“新型コロナに喫煙者が感染しにくい?” 珍説の検証記事(感染と「喫煙」問題その9)
(例によって色違いの記事名クリックでリンク、囲みはその抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。)
先日、“喫煙がコロナに有効”? 珍説に禁煙学会が反証~感染と「喫煙」問題その8 をあげましたが、珍説検証の別の記事が出ましたので、その続きとして、紹介します。
「喫煙者は新型コロナにかかりにくい」 まさかの新説は本当か (1/5)
=『ITmediaビジネスONLiNE』2020年04月28日 09時09分=
“「デマを流すな!」とご立腹の医療関係者も多くいらっしゃるに違いない。世界の医療の主流としては、このような説と180度真逆で、「喫煙は新型コロナのリスクを高める」ことが「常識」となっているからだ”
“WHOは3月20日、「タバコを吸わないでください。喫煙は、あなたがCOVID-19にかかった際に重症化させるリスクがあります」というメッセージを世界へ発信……東京都医師会が「禁煙」を呼びかけ……日本呼吸器学会が「喫煙は新型コロナウイルス肺炎重症化の最大のリスクです」という声明も出している。実際、志村けんさんが亡くなった際にも、「4年前に肺炎で入院するまでの40年以上、ヘビースモーカーだったことが影響したのでは」という説明をする専門家が多くいた……喫煙が慢性閉塞性肺疾患(COPD)をはじめとする肺の病気の主たる原因という事実がある”
“タバコ葉の成分にも医療へ応用できそうなものもないことはない。ならば、ニコチンにも何かしらの効果があってもおかしくはない。
ただ、研究への評価はさておき、「喫煙者は新型コロナにかかりにくい」という話に関してはかなり危ういものを感じている。データを都合のいいように解釈することで、ある特定の人々の利益につながる結論へと誘導しているように見えなくもない。つまり、いわゆる、スピンコントロール(情報操作)の可能性もあるからだ”
この研究への、疑問提起を展開。
“今、世界の愛煙家とタバコ産業は未曾有の危機に直面している……世界的バッシングを少しでも和らげようとする人々がいたら、彼らはどうするだろうか……つまり、新型コロナ感染に対しても、何かしらの効果があることを訴求するのだ”
“客観的事実として、タバコ業界が苦境に立たされると、どこからともなくタバコの健康面のメリットが唱えられる、というのは「あるある」というか、王道パターンなのだ”
“ニコチンが健康に役立つという研究結果は、世界のさまざまな研究機関から発表されてきた。それ自体は科学の発展に大きく寄与することなので喜ばしいことなのだが、問題はそのタイミングである。往々にして、喫煙の健康被害が国際社会で叩かれたときや、世界的に喫煙規制が強まったとき、ストレートに言ってしまうと、タバコに「大逆風」が吹いているタイミングなのだ”
“「タバコを吸っていると肺がんにはなるけど、アルツハイマーにはならないんだよ」……現代の医療では、この因果関係は否定されている。……喫煙が認知症リスクを高めるとか、アルツハイマーの危険因子になるという医学論文のほうが多いくらいなのだ。
では、なぜそっちが社会に浸透してないのかというと、「ニコチンがアルツハイマーに効く」という研究のほうが先に注目を集めてしまったからだ”
“人は最初にインパクトのある話を聞いてしまうと、後になってそれを否定する情報が出てきてもなかなか耳に入らないものなのだ。……筆者がここで指摘したいのは、このインパクトのある「ニコチンがアルツハイマーに効く」といった学術論文が世に出た2000年というタイミングだ。
……この時期は喫煙に対して世界的な大逆風が吹き始めたタイミングなのだ……「受動喫煙防止」。自民党のタバコ族があれだけゴネたのに、なぜこの規制が通ってしまったのかというと、国際的に受動喫煙防止という大きな潮流に、日本が抵抗できなかったことが大きい”“世界に強力なタバコ規制を広めるきっかけとなったFCTCの起草決定から1年3カ月後、まるでその勢いにブレーキをかけるかのように、「ニコチンがアルツハイマーに効く」という学術論文が発表されたのだ。世界のタバコ産業が、テレビ、映画、雑誌、そして報道ニュースで仕掛けてきたスピンコントロールを踏まえれば、これを単なる「偶然」と受け取るほうが無理があるのだ”
“苦境に追いやられた産業が、起死回生のスピンコントロールを仕掛けることが多々あり……マーケティングのために「都合のいいエビデンスをつくる」というのはタバコの世界でも決して珍しい話ではない”
“フランス保健当局は、ニコチンの有害性を忘れてはならないとクギをさし、研究をう呑みにして、喫煙を始めたり、ニコチンパッチなどを使用したりしないように呼びかけている。日本の愛煙家の皆さんもくれぐれも、「実はタバコ吸ってると新型コロナにかかりにくいんだぜ、プハー」みたいに、盛った話を広めるのはやめていただきたい”
“混乱期に「コロナ詐欺」を仕掛ける輩が後を絶たないように……自分たちの利益につながる情報を流す者たちはたくさんいる。社会がひっくり返るようなニュースに合わせて、しれっと不祥事を公表する企業のように、ドサクサにまぎれた情報操作を試みるのだ。こうした操作に踊らされないためには、情報のバックグラウンドに目を向けていくしかない。
この情報で誰が得をするのか。なぜこのタイミングでそんな話が出てきたのか。……便乗するデマの拡大にも注意しなければいけない”
WHO「World No-Tobacco Day」2012年ポスター
【追記】
その後、以下の報道がありました。
「喫煙者は感染率低い」との研究WHO、因果関係認めず
=『TBS NEWS』(5月)9日7時20分=
“WHO=世界保健機関は、たばこの喫煙者が新型コロナウイルスの感染率が低いとする研究結果について、「研究は評価を受けたものではなく、喫煙者は重症化するリスクが高い」と警告”
“WHOは7日、この研究結果について「まだ評価を受けたものではない」として、喫煙と感染との因果関係を認めませんでした”
“たばこが他の病気にとっても深刻な害があることは、すでに知られていると警告しました”
「ニコチンにコロナ抑制効果」は本当か フランスからの研究報告
=『デイリー新潮』(週刊新潮)2020年5月21日号掲載=