    「たかが少し臭うだけ」なんて甘い考えで食と言う生命活動まで脅かされる訳ですよね。
    ちょっとでも匂いがすると言うことは気化した物質を吸い込んでいると言うこと。
    ただ癌の危険が高まるとか吸い込んだその場で具合が悪くなるとか、そういった単純な話だけでは済まされない事だと知って欲しいです。

  5. パンダ より:

    ユカタンさん

    車の販売店や中古車店、車修理工場、部品販売店など、車に関わる所って、喫煙者が多かったりしますよね。
    車好きのお客さんも喫煙者が多い気がします。

    1. パンダ より:

      ユカタンさん

      タバコの香料で蜂が入ってきた、はあり得るかも知れません。
      私も、受動喫煙を受けていた会社で、蜂が一気に3匹も入ってきた事がありました。
      都会の真ん中でどこに蜂がいるんだろうというような場所です。
      タバコの臭いに誘われて入ってきたのかも知れません。

      喫煙者のイライラした感じ、私も感じます。
      いずれも男性喫煙者ですが、ある会社では、部下に朝礼直後に急に胸を音がするくらい強くドンと叩いたりしていた人がいます。
      急な事なので心臓が止まってもおかしくない状況です。
      他の人も上手くやっていかないと怖いので何も言えませんでした。

      他の会社でも同じようなタイプがいました。
      掴み合いの喧嘩をし、相手に肋骨骨折をさせました。

      もう一つの会社は受動喫煙に遭った会社です。
      いつもイライラしていて10分おきに喫煙に行く時もしばしばでした。
      イライラすると、物を床に投げつけていました。
      事務所に空気清浄機はありましたが、空気清浄機からの三次喫煙も含め、三次喫煙が凄かったと思います。
      なので私は特に三次喫煙に症状が出るのだと思います。

      やっぱりそのような人には怖くて誰も言えませんよね。
      共通しているのは、自分の思い通りにならない時や相手が従わない時、自分を正当化させたい時にイライラしてきて暴力を奮っている気がします。
      また、そのイライラを正義感のある人だと周囲に思わせようとする所も共通しています。
      上手く付き合うにも、周囲に与える精神的ストレスは大きく、その人に気を使わないと仕事も進められません。
      また、周囲もそのような人がいると影響され、これくらい大丈夫だとパワハラの自覚が無くなってくるのです。
      しかし、困った事に会社側も注意くらいはしますが、そういう人に人を纏めるように役職を与えてしまう事。
      そして任せているからと本人の自由にさせてしまう事。
      自分は認められた、責任者だと人を従わせようとさせ、また周囲は遣りづらい状況になるのです。
      これは全て同じ業界、職種ではありません。

      1. ユカタン より:

        パンダさん、お声かけありがとうございます!
        かなり凄まじい話ですね!
        ただいま、東武東上線に乗り込んでおり、沢山の人で酔っています。
        たった今、小さなお子様を抱っこしているママが、立っている私の隣に来ました。
        すると、何でしょう、煙草の息が漂う感じです。悪いけど、その人が話すごとに臭いのです。
        そのママの母親らしき人も隣にいます。きっと、子供を頼みながら喫煙していたのだろうか。
        空席無しの沢山の人の中、移動も間になりません。

      2. ユカタン より:

        パンダさん
        過去に私も相当喫煙者に泣かされてきました。
        食品製造会社で定時制通いながらパートで働きに来ていた男性。
        当時は未成年でありながらも、会社も喫煙させていた状態です。
        パートのおばさま方にだけ態度が違い、社員のおじ様には反発、鍋蓋をぶん投げる。暴言吐くなり威嚇する。他人の悪口を言うなり、大変な人でした。
        直ぐに煙草を吸いに行って戻り、また繰り返す。
        会社側に話しても、この人の居場所を無くすからダメだと言われました。
        世の中には、辛い場所もありますね。

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