恐ろしい「親の喫煙」、「治療が効きにくく」
あらゆる研究結果や啓発が出ているにもかかわらず、なくならない、親から子どもへの受動喫煙……。
医師によるあらたな論説が出ました。
恐ろしい…「親の喫煙」が子供にあたえる意外な悪影響【医師が解説】
=『幻冬舎GOLD ONLINE(ゴールドオンライン)』米田 真紀子2022.10.12=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。
“受動喫煙は人体に多大な悪影響をおよぼします。特に小さな子供が受動喫煙をするとさまざまな病気を発症するリスクが大人よりも高くなるほか、妊婦の受動喫煙で早産や流産のリスクが高まると、きづ川クリニック小児科医の米田真紀子氏はいいます”
“受動喫煙は、主流煙を吸った人の呼気に混じる呼出煙と、燃えているタバコそのものから出ている副流煙の両方を吸うことです”
“子供の場合は大人より呼吸回数が多く、体重あたりの取りこむ毒物量も多くなります。そのうえ、毒物に対する感受性が高く、その後生きる時間も長いため、大人よりもはるかにリスクが高い”
まず受動喫煙の定義を明確にしているのがよいですね。よく受動喫煙全体の話なのに「副流煙が」と、「副流煙=受動喫煙」だとして話を進めている人がいますが、このようにタバコの先端から出る煙だけが副流煙であり、受動喫煙は喫煙者の吐く息も合わせてということです(さらにいえば「三次喫煙」も含む場合も)。
なお、「副流煙は主流煙よりも毒物の含有量が3~4倍」とありますが、成分によっては低いものもあれば、最高では120倍以上となる有害成分もあります。
“換気扇の近くで喫煙しても煙がじゅうぶんに換気できるわけではありません。たとえベランダで吸ったとしても、タバコの有害物質は服や皮膚・頭髪などに付いて子供に到達し、悪影響をおよぼします”
“タールは有名な発がん物質です。一酸化炭素は血管を傷つけ、動脈硬化を起こす要因”
“妊婦が喫煙または受動喫煙することによって、血液中に有害物質が溶け込むと、胎盤を通過し胎児にまでおよぶことが……胎盤の血流が悪くなり、胎児に成長障害が出ることがあります。赤ちゃんが十分に成長しきれず2500g以下の低出生体重児として生まれる確率が高まるほか、喫煙者の赤ちゃんの体重は非喫煙者の赤ちゃんと比べて体重や身長が平均して低くなる”
“早産や流産のリスクも上がることも……赤ちゃんの知能指数も低下する可能性が”
“1歳未満の乳児が受動喫煙することにより、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが上がるという研究結果が多数……両親が喫煙者の場合だと、子供がSIDSで亡くなる確率が5倍から10倍以上になるとも”
“母乳中にもニコチンが溶け出すため、喫煙者の母乳を飲んだ赤ちゃんがニコチン中毒になってしまうケースも”
乳児期をすぎても、まだ悪影響が続きます。
“さまざまな気道の病気のリスクが上がります。気道感染症が悪化しやすくなることで肺炎や気管支炎になる可能性が高まり、母親の喫煙で約60%、父親の喫煙で約30%もリスクが上がるとの研究も”
“長引く咳や、気管支喘息、アトピー性皮膚炎など慢性の病気の発症要因にも……病気になった場合も、一般的な治療が効きにくく、治療抵抗性となります”
“発がんリスクは確実に上がります。有毒ガスによる血管障害も起こり、将来的に若年から動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞を起こすリスクが高くなります”
“体重当たりで有害物質をより多く取り込んでしまう子供は、その後の長い人生のなかで、こうしたさまざまな病気を発症する可能性が大人よりもずっと高くなります”
“20歳までに喫煙習慣がある場合、男性で8年、女性で10年も寿命が縮む……若年からの受動喫煙も同様の危険性があると考えてよい”
“また、忘れてはならないのが、乳幼児のタバコ誤飲……吸い殻を口にしてしまったり、タバコの火を消した缶などに入った液体を飲んでしまったりする事故があとを絶ちません……タバコの成分が溶け出した液体は、少量であってもすぐに吸収されて致死量に達してしまう危険が”
“客観的に考えればお金を払って毒物を摂取して寿命を縮めているわけですが、わかっていてもたばこをやめない、やめられない人がたくさんいます……さまざまな研究結果が出てきているとはいえ、まだまだ全容がはっきりと見えないからです。たばこを吸わずともがんになったり病気になることはありますが、だからといって喫煙をしてもいいという理由には決してなりません”
“大人がどうしてもタバコをやめないのは仕方がないことかもしれません。でも、せめて子供たちは、われわれ大人が受動喫煙から守ってあげなければならないと思います”
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