職場のタバコ臭被害=喫煙者からの三次喫煙被害に、管理者はどう対応すべきか 弁護士見解

 職場のタバコサボリ問題、とくに戻ってきた喫煙者からのタバコ臭=三次喫煙がよくネット記事で取り上げられていますが(→当サイトでも多く紹介、主なものを末尾にを記載)、タバコ問題も多く取り上げている法律サイトで、最近とくに注目を集めたという経営者のSNS投稿をもとにした、禁煙運動の弁護士への取材記事がありました。

 「タバコを吸ってきた人のにおいでイライラする」非喫煙者の従業員からうったえ、経営者はどうすればいい?
  =『弁護士ドットコムNEWS』2024年04月22日 10時19分=

 以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

“「タバコを吸う人と一緒に仕事をしたくない」
そんな投稿がXで最近、注目を集めました。投稿した男性は、10人ほどが働く経営者なのですが、複数の女性従業員から、喫煙ルームから帰ってくる従業員の「タバコのにおい」が気になるとうったえられた……「タバコのにおいのせいでイライラが止まらず、会社を辞めようとおもったこともある」と言われたとのことで、男性は経営者としてどう対策をしたらよいか悩んでいるという”

“健康増進法が改正され……2020年4月からはオフィスなどの屋内では原則禁煙……男性の職場でも、きちんと喫煙所は別に設けている”

 ちなみに、その投稿とは以下。

 「もふもふライオン@mofumofu_LION」午後8:04 · 2024年3月8日

 記事引用に戻ります。

“日本医師会のサイトでは、「服や髪の毛、カーテン、家具、壁などからタバコ臭を感じた時には、有害物質を体内に吸い込み、受動喫煙の被害にあっているのです」……タバコを消したあとに残留するニコチンや化学物質を吸い込むことは「三次喫煙」(サードハンド・スモーク)と呼ばれ、しばしば問題視されています……どのような対策が望ましいのでしょうか。受動喫煙の問題に詳しい岡本光樹弁護士に聞きました”

●会社には敷地内を「禁煙」にできる権限がある
——そもそも、経営者が……就業時間中あるいは休憩時間中の禁煙を命じることができるのでしょうか?

はい、企業の敷地内全面禁煙を命じること(「場所」の禁煙)も、就業時間中の喫煙禁止を命じること(「時間」の禁煙)も可能です。

これは、企業秩序定立権限(企業内の秩序を設定する権限)の一環としての施設管理権、並びに、労務指揮権および業務命令権に基づくものです。

従業員は、誠実労働義務(使用者の指揮に従って労働を誠実に遂行する義務)及び職務専念義務(労働時間中は職務に専念し他の私的活動を差し控える義務)に基づいて、それに従う義務があります”

 「誠実労働義務」という語は初めて聞きました。考えてみれば当たり前ですが。

 続いて「休憩」の利用の仕方について。

“——では、「休憩時間」に会社の敷地外で喫煙する自由は認められていますか。

「休憩時間」における敷地外の喫煙については、実は議論があります。

労働基準法上の「休憩時間」については、「自由利用の原則」が定められています……(この「休憩時間」は……就業時間中にタバコ休憩などと称して離席している場合は含みません)

そのため、「休憩時間」に企業敷地外で喫煙することは禁止できないといった弁護士の見解も見られます。

この点、私は、一律に禁止できないわけではなく、個別具体的な状況や必要性・合理性に鑑みて、禁止できる場合もあると考えています……喫煙後も呼気(息)から有害な成分が出続け、他者に迷惑や苦痛を及ぼすことを考えれば、休憩時間中に他の従業員の休息を妨げてはならないこと、また、休憩後の勤務時間に他の職員がその注意力を職務に集中することを妨げるおそれがあること、他の職員の作業能率を低下させるおそれがあること等を理由に、休憩時間中の喫煙についても禁止することが可能と考えられます(最高裁昭和52年12月13日判決参照)”

 例にあげられている、“休憩時間は何をしても自由だから、喫煙を禁止できない”と言っている弁護士は、受動喫煙の問題を“喫煙の自由”問題と、勘違い・すり替えをしています。

 集合住宅の他の住民からの被害で、管理者に苦情を言っても「室内の喫煙は自由」とくだらないことを言うよくある例と同じで、客観性・論理性がないのです。

 今回のテーマは勤務中のタバコサボリの時間のことではなく、三次喫煙の被害なのですから、休憩時間中であろうと、その後に他者に迷惑をかけることをしてはいけない、という問題です。
 たいていの接客業や集団の業務で、休憩時間にニンニクを大量に食べたり悪臭を身に付けてきたりするような行為は、禁止か少なくともヒンシュクのはずです。

“——喫煙ルームを設けても、今回のケースのように従業員から「くさい」などのクレームがでた場合、経営者には、より踏み込んだ措置をとる「義務」は生じますか。

先ほど述べた理由から、経営者は、敷地内全面禁煙を命じることも、就業時間中の禁煙を命じることも可能で、ご相談のケースでは状況によっては「休憩時間」も喫煙禁止を命じることができると考えます。
……
健康増進法に基づいた施設の禁煙・分煙措置を講じることは経営者の最低限の義務(行政罰あり)ですが、それ以上に、今回のケースのようないわゆる「サードハンド・スモーク」に、どこまでの対応をすべき義務があるかは、個別具体的な事案の状況に応じて「安全配慮義務」(民事責任)が判断されます。
……職員が、受動喫煙によって咽頭炎・頭痛等を患ったと訴えた裁判で2004年、江戸川区に賠償を命じる判決が下されています。
……
苦痛をうったえている従業員の苦痛の程度や話し合いの経緯なども、斟酌(しんしゃく)することになるでしょう”

“——では、今回のようなケースでは、どう対応すべきでしょうか。

何も対応せずに放置というのは、「安全配慮義務」違反のおそれがありますし、経営者として妥当とは到底言えません。対策を講じるべきですが、具体的な対策として何が望ましいか、どうすべきかについては、各企業の置かれた個別の状況を踏まえる必要があります……喫煙者の従業員たちと丁寧に話し合い、喫煙者の間でルール策定をしてもらい、それを経営者が業務命令あるいは「服務規律」(必要に応じて「就業規則」に入れることも)にしていくのがよいのではないかと考えます。
……
経営者としては、方向性として将来的には、敷地内全面禁煙・就業時間中禁煙、さらには休憩時間中の禁煙もあり得ることを示しつつ、過渡的・漸進的な当面の対策を喫煙者間(可能なら非喫煙者も一緒に)で話し合って決めてもらうのがよいのではないかと考えます。

この投稿には多くのコメントが寄せられており、既に様々な提案がされ、それに対する課題も見られます……喫煙者の理解を得ながら会社のルールとして定着させていくのが良いであろうと考えます。また、対策の結果を検証し、改善が不十分であればさらに対策を引き上げる・追加するなどして、改善強化を進めていくと良いと思います。

 


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