受動喫煙防止の「義務」
[本記事は、受動喫煙撲滅機構の関係団体による投稿です]
今を去ること16年前の2002年、「健康増進法」(8月2日法律第103号)が制定され、翌年施行、公共施設等の管理者に、受動喫煙防止の「努力義務」が課されることになりました。
その根拠としては 労働安全衛生法第68条の2 が挙げられています。
(受動喫煙の防止)
第六十八条の二 事業者は、労働者の受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。第七十一条第一項において同じ。)を防止するため、当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする。
詳しくは、厚生労働省の 職場の「受動喫煙防止対策」は事業者の努力義務です(2018年度版) をご覧ください。
喫煙所を「リフレッシュ ルーム」と表記している例(ときどきあります)
努力義務に過ぎない?
法律や条例を見る限り、「努めるものとする」とあり、努力義務にとどまっています。
では、努力義務であれば、具体的な施策を取らなくても大丈夫なのでしょうか?
努力義務を怠った先には・・・
この「努力」義務は、受動喫煙被害者の健康や権利を守るための「努力」である事を忘れないようにしましょう。
この努力を怠っている施設においては、受動喫煙は発生していると考えられます。
その被害者が、それを理由として、使用者を訴えることを、想定しておく必要があります。
受動喫煙と健康被害への因果関係が認められている今日、受動喫煙の発生防止への努力義務を怠った場合、その施設利用者や子供の健康その他被害の、賠償責任を認定される可能性が十分にあります。
事実、厚生労働省の資料「受動喫煙をめぐる訴訟の動向」 によれば、
「雇用主の責任を認めて5 万円の慰謝料支払命令」「和解金700万円」の2つの事例があります。
江戸川区職員(受動喫煙)事件判決について
2004年のことではありますが、一つ気をつけたいのは、「診断書」を提出する前においては、「配慮義務違反は認められない」との判断がなされている点です。
被害を明確に伝えることの重要性が分かります。
※今後、訴えなどで診断書をもらうことを考えている人は、以下を参考にしてください。
本コラム’18年4月24日 「受動喫煙症」 知っていますか?
同8月10日 職場での受動喫煙 その2「今なお、職場で受動喫煙が起こってしまう背景」
“改正”健康増進法
さて、その努力義務だけだった健康増進法は、ようやく’16年に改正案が示され、すったもんだのあげく、当初案よりかなりゆるくなったものの、
罰則が付いたものに改定されることが決まりました。
関連→当サイト「ニュース」 7月19日 7月31日 8月22日 など
実施時期もまだ先で、例外のほうが多いという半端な“改正”ではありますが、この遅れた国としては“一歩前進”とみて、
今後の影響・効果に期待したいとおもいます。
東京都では、条例により、さらに広く義務が!
さらに東京都においては、2018年4月1日より、「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」が施行されました。
(都民の責務)
第三条 都民は、受動喫煙による健康への悪影響に関する理解を深めるとともに、いかなる場所においても、子どもに受動喫煙をさせることのないよう努めなければならない。
2 都民は、都が実施する子どもの受動喫煙の防止に関する施策に協力するよう努めなければならない。
当条例においては、施設の管理者ではなく「都民」に対し、「子どもに受動喫煙をさせることのない」努力義務を課しています。
☆「子どもを守る条例」関連は、以下もお読みください。→当サイト「ニュース」5月11日 知っていますか?「子どもを受動喫煙から守る条例」(その1) (その2) 『STOP受動喫煙 新聞』’17特別号 20号 増刊号