約100年前(大正時代)から受動喫煙の健康被害は指摘されていた! 「視力障碍(しょうがい)」を起こすとも?!
【本記事は、受動喫煙撲滅機構の関係団体による執筆です】
厚生労働省「喫煙の健康影響」 において、タバコの健康被害について大変興味深い、古い書物の紹介がされています。
受動喫煙に関しても書かれているので、紹介いたします。
受動喫煙については、「最近になってようやくその有害性が認識された始めた」という表現をよく目にしますが、じつはかなり昔から受動喫煙の健康被害については認識されていたと言えます。
江戸時代

貝原益軒「養生訓」(1712年)
1712年に貝原益軒よって書かれた書籍です。
(略)たばこには毒がある。煙をのんで目がまわってたおれることがある。習慣になると大した害はなく、少しは益があるというけれども、損のほうが多い。
病気になることもある。また火災の心配がある。
習慣になるとくせになって、いくらでもほしくて後になってはやめられない。
することが多くなり、家の召使いを骨折らせてわずらわしい。はじめからのまないにこしたことはない。
貧民は失費が多くなる。
松田道雄訳、中央公論新社(中公クラシックス)、ISBN4121600851(2005年)
300年ほど前に書かれた「養生訓」に記されている、タバコに関する文章です。
さすがにここには受動喫煙については書かれていないようですが、タバコに関しては現代にもそのまま通じる内容で驚きを覚えます。
大正時代には

山賀益三 「 煙草の話」 (1924)
1924年=大正13年に、山賀益三によって書かれた書籍です。
・・又煙草の烟の中に常に居るカフエー、バー及びレストランの給仕等は煙草中毒を起し視力障碍を起こすことが稀れでないと云ふ。
煙草の話/山賀益三 著(1924)
なんと! 受動喫煙の健康被害について明確に書かれています。 100年近く前の資料です。
労働者である、給仕さんの健康被害について言及しております。“視力に障害を起こすことも少なくない”とのこと……!
勤務場所で受動喫煙被害に遭うという構造は、現在でも全く同じではないでしょうか。
昭和になって

恐るべき喫煙と健康/岡田道一 編著(1937)
1937年=昭和12年に フリッツ・リッキントによって書かれた書籍です。(岡田道一 訳編)
(急性ニコチン中毒の起り得る場合)
第三には非常に盛んに喫煙した狭い部屋の内に居る為めに、自分では喫烟しないでも急性中毒に罹ることもある。
(慢性ニコチン中毒)
引続いて長い間多くの人に依つて喫煙された室内に在る為めに起る場合である。此の場合は受身の喫煙とも称すべきであつて、その当人は勿論喫煙しないにも拘らず、喫煙者の為めに汚されたニコチンを含有して居る空気を呼吸する為めは不知不識の間にニコチンを体内に吸収する結果として起るものである。此の害毒を蒙る事の最も多いのは、ひどい喫煙によつて汚された部屋の内に一緒に起居する運命を負はされた強喫煙者の新婚の妻や子供達であつて、之は一種の人道上の問題であると云はなければならない。
恐るべき喫煙と健康/岡田道一 編著(1937年)
「自分では 喫烟しないでも 」「 受身の喫煙 」という表現は、まさに受動喫煙そのものです。
そして、弱者である「妻や子供達」の健康被害が、特に問題であると、「人道上の問題」(=人権問題)とも指摘しています。
「受動喫煙」という言葉がなかった時代にも、喫煙による健康被害やタバコの煙による周囲の人々への健康被害を、はっきりと懸念していたことが窺えます。
長い歴史の中で、タバコの健康被害に警鐘を鳴らし続けてきた先人たちには、今の日本の受動喫煙対策は、よく頑張っている、と褒めてもらえるのでしょうか?
それとも、歩みののろいものだと映るのでしょうか…。