子どもの受動喫煙は特に問題=被害が大きくなりやすい
【本記事は、受動喫煙撲滅機構の関係団体による寄稿です】
子どもを守る、受動喫煙対策
以前にも本サイト・ニュースでお伝えしましたが(5月11日 5月15日)、東京都では「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」が2018年4月1日から施行されました。
この条例は、東京と、広島県福山市で制定されたのみで、内容もまだまだ受動喫煙を撲滅するのに足る規制ではありませんが、大きく評価すべき点もあります。
それはもちろん、家庭内・子どもに焦点を当てている点です。
子どもは受動喫煙の被害者になりやすい!
子どもは、とかく受動喫煙の被害者になりやすい存在です。
物心つく前であれば、全く認識しないままに被害者となり、
少し成長した後であっても、生まれたときから家族が喫煙していれば、それが普通であると考え、受け止めてしまいます。
将来起こるであろう健康被害を予測することもなく、受動喫煙の被害を受けつづけます。
また、その子がいずれ喫煙者になる確率も、早いうちから喫煙を開始するのも、親が喫煙者である場合が多いようです。
子どもの受動喫煙被害は長期化しやすい!
小さい子は、将来自分に起こるであろう健康被害を認識できず、回避行動を起こしません(起こせません)。
また、一家の主や年長者が喫煙者であるパターンが多く、たとえ子どもの健康を案じた家族が受動喫煙をなくしてほしいとの要望を持っても、伝えにくい、聞いてもらえない、という構図があります。
そのため、受動喫煙が長期化し、被害が大きくなる傾向があります。
また、人の目が多い公共の場や飲食店とは違って、家庭内での喫煙は外部から見えないため、外部からの指摘や顰蹙の眼で受動喫煙を意識する可能性も低い傾向があります。
それらの理由から、家庭内に受動喫煙の被害者がいたとしても、どうしても放置、見逃されがちなのです。
職場や公共の場の代わりに、家で喫煙している
また、受動喫煙対策の各種法令が整備されるにつれ、オフィスや屋外では、タバコを吸う場所が減ってきており、それは良いことなのですが、そのため、
「せめて家では好きなだけ」と、自宅で喫煙をすることが増えた、という例も考えられます。
一人ぐらしで防煙の設備が完璧なら他者への受動喫煙問題はないことになりますが、同居人がいる場合には、大きな問題となってきます。
外で受動喫煙の被害を減らした代わりに、家族を受動喫煙の被害者にしているわけです。
子どもは物言えぬ被害者!
受動喫煙の被害に遭いながらも一緒に住んでいる子どもは、決して、
“受動喫煙の被害を理解した上で、家族の喫煙を認め、受動喫煙を受け入れている”
わけではありません。
ニオイの感覚も麻痺し=多くの動物は、ニオイで安全か危険かを察知します。クサイものはたいてい有害です=、将来的な恐ろしさを知らず、拒むことすら考えられずに、日々を過ごし、ゆっくりと健康を害しているのです。
子どもは身体が小さく、吸収も早いので、健康への影響はなおさらです。
そして、自覚できる症状が出たとき初めて、家族の喫煙で自分の健康が害されたことを知るのです。
(なかには、病気になっても、受動喫煙のためとは思わず、運のようにとらえる人もいます……)
親には子どもを守る義務があります
受動喫煙対策の各種法令が制定されるまでもなく、大人には、子どもが健康被害に遭うことを回避する義務があります。
子どもが受動喫煙の被害に遭わないように手を打つのは、大人たち全ての人の義務です。
三次喫煙の被害も起きます!
子どもの前でだけタバコを吸うのをやめて、別室で喫煙しているという人もありますが……、
煙はいとも簡単に別室に流れますし、ベランダ喫煙でも、サッシの隙間から部屋に入ってきます。また、三次喫煙は避けられません。
それでは子どもの健康被害は無くなりません。
☆三次喫煙=サードハンドスモーク=残留煙、については本コラムこちらをご参照ください。
実態の把握は難しい
「子どもを守る条例」が施行されてからも、調査員が家庭内に入り込むようなことはできず、家庭内での受動喫煙を本当に防げているのか、実態の調査は難しいといえます。
ましてや、家庭内での受動喫煙被害に対して、現状の規制では、強制的に被害を止めることは無理があります。
家庭内暴力などの児童虐待と同等にとらえた、より強制力のある改正が今後望まれます。
喫煙者である当人の意識を変えることが求められる
前述したように、飲食店やオフィスとは異なり、家庭内での受動喫煙被害を、外部からの実行力で防止することは、困難です。
同じく、子ども自身が受動喫煙の被害を回避することも、非常に困難です。
家庭内での受動喫煙を防ぐには、どうしても喫煙者自身に行動を変えてもらう必要があります。
受動喫煙被害が起こらないような行動を取ってもらうには、まず、受動喫煙の被害の実態を知ってもらうことです。
喫煙者自身の努力、他の家族の努力が問われますが、家族以外にもできることはあります。
行政や企業でも、受動喫煙の被害や防止策の啓発活動を行い、受動喫煙に対する関心を高めていくことは、できるはずです。
行政のこれから
冒頭にあげた条例の末尾には、このような文書があります。
検討)2 都は、この条例の施行の日から起算して一年後に、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
これは、2019年4月以降に、より強制力のある条例に改正される可能性がある、ということです。罰則や、通報の制度を盛り込むことが、期待されます。
※草案ではそれらがあったのですが、条例制定を支持する政党からも反対され、まずは見送られました。
日本における受動喫煙対策は、動き始めたばかりなのです。
子どもは国の宝です。
周囲の大人たちの心がけひとつで子どもたちの未来も変わってしまいます。
子どもたちの生命や健康が脅かされることなくすくすくと育つ環境を作り続けていくことは、私たち大人の義務と責任といえるのではないでしょうか。
子どもの受動喫煙の防止は、その一つだと、考えます。
外国では法制化も
イギリスでは、すでに法制化が進んでいます。
『STOP受動喫煙 新聞』9号では「子どもを乗せた車内喫煙に1万ポンドの罰金」記事を、
12号では「英当局が2歳児を保護。理由は“両親がタバコを吸い過ぎるから”」を掲載しています。
関連→本コラム 自宅での受動喫煙 その1 – 家族による喫煙