禁煙化が進んでも、家庭内の喫煙は増えません。むしろ子どもへの受動喫煙が減ります
受動喫煙について、小児科医が育児向けサイトで解説、
改正法施行などの禁煙場所増加で、はたして家庭内の喫煙が増えるものか?
また、三次喫煙についての言及や、貴重な調査結果なども述べています。
【小児科医リレーエッセイ 14】 子どもたちの健康のために「無煙の世紀」をプレゼントしよう
=『たまひよ』(Benesse)2020/08/18=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。
“外でタバコが吸えなくなると、家庭内で喫煙する人が増えて、子どもたちの受動喫煙が増えるのではないかと心配する人もいることと思います……スコットランドでは2008年に、パブ(居酒屋)の禁煙化として知られる喫煙規制法が施行されました。パブで働く従業員の健康を考えてのことです。その後、小学生の唾液中のコチニン濃度(※1)を計測してみると規制前より、規制後では減っていました……外で吸えないからといって、家庭内で吸うという現象は起きていないことがわかります”
“喫煙者家庭と非喫煙者家庭で傾向に違いがないことから、子どもたちは、家庭外でもタバコの煙を吸い込んでいることもわかりました。つまり、タバコの煙を吸わない人はいないということがわかったのです”
なるほど、すでに立証されていた、ということです。
考えてみたら、いままで家族に気をつかっていたり部屋を汚したくなかったりで外で吸っていた人が、家で吸い始めることは、あまりないでしょう。
“禁煙化を進めると家族への受動喫煙が増えるぞ”という屁理屈は、成り立たないのです。
タバコの煙は、なかなか消えない
さらに、三次喫煙の問題にも。「間接受動喫煙」と表現しています。このほうがわかりやすいかもしれませんね。
“タバコの煙の吸い込み方には……喫煙者が自分で吸い込む『直接喫煙』と、だれの煙かわかる煙を非喫煙者が受動的に吸い込む『直接受動喫煙』、だれの煙かわからない煙を吸い込む『間接受動喫煙』の3つに分けられます”
“タバコの煙はなかなか消えないのが特徴です。喫煙後の呼気中には、揮発性ガス成分が45分間にわたって検出されるそうです。間接受動喫煙は、このタバコの煙がなかなか消えないために起こると考えると理解しやすいのではないでしょうか?”
“ホテルの喫煙可能であった客室が、禁煙になったあともいつまでもタバコ臭いことを経験したことはありませんか”
受動喫煙が減った世代で、生存率が高くなった
さらに、受動喫煙の害の、2004年の研究も。これは私も知らなかったので、あまり知られていない調査だと思います。
“間接受動喫煙の害を初めて示唆したのが、イギリスの家庭医の集団を用いた2004年の報告です……1900~1909年、1910~1919年、1920~1929年に生まれた世代を、喫煙者、非喫煙者の2群に分け、それぞれの世代の70歳時点での生存率を調べた……喫煙者の生存率は……世代間で差がないのにもかかわらず、非喫煙者では76%、80%、85%と生まれた世代が後であるほど生存率が高くなっていました。
世代が後になるにつれ社会全体の喫煙率が低くなり、受動喫煙が減ったのが主な原因と考えられています”“パブを禁煙にした喫煙規制の実行年を境に、1年に5%増加していた子どものぜん息による入院患者数が、17%減少したという報告もあります。パブの禁煙化が、パブに行くことがない子どもたちにもいい健康影響を与えたのです”
“間接受動喫煙で吸い込む煙の量はとても少ないのですが、そうであってもその有害性は証明されています”
“タバコの本数を95%少なくしても、心筋梗塞のリスクは45%しか減少しないといわれています。ほんの少しだからと、吸っていいタバコは1本もないのです”
“「タバコを好きで吸っているのではない、止められないから吸っているのだ」、フリーアナウンサーの古舘伊知郎さんの言葉です。この言葉に依存性薬物としてのタバコの性質がよく言い表されています”
“イギリスやUSAでは、1000円以上しますし、自動販売機のない所も多いです”
この院長さんは30年ほど喫煙していたとのことで、依存の恐ろしさも実感されているようですね。
千葉県の活動団体「スモークフリーキッズ」主催ポスター展より(既出)
「タバコ」の表記は
ところで冒頭に、「タバコ」表記について述べているところが興味深いです。
当機構も、禁煙運動全般でも、「タバコ」はカタカナで書くのが基本となっています。理由はこの記事に記されている通りですが、当サイトの以前のまとめもお読みください。
→「タバコ」「たばこ」「煙草」「莨」…どれが正しい? 使い分けは? ’18年9月
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