加熱式タバコならテレビCMもOK?
【本記事は、受動喫煙撲滅機構の関係団体による寄稿です】
今回は、受動喫煙問題に関連して、テレビ放送の問題から考えます。
テレビで流れるタバコメーカーのCM
先日、テレビで加熱式タバコのCMを目にしました。
テレビでのタバコのCMは、しばらく見ていなかったと思います。
受動喫煙防止が急がれている昨今、誰もが見ているテレビで、タバコに関連するCMを放送することは、時代の流れに大きく逆行していると感じます。
加熱式タバコだから、良いのでしょうか?
そもそも、タバコメーカーによるテレビCMは、放送して良いのでしょうか?
日本タバコ協会の自主基準
一般社団法人日本タバコ協会は、自主基準により、以下のように定め、テレビでの製品広告を行わないとしています。
(1)媒体に関する規準
a. テレビ・ラジオ・シネマ・TVボード・インターネットサイト又はこれらに類似する媒体による製品広告は
行わない。ただし、成人のみを対象とすることが技術的に可能な場合は、この限りでない。
正会員としては、 日本たばこ産業株式会社、フィリップ モリス ジャパン合同会社、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン合同会社 の名前が上がっており、上記企業は製品の広告テレビCMを打たないはずです。
(そのため、タバコ会社は、製品の広告ではなく、“マナー広告”という形で多額な広告料を納め、大スポンサーとして、マスコミのタバコの批判報道を少なくさせるなどの、圧力をかけてきました)
ところが、私が目にしたテレビCMは、上記正会員による、加熱式タバコのCMでした。
製品広告ではない
そこでテレビCMをあらためて見直したところ、製品の名称や、製品を使用しているシーンは、ありませんでした。
加熱式タバコだから、、、というよりも、
企業理念をうたったテレビCMとなっており、製品広告には該当しないようです。
世界保健機関の国際条約
業界団体による自主規制以外に、タバコのCM規制ににまつわる法律を探したところ、タバコの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC) が見当たりました。
FCTCの下記 ウ の項目によると、タバコの広告、販売促進及び後援(スポンサーシップ)を禁止しまたは制限する。とあります。
- (ア)職場等の公共の場所におけるたばこの煙にさらされることからの保護を定める効果的な措置をとる。(受動喫煙の防止)
- (イ)たばこ製品の包装及びラベルについて,消費者に誤解を与えるおそれのある形容的表示等を用いることによりたばこ製品の販売を促進しないことを確保し,主要な表示面の30%以上を健康警告表示に充てる。
- (ウ)たばこの広告,販売促進及び後援(スポンサーシップ)を禁止し又は制限する。
- (エ)たばこ製品の不法な取引をなくするため,包装に最終仕向地を示す効果的な表示をさせる等の措置をとる。
- (オ)未成年者に対するたばこの販売を禁止するため効果的な措置をとる。
- (カ)条約の実施状況の検討及び条約の効果的な実施の促進に必要な決定等を行う締約国会議を設置する。締約国は,条約の実施について定期的な報告を締約国会議に提出する。
ここにも、「たばこの広告, 販売促進」とあり、タバコメーカーのイメージ広告は該当しないかもしれません。
イメージ広告への違和感
まず先にお断りしておきますが、あくまでもこれは、私が感じた印象であり、そのテレビCMを見た人それぞれ、異なる受け止め方があるかもしれません。
私が目にしたテレビCMは、タバコメーカーのイメージ広告であり、その内容が各種法令や自主規制に該当しないとしても、今回のタバコメーカーのイメージ広告には、強い違和感を覚えました。
なぜなら、その企業が販売に力を入れているのが、加熱式タバコであり、テレビCMの内容が、あたかも「加熱式タバコであれば」、「非喫煙者と同じ空間に居られますよ」とでも言わんばかりの雰囲気だったからです。
加熱式タバコは新しい技術であり、メーカーの宣伝文句を鵜呑みにしてしまう人も多いと思います。
そこに、強い違和感と、危機感を覚えました。
加熱式タバコは無害ではない!
まず注意していただきたいのが、当コラムや『STOP受動喫煙 新聞』でも何度もお伝えしてきておりますが、加熱式タバコは、紙巻きタバコより害が少し少ないかもしれない、というだけで、害がないわけではありません。
→ 加熱式タバコ・電子タバコ…“新型タバコ”とは?(=電気式・非加熱式のタバコについて)
加熱式タバコであっても、受動喫煙の被害は発生し、喫煙者は加害者となります。
加熱式タバコであれば受動喫煙の被害が生じないかのような、ミスリード(誤読・誤誘導)を招くイメージ広告は、許されるものではないと考えます。
喫煙者は、加熱式タバコは無害またはかなりましであると都合のよい思い違いをし、また受動喫煙の被害者も、その危険性に気が付きにくくなってしまいます。
むしろ受動喫煙への配慮を訴えてほしい
メーカーとして、利用者や社会に訴えるべき点は、なによりも、受動喫煙の問題ではないでしょうか。
加熱式タバコの危険性を正確に伝え、加熱式タバコの喫煙マナーの向上を訴えるべきです。
加熱式タバコの使用者が、「加熱式タバコだから受動喫煙の被害は無いのだ!」などと言い出したら、とんでもないことになります。
制限の中で生まれたCM
煙や臭いが少ないことから、害が無いと誤解されがちな加熱式タバコ。
先ほどお話ししたCMは、今のことではなく、そのような未来を目指しているという内容です。
「喫煙者も非喫煙者も一緒にタバコを楽しめるようになる。」これは、喫煙者と非喫煙者の共存社会を目指す私たちにとっては理想の未来のように受け取れます。
しかし、「タバコを一緒に楽しみたい」という考えは、あくまでも喫煙者の考え方では無いでしょうか。非喫煙者から、あえて喫煙を望むことは、あまり考えられません。
喫煙者のみなさんにも、「どうやって、非喫煙者と同じ空間で喫煙をするか」ではなく、受動喫煙の発生しない環境だけで喫煙を楽しむことを前提に、「どうやって、受動喫煙を起こすことなく喫煙を楽しめる環境を作るか」を、一緒に考えていただきたいと思います。
その一歩、二歩先を目指しているCMなのかもしれませんが、現状のタバコや加熱式タバコの有害性を考えると、ミスリードを招くばかりの悪いCMだと、言わざるを得ません。