飲食店禁煙化、法施行2カ月後の実態調査(’20年6月)
この4月の「改正法」施行により、どうなったかの、飲食業界サイトでの調査が発表されました。
飲食店は「原則禁煙」、その後の実態は? 4月以降の喫煙環境を508店舗に調査
=『Foodist Media』2020年07月21日=
まず、1年前の’19年4月の禁煙・喫煙はどうだったかの質問があり、現在どうなったかの比較が出ています。それをまとめますと――、
’19年4月 → 現在(’20年6月)
全席喫煙可:199(39.2%) → 83(16.3%)
屋内分煙:43(8.5%) → 25(4.9%)
屋内禁煙(屋外喫煙スペースあり):74(14.6%) → 108(21.3%)
全面禁煙:192(37.8%) → 292(57.5%)
全面禁煙店が、ちょうど100店増えています。回答数は508ですから、約5店に1店は分煙や屋外灰皿など何らかの喫煙可能店から、敷地内完全禁煙に変わったということになります。
詳しい本文を見てみましょう。以下抜粋、「……」は文省略・本文中の太字化は引用者によります。
“■全席喫煙可⇒全席喫煙可
変わらず「全席喫煙可」を継続させた理由は、「来客者の多くが喫煙者だった」というものに加え、「喫煙可能の店舗規模であった」「従業員を雇っていなかった」など、対象外だったというものも多い。裏を返せば、対象でなかったらそのままで良かったと考える店も少なくないということでもある”“■全席喫煙可⇒全面禁煙
全席喫煙可だったのを一気に全面禁煙としたのは……約3割(67店舗)。理由をみてみると、「場所がない」「屋外にスペースがなく、また店内の構造上、屋内喫煙場所の設置は無理」というものが圧倒的多数。そのほか、「ランチタイムは禁煙にするなど、徐々に禁煙化を考えていた」といった声が散見”“■全席喫煙可⇒屋内禁煙(屋外喫煙スペースあり)
屋外に喫煙スペースを設け屋内禁煙としたのは、「全席喫煙可」だった店のうち約2割(38店舗)。やはり「お客様に喫煙者が多い」「喫煙者の来店減少防止のため」と、喫煙者の来店頻度が減らないようにしたいという考えがほとんどだが、……“屋内分煙をしたいが、諸事情から難しい”という訴えを匂わせる声が目立つ。また、一旦は屋内分煙を検討したものの、非喫煙者に対してより配慮すべく、屋外にスペースをとったという店舗もあった”“■全席喫煙可⇒屋内分煙
「全席喫煙可」だった店舗のうち、屋内分煙を可能にできたのはわずか6%。対象外だった店舗を除くと、屋内に喫煙専用室を作ることはかなり厳しい現状がうかがえる”
2ページ目、さらに詳しい変化の状況、法令への対策などが載っていますが、興味深い点を抜粋します。
“「非喫煙者への配慮から分煙にしていたが、それゆえのトラブルを経験したため、すっかり禁煙にした」(東京都/和食)という声や、「お子様連れやご年配のお客様が増えたため、全面禁煙にした」(東京都/イタリア料理)という声からは、外食のあり方が変容していることも見て取ることができそうだ”
“すでに屋外に喫煙スペースをもうけ、屋内は禁煙にしていた74店舗のうち、それをキープしたのは7割(52店舗)。26%にあたる19店舗は全面禁煙にしている。そこには止むに止まれぬ事情があることも明らかになった。
「店舗外(テラス席)にて喫煙可能としておりましたが、ビル側が共用部での喫煙が禁止となりましたので……」(東京都/アジア料理)
「出店している建物自体が禁煙のため」(東京都/その他)ビルの中に入っている店舗だと、屋外にスペースを作ることもできず、ビルの方針に従うしかないというわけだ”
最後のページで、「本音」などが述べられています。
(以下、画像はクリックで拡大します)
禁煙店のうち15%超が、喫煙場所を設けようと考えているとのことです。
“全面禁煙をうたっている店舗は、8割以上が今後も喫煙スペースを設ける予定はないと回答。ただし、今後設ける予定があるという店舗や、「予定はないが、できれば設けたい」と本音を漏らす店舗もある。その理由は大きく「他店との差別化」「来店チャンスの損失防止」という考えだ”
禁煙・喫煙可は、営業上どうなのか? のとらえ方は?
“Q.喫煙環境を設けることは、店舗の売上や来店客数にどのように影響すると思いますか?
大きなプラスになる:57(11.2%)
プラスになる:152(29.9%)
マイナスになる:62(12.2%)
大きなマイナスになる:34(6.7%)
どちらとも言えない:203(40%)「大きなプラスになる」「プラスになる」という回答は209店舗(41.1%)で、「マイナスになる」「大きなマイナスになる」とした18.9%(96店舗)の倍以上。さまざまな問題をさておくと、売上にとって喫煙環境は設けるに越したことはないと考える店舗が多いことがわかる”
“「プラスになる」とした店舗の業態は、アルコールを中心としたメニュー展開をするバー、そして居酒屋・ダイニングバーが大半……
「滞在時間が長くなり客単価が上がる為」(東京都/専門料理)
「タバコを吸う方の方が単価が高い傾向にあるため」(東京都/イタリア料理)
「なんだかんだ言っても、やはり団塊の世代の喫煙者はお金を落としてくれます」(東京都/イタリア料理)”
しかし、この“喫煙客のほうが単価が高い”は、どうも不思議に思います。スナックや一部の喫煙喫茶ならあるかもしれませんが、一般飲食店では、逆と思っていましたが?
神奈川条例に従い’10年に全店禁煙化した「ロイヤルホスト」の、店長さん(横浜市の馬車道店)に2012年頃に聞いてみたところ、
「商談利用のサラリ―マンはほとんど来なくなったが、替わりに中高年女性グループが増えた。おかわり自由のコーヒーだけのサラリーマンらよりも、女性グループはケーキなどたくさん注文してくれるので、売り上げは上がった」と、笑顔で語っていました。
(その後の同チェーン全国データを、大和浩教授がまとめ、自身のサイトなどで公開しています→『STOP受動喫煙 新聞』第30号–2020年・春号でも掲載しています)
“「マイナスになる」と回答した店舗の業態にも、特徴的な傾向がある。最多は女性客や家族連れが多く来店するカフェ。うどん・そば、ラーメン店のような回転率重視のところは「喫煙スペースを設けることで集客増になるとは考えにくい」(東京都/そば・うどん)という声がある一方で、「プラスになる」という意見も。店の規模やメニュー構成によって意見が分かれるのであろう。そのほか、喫煙する人が減り、また客からの禁煙席要望が増えたことを実感する声が多く見受けられた”
“【回転率が下がる】
「回転率が下がるため」(東京都/ラーメン)【女性、親子連れが多い】
「来客は親子連れが多い」(東京都/カフェ)
「若い女性中心の店舗のため」(東京都/カフェ)
「喫煙者がすごく減った。お客様に家族づれが増えた」(東京都/ラーメン)【料理の味を邪魔する】
「たばこの香りが邪魔するため」(東京都/アジア料理)【ご時世】
「禁煙席のご要望が多いので」(東京都/フランス料理)
「タバコの臭いに敏感な人が増えた」(東京都/フランス料理) ”
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