タバコの「税」はなんのために?

 昨年の記事ですが、スポーツの評論家が、タバコの「税」について、こんな主張をされていました。

 受動喫煙・タバコ問題全般に関して、とても共感できるところが多くありますが、ちょっと違うかも、という点もあります。しかし多くの人の考えもこうなのでは、と参考になる論説と思います。

 当サイトや『STOP受動喫煙 新聞』の読者の方々は、どこに賛成し、どこに違和感を覚えるか、機構の既出の考えはのちに示しますが、まずは考えながら以下をお読みいただければ。

 たばこ税増税をきっかけに考える喫煙者と非喫煙者の摩擦。「感情論」と「勘定論」に分けることが重要 二宮清純
対立を煽るのではなくお互いが共存できる社会に

  =『中央公論.jp』2021年10月13日=

 以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

“私は、たばこの税金は欧米並みに高くしてもよいと思っている。少々たばこの税金を高くしても、その税金がどこに使われているかをはっきり見えるようにすることのほうが、喫煙者と非喫煙者の共存に繋がると考えるからだ”

“1969……都知事が、東京都の公営ギャンブル全廃を宣言……しかし、その収益は、教育文化・医療・社会福祉などの充実、具体的には、学校や病院などの建設にも役立っていたのだ。
 このことがわかっていないと、ギャンブルは子供の教育に悪いとか、生活環境が悪くなるなどと一方的に批判されることになる。もし、競輪場からの収益が学校や病院などの建設にも役立っていたとわかれば、周囲の反応も多少は変わっていただろう。結局、撤退によって都の収入は大幅に減少した

“ 同じようなことが、現在のたばこにも言えると思う。ただし、たばこの場合は、吸う人自身の健康もそうだが、副流煙が大きな問題となる。特に子供や呼吸器疾患のある方には深刻だ。副流煙の対策としては、当然、しっかりした分煙が必要だが、そのためにはお金もかかるはずだ”

“ もちろん、喫煙のマナーが良くない人は論外だ。ポイ捨て火事や、手に持ったたばこが子供の目の前に来て危険な場合もあるから、そういうことのないよう周知徹底させる必要があるのは言うまでもない。
 いや、火災を招いたり、子供の安全が損なわれたりすると判断した場合、もう少し厳しいペナルティがあってもいいのではないか、とすら思う。これはマナーの範疇を超え、ルールの問題であるからだ

“新型コロナが落ち着けば、インバウンドの観光客が戻ってくるはずで、当然、なかには喫煙者も多いだろうから、どこにいけば喫煙できるかをわかりやすく表示しておくなどの対策も必要になるだろう”

 以上のギャンブルの例えなどから、タバコの税の使われ方についての言及が。

“ 税金を上げ、その税収で喫煙環境を整備することで、非喫煙者も守られるし、結果的に肩身の狭い喫煙者も守られる”

“たばこ税の収益が喫煙施設や分煙環境の整備のためだけでなく、公園や病院や学校などの社会インフラの充実やまちづくりのために使われていることがわかるようになれば、喫煙者と社会とのぎくしゃくした関係も多少は緩和できるだろう”

“ たばこを吸うこと自体は法律に違反しているわけではない。嗜好品としてのたばこを吸える環境にするために、税金を高くして、社会環境の整備に充てるようにするのだ。そうすることで、嗜好品を愉しむ権利が守られるし、非喫煙者を副流煙から守ることもできる”

課税は、“そのモノが売れたほうがよい” となる

 『STOP受動喫煙 新聞』の2号に税理士である当機構理事長、9号では禁煙運動にかかわっていた弁護士(故人)の、それぞれタバコの税についての問題と、改善法が掲載されていますので、詳しくはそちらを購読して読んでいただきたいのですが――、以下にかんたんに要点を述べてみます。

 その両紙面の一部(両方を重ねています)

 
 ようするに、高額の課税をしているモノ、ここではタバコが、たくさん売れれば、そのぶん行政・自治体には税収が増え、つまり自治体の財政が潤うので、行政・自治体としては「タバコは売れたほうがよい」、ということになっているのが、最大の問題です。

 単純に、“値上げすれば、売れなくなるから、増税すればよい” と思っている人が多いようですが、値上げは良いとしても、それを税だけに求めるのは、おかしいことなのです。

タバコ税収は、タバコ対策に使われない

 そして、現状、タバコの税収は、タバコ被害をなくすことにはほとんど使われず、他の公共事業に使われ、“タバコが売れているおかげで、市民の生活がよくなっている” という理屈になっているのです。

税は懲罰ではない

 そもそも、税というモノには、懲罰的な意味はないのです。たとえば所得税は、“働くのは悪いことなので、罰金”ということではなく、「たくさん働いて、よりお金もちの人はより税を納めて、社会に役立ててください」という意味です。
 それを勘違いして、税を罰金のように、タバコの値上げに使え、という主張は、ちょっと変なのです。(税が正しく使われているかは、別問題です。)

売れなくなると税収が減るから、あまり増税はしない

 実際は、あまり増税して値上げすると、売れなくなって税収が減っては困るから、増税できない、となっているようです。

懲罰の課金を

 では、どう値上げするのか。単なる商品の値上げでは、タバコ会社が潤うのでは……?
 そこで、本紙9号で弁護士が主張されているのが、「税」ではなく、「課徴金」という制度に転換すればよい、ということです。国産品を守るために、輸入品の代金に課徴金を加えることなどが行われてきたそうです。このように課徴金なら、その収入をすべてタバコ問題の解決に使え、どんどん値上げすることもできるとのこと。

代案は「目的税」

 もし、その急な変更がむつかしく、税のままで、というなら、『STOP受動喫煙 新聞』36号の松沢成文理事の論説にありますように、
「目的税」という方法も考えられます。これも課徴金のように、その問題の解決のみに使われる税ということです。

 タバコ問題を考えるみなさん、いかがでしょうか。
 そもそも厚労省のような健康をつかさどる省庁ではなく、財務省という税の省がタバコを扱っているという世界でも珍しい“体質”が、問題であるのです。

[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓で引いてみてください。
 公園の無法喫煙、規制せず・対策をとらない自治体 JTからの寄付を受けるところも ’22年1月

 平気で路上喫煙する者たちへの苦情に、行政は知らんぷり ~ 宮城県・仙台市 / タバコ「税」での解決は? ’20年12月

 “新型コロナ”で政府が「禁煙」「タバコ問題」にほとんど触れていないのはなぜか ’20年5月

 1200万円の喫煙所!? ~ 京都府 ’21年4月

 各地の自治体(県や市)が「JTから多額の寄付」を受けています=国際条約違反=日本禁煙学会・『赤旗』紙が追及 ’20年8月

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