法の抜け道を悪用して「加熱式タバコ可」とする店で被害が続発
禁煙店と思ったら、加熱式タバコなら吸えるという、デタラメな店があります。なぜでしょうか。
以下の記事は、冒頭の一般の人の疑問へ、弁護士が回答する形式になっています。
加熱式たばこのルール、禁煙場所でトラブルも
=『日本經濟新聞』2022年9月22日 5:00=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。※『日経』ネット記事は、無料登録で全文読めます。
居酒屋へ行ったところ、周囲の客が皆、「たばこ型の機器」を吸っていました。煙は出ないのですが、独特の臭いで気分が悪くなり、間もなく店を出ました。法律でたばこは喫煙室でしか吸えなくなったと思っていたのですが、最近見かけるこうした製品は規制対象ではないのですか。
“「新型たばこ」のことではないかと思います。……「加熱式たばこ」と「電子たばこ」があり、両者は異なるもの”
“加熱式たばこはタバコの葉を加工したものに加熱するための電子機器を使って霧状の粒子を発生させ、その中に含まれるニコチンを吸う製品です。通常の紙巻きたばこと見た目は異なりますが、成分は紙巻きたばこと同じ「タバコの葉」なので、たばこ事業法でも「たばこ製品」に分類されます”
“電子たばこは、タバコ葉を使用せず、液体(リキッド)を電気加熱……国内の電子たばこにはタバコ葉が含まれていないので「たばこ製品」としては販売されていない……相談者が遭遇したのが加熱式たばこか、電子たばこかは分かりませんが、本稿は主に加熱式たばこという前提で話をします”
“2020年4月から改正健康増進法が全面施行……全面禁煙が原則ではあるものの、(1)喫煙専用室を設けた場合(2)加熱式たばこ喫煙室を設けた場合(3)既存かつ経営規模が小さい店舗が一定の要件を充足した場合は例外として喫煙が認められることになりました。さらに、(4)葉巻やたばこを楽しむことを主目的とする「シガーバー」などを念頭に置いた「喫煙目的店」も全面禁煙の例外と定められています”
“しかしこれがやや脱法的に用いられ、外見は普通の飲食店ながら、法の扱いは「……たばこを販売し、施設の屋内の場所において喫煙をする場所を提供することを主たる目的」とする店舗として店内で全面喫煙させている例も”
“どういうわけか、通常の紙巻きたばこと加熱式たばこの取り扱いに差が設けられ……加熱式たばこの場合、紙巻きたばこでは認められていない喫煙室内での飲食が認められているのです”
※電子タバコの説明について補足します。正確には、「日本ではニコチン入り詰め替え液が一般販売されていないので、法的にはタバコ製品ではないとされている。しかし、ニコチンの入った詰め替え液は個人輸入で合法的に入手できるので、その利用時には、呼気や吸引漏れなどでの周囲へのニコチンなど有害な受動喫煙もありうる」ということです。(『STOP受動喫煙 新聞』関連記事参照)
加熱式タバコは、専用の喫煙席を設けていれば、そこでは飲食しながら吸えるようになっているのです。
しかもその面積の規定がいい加減で……。
“喫煙室は健康増進法施設等の屋内の場所の「一部」の場所に設置することができるが「全部」の場所に設置することはできない……喫煙室と非喫煙スペースとの面積割合については何も定められていません……つまり、店舗の大半を「喫煙室」とし、ごくごく一部に非喫煙スペースを設置することも可能というわけです。店舗内のほぼ全域で加熱式たばこが吸え、そこでビールを飲んだり食事を取ったりできるので、利用客から見た店のルールは「店内すべてで喫煙可」となるのではないでしょうか。改正付則には抵触していると思われますが、実際、繁華街を歩くと複数の居酒屋が「全席で加熱式たばこが吸えます」と表示しています”
“相談者は気づかずに入店したのだと思いますが、このような飲食店は店のほぼ全体が「喫煙室」だという認識が必要です”
困った法律です。さらに解説が続きます。
“加熱式たばこについて喫煙室内での飲食を認める扱いは「経過措置」とのことです。そのような経過措置がどうして必要なのか、個人的には大いに疑問を持っています”
“電車内や球場での無軌道な加熱式たばこ喫煙に起因して発生した事件やトラブルが報じられています。紙巻きたばこと扱いを区別しているため、喫煙者の側に「加熱式たばこならどこで吸ってもよい」という誤った意識が広がっているのではないか”
“ちなみに健康増進法の改正案には、電子たばこは含まれないため、法律上はどこで吸っても違法ではありません(いずれ法規制が必要だと思います)。しかし、非喫煙者の多くは加熱式たばこと電子たばこの違いは分からないでしょう”
“改正健康増進法の施行から2年以上経過しましたが、前述したような「抜け穴」的な「喫煙目的店」が増えているばかりか、要件をまったく充足していないと思われるのに「喫煙可能店」を表示して営業している飲食店、あるいは何も表示せず実際には店内での喫煙を許容している飲食店なども見受けられる”
“「なくそう! 望まない受動喫煙。」を旗印に改正されたはずの健康増進法が絵に描いた餅にならないよう、違反者への取り締まりを徹底してもらいたいと思います”
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