喫煙者が与える損害は、受動喫煙・三次喫煙に加え、さらに…! ~ 実例をあげた論説

 良い論説だと思います。

 タバコが嫌いなのは、普通の人ならだれでもそうですが、しかしとくに“心底、タバコ憎し”である“嫌煙”(この語も過去のものにしたいのですが……)の人には、よく、
 「喫煙者は、ヤバイやつ」
 「喫煙者は(吸っていないときでも)存在自体が迷惑だ」
 といったことを、公言したりコメント投稿したりする人がいます。
 気持ちはごもっとも、たしかにそういう面もあるのですが、しかし受動喫煙問題をさほど意識していない人がそんな強い発言を聞くと、“極端”な“決めつけ”と思われかねず、“嫌煙者はヒステリー”とか“嫌煙モンスター”なんて言う人も出てきて、その対立が、受動喫煙撲滅の活動のさまたげになることもあります。

 しかしこの論説は、喫煙者は受動喫煙・三次喫煙に加え、依存症の喫煙者の存在が受動喫煙以外でも迷惑になる場合がありうる事実を、感情論ではなく、実例をあげて客観的・論理的に説明しています。

 論者の窪田順生(くぼた まさき)氏は、さいきん受動喫煙に関して良い論説を書かれているかたです(以前の当サイト紹介記事2つを末尾にリンク)。なお論説に例としてあげられている事件・事例の報道は当サイトでも紹介していますので、それも末尾に列挙しました。

 喫煙後45分は「職場出禁」の有名企業も、たばこ臭さが会社に与える大損失
  =『DIAMONDO online(ダイヤモンド・オンライン)』窪田順生:ノンフィクションライター 2023.2.9 4:25=

 以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

“「一服がガマンできないヘビースモーカー」のトラブルが続発しており、企業にとっても頭の痛い問題になっている”

“ まず多いのは、「喫煙ルール破り」……走行中の京葉線快速の乗務員室の中で車掌が電子たばこを吸っていた……同様のことを複数回していた”

“「湯滝の宿 西屋」で、館内完全禁煙というルールを守らずに部屋で喫煙して吸い殻まで残した宿泊客が……女将がSNSで投稿をしたところ、宿泊業やレンタカー業者が反応して、同様の被害を報告……禁断症状から「迷惑行為」をしてしまう人もかなりいるのだ”

“加えて今、注目を集めているのが「長すぎるたばこ休憩」……宮崎県高原町では、勤務時間中に16回にわたって外出して「一服」していたとして40代の男性職員を懲戒処分にした。毎回15分くらい費やしていたということから、4時間近くサボっていたのだ”

“「一服がガマンできないヘビースモーカー」がもたらす企業リスクはそれだけではない……大和浩教授は、ヘビースモーカーがもたらす企業リスクについて、このように話した。

「それはビジネス機会の損失……吐く息や、衣類から発するたばこのニオイや化学物資(残留たばこ成分)によって、取引先顧客不快になったり健康被害を引き起こしたりして、商談がうまくいかなくなって最悪、取引が終了してしまうというリスクです」”

“内閣府が、18歳以上の8割を超える人がたばこの煙を不快に感じているという調査を公表”

“かねてからビジネスの世界では、「たばこ臭い息でモノが売れない」「たばこ臭い職場には人材が集まらない」という問題が指摘されていた

“ 健康支援サービスを提供するティーぺックが17年におこなった「喫煙に関する意識調査」……商品を購入またはサービスを受ける際に、提供者からたばこのニオイなどを感じたかと質問したところ、約6割の889人が「感じた」と回答……その中の55.9%が「購買意欲が下がった」”

“商談やプレゼンで、先方が熱弁を振るっているのだが、その息がたばこ臭くて内容がほとんど頭に入らないというケースもよくある。たばこのニオイをかぐと気分が悪くなるなんて人からすれば、一刻も早くこの場から逃げ出したいので、商談どころではないのだ”

“昨年9月に調査……求人に掲載されている就業場所が「敷地内全面禁煙」だと8割超が「応募する」と回答……「喫煙可」にすると「応募する」と回答した人が半数以下に……非喫煙者の場合、3割程度しかいなかった。つまり、「働きたいけれどたばこ臭い職場だけは嫌だ」という人がかなりいるということだ”

 さてここまであげた現代の実例に対し、予想される喫煙者・喫煙を容認する側から出そうな屁理屈を、一蹴します。

たばこの臭いは「人それぞれ」では済まされないワケ

 こんな話を聞くと、「愛煙家」の皆さんは「差別だ」「日本社会の不寛容はここまできたか」なんて……憤りを覚える人もいるかもしれない……ただ、前出の大和教授はこの問題はそのような次元の話ではないと強調する。

「喫煙者の吐いた息を、口が臭いという問題と混同してはいけない最大の理由は、たばこ臭には発がん性物質を含む有害な化学物質が含まれているから……企業がまず対策しなくてはいけないのは、お客さんや取引先の社員に、アレルギー症状や気管支喘息の発作を誘発するリスクです」(大和教授)”

“ 例えば、ヘビースモーカーの営業マン……得意先企業から担当者を替えてほしいと言うクレームが……打ち合わせなどで対応をしている社員が、営業マンの吐く息で体調を崩して休職をすることになったという。病院でいろいろ検査をしたところ、「化学物質過敏症」と診断された。

 実はこの社員、芳香剤や塗料などの化学物質にさらされると、頭痛や吐き気、目や皮膚のかゆみ、喉の痛みなどの症状が出る……営業マンの吐くたばこ臭い息でもアレルギー症状が出てしまったというのだ。得意先企業からのクレームに、上司は平謝りするしかなかった――。

 これはフィクションだが、大和教授によれば似たようなトラブルは既に現実に起きているという。

「私の知っている女性も、喫煙可のオフィスで事務員をして、勤務中ずっとたばこの煙を吸わされているうちに、化学物質過敏症になってしまい退職に追い込まれて今も苦しんでいます。職場の煙やたばこ臭に耐えられない人は退職せざるを得ないので、社会的な注目が集まりにくいのですが、実はそういう人は一定の割合で存在……安心して働くことができるように、企業側も防止に取り組むべきでしょう」(大和教授)”

 「愛煙家」とカギカッコにしているのが皮肉としていいですね。

 では、企業としては具体的にどんな対策をすべきなのか。

企業ができることは?有害物質を「出禁」にさせる

……最も効果があるのはヘビースモーカー社員に対して、……たばこを止めてもらうこと……しかし、日本は「たばこ事業法」という法律があって、国家として「たばこ産業の健全な育成」を後押し……「防衛費の財源にもするので、もっとじゃんじゃん吸ってください」というスタンスなのに、……「……禁煙しろ」と呼びかけられて素直に聞き入れるわけがない……ヘビースモーカー側からすれば、会社や上司から禁煙を勧められるというのは、パワハラを受けるのと同じくらい理不尽な仕打ちなのだ”

“そうなると現時点で、企業ができることは……「喫煙後に……有害物質を持ち込ませない」というものだ。

「……喫煙前の口臭に戻るまで約45分かかることが判明しています……ガス状物質なので、含嗽剤(がんそうざい……うがい薬)やマスクでは根本的な対策にはなりません。つまり、喫煙をしたら最低でも45分間は、妊婦や喘息、アレルギー体質の人との接触をさせないことが必要なのです」(大和教授)

……既にいくつかの企業では、たばこ臭い息に対するリスク対策として導入している”

“野村ホールディングスは21年10月から、就業時間中は全面禁煙を実施しているが、そこで受動喫煙対策として、昼休みなどに喫煙した場合、喫煙後45分間はオフィスに戻らないことを強く推奨をしている。イオングループでも、出勤前や昼休憩後、職場に入る45分前の喫煙をしないように求めている”

 そして、ここからがこれまでの他の論説にはほとんどなかったと思える考察です。上記の対策で受動喫煙・三次喫煙が解決したとしても、また別の大きな問題があることを記者は指摘します。

 喫煙者の“ヤバイ精神状態”問題への言及です。

“このような記事を読んだヘビースモーカー社員の皆さんは、きっとかなりイライラしていることだろう……オフィスでは吸えないのでさらにイライラカリカリしてしまうだろう。
 そんな時……「使えない部下」がミスをしたら……かなり厳しく当たってしまうのではないか……「消えろ」「生きている価値がない」などひどい罵詈雑言を浴びせてしまうかもしれない。

 実は筆者が考えている「ヘビースモーカー社員がもたらすリスク」の中でも最も深刻なことがこれだ

“「たばこを吸うとスッキリする」というのは気のせいだ。喫煙者はニコチン依存症という状態なので、血中のニコチンが減るとイライラして禁断症状になる”

“つまり、「……ヘビースモーカーは常にイライラしている」ということだ。もしそのような人が管理職にいれば当然、パワハラなどさまざまなトラブルが起きる……自社のオフィスならばまだなんとか闇に葬り去ることもできるかもしれないが、飲食店や宿泊先、路上など公の場で、社外の人間に対して暴言を吐くなどのトラブルを起こしたら、会社にとっても大きなリスク”

“ 昨年、ある地方議員が、甲子園の観客席で加熱式たばこを吸って問題に……注意をされても「はいはい」と言いながら吸い続けていた、というのでかなりのヘビースモーカーだ……しばらくしたら今度はタクシーでトラブル……暴言を吐いて、助手席を蹴るなどしたという。世間から叩かれていた最中にこんな暴挙に出てしまうということは……自分が抑えられなかったのかもしれない”

“喫煙者は「ニコチン依存症」という心や行動に影響を与える「疾患」であることも事実だ”

“ 喫煙社員が多い、特に管理職や経営者がヘビースモーカーだという会社は、この現実と向き合って、喫煙トラブルのリスクと真剣に向き合わなくてはいけない時代が来ているのではないか”


三次喫煙のようす、大和浩教授の娘さん作(『STOP受動喫煙 新聞』41号掲載)

 ☆なお、この記事を引用しさらに大和教授の解説を大幅に追加した論説を『STOP受動喫煙 新聞』42号43号で掲載しています。(43号は’23年7月発行)
 
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓で引いてみてください。
 加熱式タバコの「大誤解」を暴く 周囲への受動喫煙、健康被害は紙巻タバコ同様に  ’22年10月

 「日本が問われる人権意識」子どもへの受動喫煙は「虐待」、法制化は近い ’22年12月

 また電車内で、車掌が喫煙 ~ JR東日本 ’23年1月

 禁煙旅館で違反した客が、逆恨みの投稿を…! ’23年1月

 また役所の職員が仕事サボリ喫煙を繰り返し ~ 宮崎 ’23年2月

 まだある“タバコ休憩”・仕事サボリは許せない! なぜ許されているの? ’22年11月

 職場の受動喫煙撲滅はどう進めるか~大和浩教授が解説 自宅での他家への受動喫煙も言及 ’22年12月

 内閣府が再調査、タバコ臭は「不快」増加・「喫煙所を減らせ」多数 ’22年11月

 三次喫煙(サードハンドスモーク=残留受動喫煙)を漫画でわかりやすく解説! ’19年6月

 “完全禁煙”=「敷地内」全面禁煙(喫煙場所なし)の職場で働きたい人がほとんどです ’22年11月

 タバコと化学物質過敏症 ’19年2月

 加熱式タバコ・三次喫煙で職を追われた ’21年3月

 〈続報〉イオンの就業中・就業前45分からの喫煙禁止 ~ “人権侵害” 論を弁護士が否定 ’21年2月

 「在宅勤務中も禁煙」法的には? 弁護士が解説 ’21年9月

 職場の受動喫煙は「ハラスメント」 禁煙治療の名医が解説 ’22年8月

 甲子園で違反喫煙をした議員へ、辞職を求める ~ 『無煙ニュース』土森氏 ’22年9月

 「嫌煙」という語は、もうなくしましょう ~ 新聞論説より ’21年6月

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