受動喫煙症の相談と医師による回答 ① 家庭内での受動喫煙・三次喫煙(サードハンドスモーク)で、高血圧など深刻な症状が出続けて……
当サイトで開設しています「受動喫煙 健康被害のオンライン相談」には、相談がいくつか寄せられています。
そのなかから、具体性があり、特異な、参考になる事例を、相談者に内容の再確認をし、担当医に依頼、ご回答いただきましたので、紹介します。
相談:2018年12月
古井寿子さん(神奈川県相模原市) 70代【相談内容】
こちらのサイトで「受動喫煙症」という病名を初めて知りご相談したく思いました。喫煙者である夫と二人暮らしです。
私(相談者、妻)は28歳頃から60歳ころまで喫煙歴がありますが、10年前に禁煙し、現在に至っています。
禁煙してからはタバコの臭い、煙が苦手になり、夫のタバコも辛くてたまらなく過ごしてきました。
夫には何度も禁煙を勧めてきましたが、実現できていません。
(夫は肺嚢胞の病歴があります。普段よく咳をしています)夫は、在宅時はほぼ2階におり、私は1階ですごしています。
私の前では喫煙しませんが、2階やベランダで喫煙しているのだろうと思っていました。数か月前から目がしみる(涙目)、喉と鼻の中がヒリヒリし同時に口の中は苦く、頭が重くなるなどの症状が出るようになりました。
症状が出ると、さらに動悸がしたり、血圧も(平常時は130~145位なのですが)、夫が近くに来ると急に上がり、199/98になった時もあります。
そこで、朝晩2回、降圧剤を飲用するようになりました。(12月10日の内科受診後から)夫が外出などで不在の時は症状が出ず、本当に不思議なほど快適にすごせています。
しかし、夫が1階に下りて来ると、鼻やのどがヒリヒリと痛くなります。タバコの臭いに関してですが、以前は夫からはかなりのタバコ臭がしていて、耐えられず、離れた場所へ避けるようにしていましたが、最近はタバコの臭いは感じられず、ミントかハッカのような臭いが口から出ています。
そこで聞いてみたところ、加熱式タバコを使っているそうです。現在はプルームテックを使用とのことですが、昨年と今年3月までアイコスを使用、4月~5月頃まで紙巻きタバコ(メビウス)だったそうです。
喫煙場所は、自室、べランダ、玄関ポーチ付近、とのことでした。
そういえば、紙巻きタバコのころは、いっしょに出かける前に喫煙された場合、車に同乗したら臭いが強く、窓を開けていました。
私は目の症状がさいきん強くなったので、これはプルームテックの影響かもしれません。
喫煙してすぐではないときでも、時間があまり経過していない時は、私には明らかに症状が出ます。
夫が使った後のトイレや洗面所に入っても、反応します。
しかし夫が喫煙してから1時間くらい経過した後には、自然と症状が消えます。夫以外からの受動喫煙では、外出時の路上喫煙や喫煙所のそばなどでも、目がしみる、のどに違和感が出ますが、それらは一瞬なため、離れれば症状はすぐに治まります。
12月9日の晩、夫が2階へ移動してから間もなく、目やのど、口の中がひりひりした症状が続き、就寝前の血圧は189/103に上昇し、頭が重い状況で就寝しました。
翌朝、起床時も血圧が高かった事から、午前中から内科へ受診に行きました。
(以前からの担当医が開業によって他の医師に変わってしまっていて)新しい医師に、症状をすべて伝えたのですが、「わからない」との事でした。
血圧の薬とアレルギーを抑える目薬の処方箋を出されただけです。
そして、鼻・喉は耳鼻科にかかるように、と言われました。[病院で処方された薬]
オルメテックOD錠 40mg 朝食後1日1回1錠
アテレック錠10 10mg 夕食後1日1回
点眼薬パタノール 0.1%その日の外出中は、症状はまったく無しでした。
15時に帰宅し、キッチン、リビングですごしていると、10分程度で喉と鼻、口の中に症状が出始めました(夫は2階に在室)。夫:夕方、1階に下りて来て1時間位すごす→タバコの臭いは無し。
私:のど、鼻に症状がでたが、昨日ほどではなく。
夫:夕食後~23時頃まで1階~2階を行ったり来たり。
→近くで会話すると口、のどのヒリヒリ感が強まるこうした状況を「受動喫煙撲滅機構」にお伝えしましたところ、詳しい内容確認の質問をいただいたので、思い切って夫に話をしました。
(先に書きました、今どんなタバコを吸っているかなどもそれで確かめたことでした)
すると、
「具合が悪くなっているのはなんとなく知っていたが、喫煙の影響からとは、全く思っていなかった」
とのことでした。私のつらい症状を伝えたら、「禁煙する」と言いました。
そこで私は、
「自宅での喫煙は禁止(敷地内すべて)、外での喫煙後は、1時間経過してから帰宅すること」
などのルールを言い渡しました。
すると夫は、
「これからは禁煙する。病気が禁煙によって治ればよいが」
と、言ってはくれました。
しかし、私は100%信じたわけではありません。35歳から何度か禁煙すると言っていましたが、果たされていないからです。話した翌日は、1日家で過ごしていましたが、症状が軽く、
のどと口の中には違和感が出ましたが、目には出ませんでした。
多分、気づかって喫煙を控えたのかもしれません。私の病状は、やはり受動喫煙のせいでしょうか。
今後どうなるのでしょうか。
今後、どのようにすればよいのでしょうか、
助言をいただければ、と存じます。古井寿子
回答:大橋勝英先生 (医療法人 大橋胃腸肛門科外科医院・理事長) https://www.ohashi-ichougeka.com/
古井様の症状はタバコの臭いに曝露(ばくろ)されることで生じることから、受動喫煙による症状と思います。
臭いが染みついた家の中や車の中でも、染みこんだ有害な揮発性(きはつせい)物質によるガスが生じます(第三次喫煙=サードハンドスモーク=残留煙)。
化学物質過敏症が想像されます。まず自分の身を守ることが肝要です。
受動喫煙は「他者危害」といわれています。1. 加熱式タバコについて
a. プルームテックやアイコスなどの加熱式タバコは、タバコの葉を細かく刻んで熱してエアロゾル(霧・ミスト)を吸引するため、ニコチンや発がん性物質・有害な化学物質=とくに発がん性の強いニトロソアミンというガス・ホルムアルデヒド・ベンゼンに代表される多環芳香族炭化水素……、などを含んでいます。正体不明のものもあります。エアロゾル中の微小粒子状のPM2.5を高濃度で吸い、吐き出す(呼出)ことで周囲に広範囲で拡散させるので、他人にも害をもたらします。このPM2.5は肺のかなり奥まで運ばれ、悪影響を及ぼします。
“有害性が低減している”と宣伝されていますが、虚偽です。医学的根拠はありません。b. ニコチン供給器ですから、ニコチン依存症からの脱却は困難です。
c. 前述のとおり、受動喫煙は起きます。決して軽くはありません。
2. 病状について
ご主人に受動喫煙の害を認識してもらうことが第一です。妻を愛しているなら危害を加えないようにしてもらいましょう。なかなか卒煙できないなら、禁煙外来を受診するとよいでしょう。目がしみる、鼻の中がヒリヒリする、頭重感(ずおもかん)、血圧上昇が明らかに現れています。
女性は男性より有害な刺激に弱いのです。“病気の道連れ”にしないようお願いしましょう。常識ある方ならわかってもらえます。
受動喫煙で犠牲になった事例は多くあります。肺がん、脳血管障害、心筋梗塞、くも膜下出血、すい臓がん、ほか。
3. 血圧について
血圧上昇は、ニコチンの作用によります。ニコチンは血圧上昇物質アドレナリンを生じさせ、脈拍を多くさせ、心臓に負担をかけさせます。古井さんの場合、血圧が200前後というのは、大変危険です。心臓や脳血管障害の可能性が高まります。降圧剤はとりあえずは必要ですが、ストレスをなくすことや、原因たる受動喫煙を避けることから始めないといけないでしょう。
降圧剤は多種類あります。かかりつけ医と連携を密にして、適切な値にもっていきましょう。
4. 煙について
タバコの煙やエアロゾルのほとんどは目に見えません。目に見えているのは、ごくごく一部の粗大な粒子成分だけです。PM2.5のような微小粒子は肉眼では見えませんが、特殊な光線を当てると風呂場の湯煙のように見えてきます。
ましてやガスは目に見えません。
“見えないから安心安全”ではないのです。
「見えないものが危険」なのです。5. おわりに
灰皿や喫煙場所の提供、喫煙を自由にさせるのは、“死のサービス”です。
「自殺ほう助」「他殺支援」「無理心中の強要」といわれるゆえんです。
それほどタバコ・受動喫煙は危険なのです。以上のことをよく理解されて、ことに臨まれるとよいでしょう。
大橋勝英 (医療法人 大橋胃腸肛門科外科医院・理事長)
後日、相談者からその後の報告がありました。
【相談者からの再信】
その後も、体調はつらい日々が続いています。
やはり夫は隠れて喫煙をしていました(メビウス=紙巻きタバコ)。
先生のコメントに
「常識のある人間ならわかってもらえるはず」と書かれていましたが、
毎日2階では平然と喫煙している人間性に、ただ呆れるだけです。マスクを2枚して、布団に顔をかぶせて、目や鼻の痛みを我慢して寝ています。
夜中に目が覚めても、痛みは残っています。夫が不在の自宅で過ごす時間はまさに天国で、外出すると別人のように体調が良くなります。
この先どのような対処をしたらよいか?
辛い日々です。
【受動喫煙撲滅機構からの返信】
ご苦労、察して余りあります。
先日も、当機構には、夫からの受動喫煙で離婚を考えている、という相談電話があり、その方は『STOP受動喫煙 新聞』の定期購読も申し込まれました。
(かなりの化学物質症になっているそうで、送った『STOP受動喫煙 新聞』も、
「新しい印刷物のインクに反応し苦しくなるので、外気に干しながら、少しずつ読ませていただきます」とのことでした。
注:この件は印刷所に確認しましたが、現在『STOP受動喫煙 新聞』のデザイン・印刷を依頼している「株式会社ポートサイド印刷」では、全印刷において大豆インクを使用しているとのこと。それでも絶対アレルギーが出ないとは言い切れませんが、石油系インクよりかなりましだと思えます)
古井さんのご決断に、こちらが安直に(別居などを)推奨することはできませんが、
身を守るためにはやむをえない場合もあることでしょう。
取り返しのつかない体になる前に……、ということは、
一般論として、相談者みなには回答しております。
喫煙中毒・依存症には、何を言っても無駄な人が(先の相談者のご家庭でもそのようですが)多いようですが、
しかし中には、たとえば離婚をにおわせたり、別居したりなどの結果、思い直して
卒煙し、良い人に戻った例もあるようです。
どうぞ、お大事になさってください。
受動喫煙撲滅機構 内藤 謙一 拝
【相談者からの再信】
内藤様
お世話になっています。ここ3日間ぐらい痛みから眠れない日が続き、昨晩はホテルで宿泊しました。
外出していると、私はまるで別人のように体調が変わります(症状が出ないため)。
本日夕方帰宅し、家に入ると、嫌な臭いで、窓を開け、マスクをかける始末です。
私と同じ悩みの方がいるとの事、本当にお会いしたい思いになりました。
今は身を守る事に専念し、夫には、手紙で私の気持ち、思いを伝えようと思います。
※その後、夫さんは出て行かれたそうで、
「タバコ臭がなくなり、血圧も安定し、やっと普通の体に戻った気がします」
とのご連絡をいただきました。
しかし、「2階へ上がると、目や頬、唇がヒリヒリしてくるので30分が限界……毎日窓を全開にして、少しづつ片づけていますが、襖・障子・壁のリフォームを考えています」とのこと、
なお夫さんからは、反省と自己嫌悪のメールがときどき来るそうです。
「同じ悩みの方が」とのことで、古井さんには、被害者が多く集まる東京の「無煙社会をめざす会」定例会と、当方の「相談・学習 定例会」をすすめておきました。
また、『STOP受動喫煙新聞』も定期購読をご希望されたので、進呈のバックナンバーとあわせてお送りいたしました。バックナンバーでは様々な事例をご確認いただけるので、今後の対応に役立てていただければ幸いです。