「公共の喫煙所ゼロ」だった鎌倉に、民間「喫煙所ブランド」企業が…! 受動喫煙、路上喫煙は?

 神奈川県を代表する観光地で、横浜市に隣接する鎌倉市では、横浜市などと違って、受動喫煙の問題から、鎌倉駅周辺にあった公共の喫煙所をゼロにしていました。
 →「公共の喫煙所ゼロ」鎌倉市の取り組みは…? ’23年2月

 しかし、喫煙所を各地に建てている民間企業が入り込んで、市から補助金を受け、駅の近くに喫煙所を新設したとのことです。

 はたして目論見どおり、路上の違反喫煙は減るのか。横浜市のような周辺への受動喫煙の問題はないのか。

 まずは地元の街の情報紙から。

 鎌倉駅周辺に喫煙所新設 市補助金活用で1カ所目
  =『タウンニュース』(鎌倉版)2023年11月10日=

 以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

“ 無料で誰でも利用できる公共の喫煙所「THE(ザ) TOBACCO(タバコ)」が小町通りにあるアイザ鎌倉3階に設置され、11月1日から利用が始まった”

“設置したのは、東京などでも喫煙所を運営する(株)……鎌倉市の補助金活用第1号

“鎌倉駅周辺に公共の喫煙所が設置されたのは、2019年に西口駅前時計台広場の喫煙所がなくなって以来、4年ぶり

“市は19年9月、鎌倉駅西口の再整備に伴い、「大船駅前のような屋内型喫煙所の設置も検討したが、スペースが足りず断念した。受動喫煙防止対策を施した喫煙所の整備は難しい」と同駅周辺で唯一だった公共の喫煙所を撤去した”

“ 鎌倉駅周辺は、路上喫煙禁止区域に指定されている”

“ 市では、民間企業や市民に対し、喫煙所設置に対する補助金の交付事業を19年から設け、協力を募ってきた……新設で上限500万円、維持管理費が年額上限240万円(最大5年間)……補助を受けるには、副流煙対策や周辺の居住者・店舗・建物などの同意5年以上運営などの条件が……対象となる区域は元々新設できる土地が少なく、テナント利用の場合も賃料はそう安くはない。そのため、設置が進まない状況が続いた”

“名乗りをあげたのが株式会社……喫煙所の運営や……広告、投票型喫煙所など……「喫煙所」に特化した企業”

“今年2月の本紙記事で駅周辺の喫煙所問題を知り、調査を実施。市の補助金を活用し、11月からアイザ鎌倉での開設に至った。時間は、午前9時から午後5時まで。年中無休

“観光案内所では、1日数件ある喫煙所の問い合わせに対して、ようやく案内ができるようになったという。市では、2例目以降の設置協力の呼びかけを引き続き行っていく”

 同社は、このタウン紙の記事で鎌倉が“穴場”であることを知って乗り出したとのことです。(もしや先述の当サイトで知ったのかも…?)

 ビルの3階にあるとのこと、それなら横浜市のような歩道の通行人への影響はないと思えますが、どうでしょうか。(行った感想をのちに述べます。)

 その企業からの広報も。

 鎌倉市喫煙目的施設設置等補助金制度の助成第一号「THE TOBACCO KAMAKURA」がオープン吸い殻ポイ捨てや路上喫煙によるたばこの煙が深刻な問題となっている鎌倉駅エリアに鎌倉市と協力して新設
  =『PR TIMES』(株式会社コソド)2023年11月1日 09時00分=

“喫煙所ブランド……を運営する株式会社……2023年11月1日(水)に新店舗「THE TOBACCO KAMAKURA」をオープン”

新しいカタチの喫煙所です……喫煙者が積極的立ち寄りたくなる場所をプロデュースすることで路上喫煙やポイ捨てなどのマナー違反を減らしていくことに寄与したい”

適切な場所に適切な機能を持った喫煙所を設置し、これまでの喫煙所には見られない心地よい喫煙体験を提供するべく、クリーンでゆったりと魅力的な喫煙シーンを演出した空間”

“2023年9月末時点で都内を中心に35店舗を展開……今後も店舗数の拡大を図っていきます”

“喫煙者が立ち寄る楽しみを少しでも提供できるよう設計してきました。本店舗においても、ゆらめく煙の中でタバコの背景にある文化的な面白さも感じながら、ゆっくりとマナー良い喫煙を楽しんでいただきたいと考えております”

“・鎌倉市コメント 鎌倉市副市長 千田 勝一郎

来訪者を多く迎える鎌倉駅周辺における公衆喫煙所設置は……永らく課題でした。今般、公民連携による第一号として……開設されたことを、喜ばしく思います。喫煙者には快適な室内空間でゆっくりと楽しんでいただき、非喫煙者には受動喫煙の心配がなく、路上に吸い殻のない美しい鎌倉……地域貢献にも繋がる新しいスペースとなることを期待しています”

“・鎌倉市観光協会コメント

……毎月第4月曜日に鎌倉駅西口広場の清掃……目立つのがタバコのポイ捨て……ポイ捨てや「路上喫煙禁止区域」での喫煙の抑止力、マナー向上につながればと期待します”

 「西口広場の清掃」で不法投棄が多いと言っていますが、喫煙所はそこから線路の下をくぐって行った東口です。西口広場から喫煙所に到着するには5分以上かかります。

 その喫煙所が入っているビルのサイトのお知らせ。

 【お知らせ】アイザ鎌倉3Fに鎌倉市喫煙目的施設設置等補助金制度の助成第一号「THE TOBACCO KAMAKURA」がオープン
  =『i-ZA鎌倉(アイザ鎌倉)』2023年11月7日=

“吸い殻ポイ捨てや路上喫煙が深刻な問題となっている鎌倉駅エリアで、非喫煙者と喫煙者が心地よく共存することを目指した新しいカタチの喫煙所がオープンしました”

 同社の弁をそのまま書いているようです。

 その地図。
 accessアクセス=『i-ZA鎌倉(アイザ鎌倉)』=

 ビル名は、「いざ、鎌倉」のダジャレなんですね。

 はたして、本当に「ポイ捨てや路上喫煙が深刻な問題となってい」たのでしょうか? これができて、解決したのでしょうか?
 久しぶりに鎌倉に行ってきました。

現地の様子

 開始ひと月後の12/3(日)に行ってみました。詳しくは『STOP受動喫煙 新聞』で報告します(45号掲載済み)が、ビルの奥の、3階なので、小町通り、路上への受動喫煙はありません。

 ビル全体・敷地は、上から見ると昔の鍵穴、前方後円墳のような形で(フロアマップ)、小町通りから入って、左右に並んだ店舗を抜けると、奥が半円形の、屋外・吹き抜けの広場になっています。吹き抜けを建物が囲んでおり、その3階の右端に喫煙室があるのですが、その階は、喫煙所と反対側(左端)に高級そうな和食店があるだけで、その間は現在お店などなしです。

 そこから喫煙所のほうに歩いていくと、だんだん空気がよどんだ感じがしてきました。喫煙所の前はかなりニオイます。扉が開くたびに煙が漏れるので当然で、「クリーン」だとか、漏れのないかのような表現は誇大です。晴れ着を着た女性二人が来て一人が入り、もう一人は扉の前で待っていましたが、このような場合は吸わない人が受動喫煙に遭うわけです。

 前述の同階のお店まではふつう臭わないと思いますが、ただし、廊下は屋内でつながっており、喫煙所を見た後、店の前まで戻ってきたところ(最初にお店の前に来たときは臭いを感じなかったのですが)、気のせいか、または自分の身にニオイが付着したのか、店の前の空気が他と違い少し濁っているような、気もしました。もしかしたら、喫煙所の利用が多い(扉の開閉も多い)ときに、かなり鋭敏な人、症状が出る人だったら、そのお店のあたりでも、苦しいと感じるかもしれません。
 まあ離れた下の階なら大丈夫でしょうし、もちろん小町通り側の店舗なら全く気付きもしないはずです。

 “街になかった喫煙所ができた”こと、企業が参入したこと、がニュースになったようですが、たとえば横浜駅周辺でも、高島屋・そごう・イセタン・地下街などに喫煙室はあるので、それらと変わらないような感覚です。(もちろん無いほうがよいですが)

路上喫煙・吸いガラは?

 小町通りの周辺をしばらく歩いても、路上喫煙は全く見かけません。
 狭い路地に行くと、喫煙はないものの、道の端に古い吸いガラを数本見かけましたが、夜中など人がいないときのものでしょう。

 喫煙所があることの案内板などないので、喫煙所ができたことはほとんど知られていないはず。「路上喫煙が深刻な問題」だったのが、その多数の喫煙者らがみんな喫煙所に行くようになって、解決した、とは思えません。(さきほど見た喫煙所利用者はみな若い人でした。スマホ検索や観光案内所で聞いたりして確認したのでしょう)

 しかし、これで路上喫煙が撲滅できるのでしたら、歩道に面した屋外、駅前やデパートの入口前などで受動喫煙を発生させている横浜市の喫煙所より、よほどマシとはいえます。
 ですので、横浜市は、屋外の歩道にJT出資のダダ漏れ喫煙所を置くことはやめ、鎌倉市が「期待」しているように、このような企業に依頼し被害のない屋内へ設置させるか、そもそも前述デパートなどの喫煙所(関内なら商業ビル「セルテ」に喫煙所あり)の利用をうながせばよいと思います。

 
    
 小町通りから見たビル入口と、3階の喫煙所。

 
 鎌倉市の路上の受動喫煙対策は以下(鎌倉市公式サイト「くらし・環境」→「生活環境」→「まち美化」ページ)

 路上喫煙の防止に関する取組

 市内の喫煙場所について

 喫煙所の設置を検討されている方々へ

 
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓やカテゴリーで引いてみてください。
 「公共の喫煙所ゼロ」鎌倉市の取り組みは…? ’23年2月

 小学3年生「おねがいタバコやめて」ポスターが特賞に ~ 鎌倉市 ’23年1月

 タバコの煙のない鎌倉飲食店MAP

 喫煙所は煙が漏れない形・有料に ~ 議員ブログ ’23年4月

 【45号発行】『STOP受動喫煙 新聞』’24年冬号 = 新幹線「禁煙化」まだ続く問題!/受動喫煙の発生を続ける横浜市!/職場の受動喫煙撲滅へ、市が立ち入り!/「用語事典」……などなど、有用な情報満載です! ’24年1月

 =46号=発行・『STOP受動喫煙 新聞』’24年春号 ~ 市営住宅で後遺障害、裁判に!/駅前喫煙所を撤去せよ!(大和浩教授連載)/喫煙所で路上喫煙は減ったのか? 鎌倉市回答/完全禁煙マンション建設中……等々、他にはない情報いっぱいの専門紙です! ’24年4月

 通刊48号発行 『STOP受動喫煙 新聞』 アパート完全禁煙化を達成した大家さんインタビュー / 外国と日本の喫煙所の問題(大和浩教授) / 横浜駅周辺多数の喫煙所問題……’24年10月28日(月)発送です。 ’24年10月

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