加熱式タバコの「大誤解」を暴く 周囲への受動喫煙、健康被害は紙巻タバコ同様に 

 加熱式タバコの、間違って広まっている(あるいは意図して広められている)“安全”“紙巻タバコよりマシ”といった誤情報について、うまく解説した記事が出ました。

 加熱式たばこを巡って“炎上”続出、「水蒸気だから迷惑かけない」の大誤解
  =『DIAMONDO online(ダイヤモンド・オンライン)』窪田順生:ノンフィクションライター 2022.10.13 4:30=

  以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

“甲子園で熊本県議が試合を観戦中、缶チューハイを飲みながら加熱式たばこをスパスパ……「気づいたら吸っていた」と釈明をしたが、近くにいた生徒が、気分が悪くなって学校関係者が注意をしたが、応じなかった……批判がやまず結局、自民党を離党する”

“電車内で、加熱式たばこを吸っていた男性に対して、ぜんそくの持病がある高校生が「やめてもらえますか」と注意をしたところ、殴る蹴るの暴行を受けるというトラブルが大きな話題となった”

“名古屋鉄道の車掌が走行中の列車で加熱式たばこを吸っていたことが発覚。「……加熱式なら煙やにおいが残らないと思った」……車掌は処分された”

“ なぜこんなにも「加熱式たばこ」関連のトラブルが多発しているのか”

 これらの事件については、当サイトでもあげています(→末尾に関連リンクを記載)

“喫煙者の多くが、加熱式たばこは紙巻きたばこよりも体に悪くないので、屋内などで吸ってもそんなに問題にならないと考えている部分がある。筆者の友人のIQOS(アイコス)ユーザーも、「加熱式たばこは水蒸気しか出ないから受動喫煙とか大丈夫だよ」なんて言って幼い子どもの横でスパスパやっていた”

“「……紙巻きたばこよりも安全」説を補強するのが「規制」の緩さだ……「日本経済新聞」の「家計の法律クリニック」にもこんな相談が……<同僚と居酒屋へ行ったところ、周囲の客が皆、「たばこ型の機器」を吸っていました……規制対象ではないのですか>”(→これも末尾に関連リンクを記載)

“これは改正健康増進法で、店内と喫煙スペースの面積の比率は定められていないことと、加熱式たばこだけ「喫煙室での飲食」が認められているからだという。つまり、「店舗の大半を『喫煙室』とし、ごくごく一部に非喫煙スペースを設置することも可能」(同紙)という法律の抜け穴をついたのだ。釈然としない話ではあるが、こうすれば屋内で加熱式たばこを吸うのは「合法」なのだ”

“なぜ加熱式たばこが、ここまで露骨に「優遇」をされているのか……国立がん研究センター……片野田耕太部長はこう述べる。
「たばこ産業と関連団体の強力なロビイングと、たばこ族議員と呼ばれる人たちの影響力によって、特例扱いにせざるを得なかったということが大きいのでは……この法律がつくられた当時、加熱式たばこの健康リスクに関するエビデンスがまだしっかりとそろっていなかったということもあります」”

“ では、現在はどうか。
片野田氏はエビデンスが増えてきたとして、「水蒸気だから体に悪くない」という説を明確に否定……「……たばこの葉を焼いていたのを……機械で蒸しているだけなので、ニコチンも有害物質も確実に出ています……最近の研究では、紙巻きたばこ同様に、受動喫煙の害があることまでわかってきています」”

“紙巻きたばこを使用している父親の家族が尿中ニコチン代謝物の濃度が一番高いことは言うまでもないが(これ自体も大問題である)、加熱式たばこを使用している父親の家族もかなり数値が高かった”

“ つまり、「水蒸気だから体に悪くない」というのは科学的根拠のない話であって、周囲の人々は紙巻きたばこ同様、ニコチンを吸い込んでいるというわけだ”

“ニコチン濃度は製品によって異なる。
「それは各社のマーケティング戦略が関係していると思われます」”

“「実は紙巻きたばこの有害物質は異常に高い数値なので、それが大幅に減っても日常生活でありえないレベルの有害物質が含まれていることは変わりありません。例えば、居酒屋で加熱式たばこを吸うということは、店内にいる全員で発がん物質を“共有”しているようものなのです」(片野田氏)”

 さらに、人間の、自分に都合の良いように考える心理が問題に。

“身近にあふれかえっているものを「大丈夫だろ」とリスクを過小評価してしまう、人間特有の心理が働いているからだと、片野田氏は説明する。
「例えば、化粧品、食品、あるいは幼児が使うような玩具から発がん物質がわずかでも検出されたら即回収ですよね。また、もし空気清浄機や加湿器の吹き出し口から出る空気から発がん物質が検出されたらこれも当然、回収や返品されてしまいますよね。しかし、喫煙者の口から発がん物質が出ていることが検出されても“それは仕方がない”となってしまう。なぜか、日本ではたばこだけ特別扱いなんですよ」”

来年は健康増進法の見直しがある。
 片野田氏は加熱式たばこも現在のような「特例措置」から、紙巻きたばこ同様の扱いにすべきだと考えている

“「たばこの害についてお話をすると喫煙者のみなさんから“そんなに体に悪いものなら売らなきゃいいだろ”という意見をいただきますが、これは結構、正論だと思っています……日本にはたばこ事業法という法律があって、財務省が産業保護をして、税を徴収する嗜好品という位置付けです。そのような極めて社会的なものなので、頭ごなしに体に悪いからやめなさいと言われて、納得できない人たちの心情は理解できます」(片野田氏)”

“「禁煙治療の現場で医療者の方からよく聞くのは“禁煙という言葉を使いたくない”という感想です。喫煙者に対して“禁煙”という言葉を発した時点で、わかりやすいくらいに喫煙者の気持ちが引いていくそう……“禁煙”というのは苦痛以外の何ものでもないので、生理的に受け付けない。そういう言葉を用いずに、もっと自然な形で、努力をしないで気がついたらニコチン依存から抜け出すことができた、というくらいの“いやし系”の方法があるといいなと思います」(片野田氏)”

“ いくら健康被害のエビデンスが積み上がろうとも、「たばこ事業法」が存在する限り、日本のたばこは「グレー」のままだ。そのダブルスタンダードをさらに複雑にしているのが、「煙が出ない」「有害物質が少ない」をうたう、加熱式たばこと言ってもいいかもしれない”


 
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓で引いてみてください。
 甲子園で違反喫煙をした議員へ、辞職を求める ~ 『無煙ニュース』土森氏 ’22年9月

 電車内・優先席で寝そべり喫煙! 注意の高校生に暴行、重傷を負わせ逃走、逮捕 = 刑罰・損害賠償はどうなるか、弁護士見解 ’22年1月

 走行中の特急列車でタバコを吸っていた乗務員(車掌)、通報される…“常習犯”だった・・・「加熱式タバコだから」「バレなきゃいい」 ’21年9月

 法の抜け道を悪用して「加熱式タバコ可」とする店で被害が続発 ’22年10月

 「加熱式タバコからの受動喫煙」1割の人が被害に 世界初の調査結果を東北大学が発表 ’22年4月

 加熱式タバコの路上喫煙に不快の声、しかし自治体によって規制が違う? ’21年12月

 研究者による新刊と対談=『本当のたばこの話をしよう~毒なのか薬なのか』(著・片野田耕太氏) ’19年6月

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