職場の受動喫煙は「ハラスメント」 禁煙治療の名医が解説

 禁煙運動でも長年ご活躍され、「石原軍団」の卒煙治療などでマスコミでもときどき紹介された医師へのインタビュー記事がありました。

 職場(事務所)の禁煙化が法制化されたにもかかわらず、まだ受動喫煙がある現状と、対策を述べられています。

 職場の喫煙対策を考える ~都医師会対策委の村松弘康アドバイザーに聞く~
  =『時事メディカル』「Dr.純子のメディカルサロン」2022/08/22 05:00=

 以下抜粋、太字化は引用者によります。

“ 海原 都内では道路上で歩きながらのたばこポイ捨てなどは見なくなりました。室内での禁煙も以前よりかなり徹底している感じがありますが、時には飲食店内でたばこの煙が充満していて驚くようなこともあります。最近の喫煙率について先生はどのようにお考えでしょうか。

 村松 ここ2年間は新型コロナウイルスの影響で調査実施が中止されていますが、2019年の「国民健康・栄養調査」の結果では、現在の日本人喫煙率16.7%であり、男性27.1%女性7.6%でした。30代男性は33.2%、40代男性は36.5%であり、昭和の時代と比較するとかなり低下してきたとはいえ、男性の3~4割が喫煙している状況です。

“ 海原 まだ、たばこの害を否定している人もいます。たばこ関連会社からの資金で行われた研究報告がたばこの害を少なく報告しているような指摘もなされています。若い世代では喫煙する人は少なくなっていますが、高齢の世代ではたばこはストレス解消に役立ち、これがなければストレスを乗り切れないなどと言う人もいます。いまだに喫煙所を設けている企業もありますし、喫煙の場でコミュニケーションが図れるなどと言う企業関係者もいて驚きます。人の考えを変えるのは難しいのですが、いい方法などありましたらお教えください。

 村松 喫煙する理由、禁煙できない理由は人によってさまざまですので、一律に良い方法を示すのは難しいですね。一方、習慣的喫煙行為の本質は依存症であることが明らかとなっており、我慢だけの禁煙というものはなかなか成功しません。成功しないので吸ってもよい理由、禁煙しなくてよい理由(言い訳)を探してしまうのです。ぜひ禁煙外来を受診して禁煙補助薬を使い、適切なアドバイスを受けながらチャレンジしてみてください。

 また、ご指摘のように喫煙室・喫煙所を提供してしまう会社側や行政側にも責任がありますね。ニコチン依存症という状態は、体内にニコチンがある状態で体中がバランスを取ってしまった状態であり、ニコチンが切れてくるとバランスが崩れていらいらしてしまい、集中力を欠き仕事に専念できなくなってしまいます。そのため、これまではやむを得ず喫煙室が提供されてきたわけですが、どんなに換気をしたところで喫煙室内には煙が充満し、本来吸わずに済むはずの副流煙も大量に吸うことになります。さらに扉が開閉するたびに外部にも煙が漏れて、受動喫煙も生じます。喫煙や受動喫煙の害が科学的に明らかとなった現在、喫煙室を残すのが本当に良いことかどうかを会社側・行政側も再検討すべきでしょう。

“ 海原 職場で上司がたばこを吸う場合、部下は我慢するという悩みを聞くことがあります……企業トップが喫煙者の場合非常に難しいのですが、何かいい方法はありますでしょうか。

 村松 20年4月1日に改正健康増進法が全面施行され、「望まない受動喫煙をなくす」ことが法律で定められました。以前とは異なり、受動喫煙防止に法的根拠ができたわけです。また、最近では企業に「健康経営」が求められていますが、健康経営優良法人の認定には「受動喫煙対策」が必須項目となっています。そのため、職場での受動喫煙は「スモークハラスメント」であるとして損害賠償請求を認める判例多数出てきています。職場で受動喫煙があったら、まずは会社側に改善請求をしていただき、こじれるようなら労働基準監督署や弁護士への相談もご検討ください。

 海原 ハラスメントだ、と思っても部下の立場では、なかなか言い出しにくいものですね。時には上司が部下に、「たばこ吸ってもいいか」と声を掛けて吸うようなこともあると聞きます。そう言われると部下はノーと言うのが困難です。法律はできてもその運用は難しいので、ここは経営のトップの立場の方が積極的に介入して職場の環境改善をする必要がありますね。トップの意識試される時期で今後企業がグローバルな基準で展開する際の基準にもなりそうです。

 最初に“職場(事務所)は禁煙”と書きましたが、インタビュアーが冒頭に述べているように、飲食店では従業員の受動喫煙の撲滅は進んでいません。東京都と千葉市だけは“従業員を雇っていれば禁煙”と条例で決まりましたが、タバコ販売をしていることにするなどでの「喫煙目的店」という抜け道もあるうえ、従業員を雇っているふつうの店でも、違反となる喫煙営業は多数残っています。

 ましてや東京都と千葉市以外の全国では、改正健康増進法が施行されても禁煙店より喫煙店のほうが多くあるわけで、数多くの従業員が苦しんで、病気になったり早死にしたりしています。

 そして、ひどいことに、オフィスでも違反喫煙はまだまだあるのです。
 この記事の後半に当機構に届いた声を記載→建設会社も勤務中「完全禁煙」、約100事業所の喫煙所を撤去 = 清水建設

 行政や自治体がもっと動くべきですが、まずは我々も気づいたら通報するなど、行動を起こすべきでしょう。

 
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓で引いてみてください。
 “スモハラ”=「スモーク・ハラスメント」、知っていますか? ’18年10月

 職場の“分煙” 喫煙者3割近くが「不十分」 ’22年3月

 職場受動喫煙で和解勝利! 「労働審判」440万円支払い確定 ’18年7月

 職場での受動喫煙 その3 「社内行事での受動喫煙」 ’18年8月

 職場の受動喫煙は「安全配慮義務違反」、損害賠償の可能性あり ’18年12月

 受動喫煙症の相談と回答 ④ 「家でも症状が出るが、職場の受動喫煙のせいか」「『受動喫煙症』受診に意味はあるか?」=診察料と時間は? ’19年5月

「受動喫煙にお困りなら」=日本禁煙学会が対策ページを公開=内容証明の見本も ’19年11月

 接客業でタバコ臭は損失なだけ ~ 客への「三次喫煙」撲滅へ、企業が取り組み ’21年3月

〈続報〉イオンの就業中・就業前45分からの喫煙禁止 ~ “人権侵害” 論を弁護士が否定 ’21年2月

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