決まっていた“タバコ禁止法”が撤回!? 「税収」名目の圧力が ニュージーランド

 困ったことです。最終決定が覆るなんてことがあるのですね。
 可決時の記事→生まれた年が2009年以降の人は、一生紙巻タバコを買うのも貰うのもできません・法案可決 ~ ニュージーランド ’22年12月

 どんな圧力があったのでしょうか。

 NZで「たばこ禁止」法を撤廃へ 3党が連立政権樹立で合意
  =『毎日新聞』2023/11/24 18:02(最終更新 11/25 19:45)=

 以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

“第1党となった中道右派の国民党は24日、友党のACT党と、ポピュリスト政党のNZファースト党と連立政権の樹立で合意……3党は、2009年以降に生まれた人に紙巻きたばこを販売することなどを禁止する世界初の法律を撤廃することで合意した”

 後日、さらに詳しい外国の報道が。

 ニュージーランド新政権、「たばこ禁止法」撤廃の方針 保健専門家ら批判
  =『BBC NEWS JAPAN』2023年11月28日=

“クリス・ラクソン首相による新政権が発足……減税の代替財源を確保するため、世界で最も進んでいる「たばこ禁止法」を撤廃する方針を示しており、保健専門家らが非難している”

“たばこ禁止法は、2009年以降に生まれた人への紙巻きたばこの販売を来年から禁止……ジャシンダ・アーダーン前政権下で導入された

“ニュージーランドでは、予防可能な死亡の原因のトップが喫煙となっており、若者に喫煙習慣を身につけさせないのが目的。禁止法は、たばこ販売店数の制限や、たばこに含まれるニコチン濃度の低減なども含まれ、毎年5000人の命が救われるとされてきた”

“たばこ禁止法は公衆衛生の政策として高く評価される一方で、国内の一部のビジネス団体からの反発も招いた。街角で新聞などを売る小売店経営者らは、政府の補助金があっても収益が失われると批判した”

“新首相を含む一部の議員らは、禁止法によってたばこの闇市場が生まれると主張してきた”

“ニュージーランドは、2025年までに国民の喫煙率を5%まで下げ、最終的には喫煙を完全になくすことを目指している……現在の成人の喫煙率は約8%

“保健衛生の専門家らは、突然の転換を強く批判……リチャード・エドワーズ教授は、「世界をリードする極めて優れた保健政策にとって大きな退行だ」と非難……「ニュージーランドのほとんどの保健団体は、政府の行為にがく然として、撤回を求めている」、「政府は世論を無視し、大多数の保健専門家、医師、看護師らを明らかに無視している」”

“先住民マオリ族の全国的な保健組織は、「すべてのニュージーランド人の健康と福祉に対する非良心的な打撃」……マオリ族の間では、喫煙率の高さやたばこ関連の病気や健康問題の多さが大きな問題となっており、たばこ禁止法がその改善に寄与すると複数の専門家が期待していた”

“先月14日に総選挙があり、ラクソン氏率いる中道右派の国民党が得票率38%で第1党となった……たばこ禁止法については、国民党は選挙戦で触れていなかった。そのため、法律がそのまま維持されると考えていた健康問題の専門家らは、撤廃の方針に衝撃を受けている。選挙戦では、ニュージーランド・ファースト党(投票率6%)だけが、同法の撤廃を主張していた”

“ニュージーランドで禁煙拡大に取り組む「アクション・フォー・スモークフリー2025」委員会……委員長は、「たばこを吸い続ける人に税収減を補わせるというのは、まったくショッキングな話だ」”

“(英語記事 Shock as New Zealand axes world-first smoking ban)”

 “闇市場”ができるなんて理由になりません。では麻薬や大麻なども解禁したほうが社会がよくなるというのでしょうか。喫煙規制に反対する連中のありふれた屁理屈です。

 ニュージーランド、たばこ禁止法を撤廃 減税の財源確保のため
  =『CNN.co.jp』2023.11.28 Tue posted at 20:00=

“新政権は、昨年成立していたたばこ禁止法の撤廃を決めた。減税の財源を確保するためとされるが、保健当局者や反たばこ団体が強い反発を示している”

“法律は、2009年1月1日以降に生まれた世代へのたばこの販売を禁止し、違反者には最大15万NZドル(約1360万円)の罰金を科す内容。先進的な政策として注目を集め、来年7月までに施行される予定だった”

“同国では先月の総選挙を受け……連立政権が発足したばかり”

“ラクソン氏は禁止政策の一部に同意できないと述べ、法の施行は闇市場の拡大を招くと主張……同時に、国内の喫煙率は下がっていると強調。引き続き禁煙教育を進めると表明”

“禁止法が世界の注目を集めたのに続き、英国も若者の喫煙率を段階的に下げる計画を発表している。英首相府の報道官は、同国の方針に変更はないと述べた”

“新政権のウィリス財務相は……禁止法を来年3月までに撤廃し、たばこ販売による増収を減税に役立てる方針を示した”

“対してヴェラル保健相は、前政権と真っ向から対立する政策だと反発を示し、「喫煙率を下げて8万人の命を救うための措置を、減税のために覆すとは」と非難”

“反たばこ団体からも「国民の命がたばこ業界の犠牲になる」など、失望の声が上がっている”

 ニュージーランドが「たばこ禁止法」を廃止へ
  =『減税新聞(N)』2023年11月28日 19:48=

“昨年12月に
2009年1月1日以降に生まれた人へのタバコの販売を禁止する法案
が可決し、2024年7月から段階的に導入される予定でした……
そんな世界が注目している法律をニュージーランド政府はひっくり返すのですから、これは大きな出来事です”

“なぜ「たばこ禁止法」が廃止へと向かったのでしょう。
その答えは
減税と連立政権”

 だから、タバコの税なんか廃止して、代わりにもっと高い「課徴金」を課すべきなのです。
 記事にあるように、「吸い続ける人に税収減を補わせるというのは」、筋違いなのです。

【追記】翌年の報道もありました。

ニュージーランド、たばこ販売禁止法を撤回 政権交代で方針転換
  =『Forbes JAPAN』2024.03.01 13:30=

“ニュージーランド政府は2月27日、前政権が打ち出した禁煙法を撤回すると発表した。公衆衛生の専門家や禁煙団体らからは非難の声が上がっている”

“方針転換は、クリストファー・ラクソン首相率いる国民党政権が掲げる政策の一環……国民との対話や討論を求めることなく、法律の発効を阻止するという”

“今年7月に施行される予定だった「禁煙環境および規制製品法」は、2009年1月1日以降に生まれた国民へのたばこの販売を全面的に禁止するもので、世界で最も厳しい禁煙法とも言われていた”

“副保健相は記者会見で、保守連立政権は来年までに国民の喫煙率を5%未満にするという目標を掲げているが、前政権とは異なる方法を取る意向だと説明。だが、地元紙……禁煙法の一部を維持するよう求める政府保健当局者の嘆願を、コステロ副保健相が拒否したと報じた。同副保健相が拒否したとされる提案には、たばこの購入可能年齢を18歳から25歳に引き上げるというものがあった”

“同国の禁煙法は、ジャシンダ・アーダン前首相率いる労働党政権の下で2022年12月に可決……この野心的な法律には、たばこ製品を販売する店舗数を減らし、たばこ製品に含まれるニコチン濃度を下げ、2009年1月1日以降に生まれた国民へのたばこ製品の販売を全面的に禁止することなどが盛り込まれていた。2027年から毎年たばこ製品の購入可能年齢を引き上げることで、最終的な目標が達成されることになっていた”

“ところが、昨年10月に行われた総選挙で勝利したラクソン首相率いる連立与党は、この法律が施行される前に廃止する方針を示し……同法を撤回すればたばこの販売から税収が入り、闇市場の創設も防ぐことができると主張……撤回することで、たばこ販売による年間約10億ニュージーランドドル(約910億円)の税収が保たれると……この法律によって死者数が激減し、国の医療制度が2040年までに約14億NZドル(約1300億円)節約することができるとの研究結果にも疑問を呈した”

“撤回の決定は、国内の保健関連団体から激しい批判を浴び……公衆衛生団体アオテアロアは、禁煙措置がたばこの闇取引を助長するという「ゾンビ論法」は誤りだと指摘。「善良な政府であれば、たばこの闇市場が拡大するかもしれないという脅威に対し、経験に基づいて支持されている禁煙措置を放棄しない」”

【追記2】
 このことについて触れている、各国の禁煙法についての記事が’25年にありました。

「たばこのない未来」は実現するのか? 前進と後退を繰り返す世界
  =『Forbes JAPAN』2025.11.24 12:00=

“ニュージーランドが2027年から、2009年以降に生まれた人が合法的にたばこを購入できないようにするなどの禁煙対策を予定していた……然の禁止ではなく段階的な廃止という方針だったが、その有効性は試されることなく撤回……政権交代により、2022年に制定された法律が廃止された……この法律は広く国民の支持を得ていた。2023年に政権を掌握した保守連立政権は、右派ポピュリスト政党であるニュージーランド・ファースト党の要請を受けて方針を転換したとみられている。新政権による減税措置は、たばこ税で賄うとされた。これは、たばこの段階的廃止に関するもう1つの懸念事項、つまり、公的医療費の削減によって相殺されると予想されるにもかかわらず、予防にかかる費用と短期的な税収の損失を浮き彫りにしている。

だが、英国では現在、同様の禁止措置の導入が検討されている。この措置はまだ施行されていないが、現時点では政府と国民の支持を得ている”

“それでもなお、ニュージーランド政府は禁煙国家の実現に引き続き取り組む姿勢を示している。ポルトガル、カナダ、オーストラリアなども同様の目標を設定しており、今後5~15年以内に喫煙者の割合を5%以下に抑えることを目指している”

 

 
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓やカテゴリーで引いてみてください。
 ニュージーランドのタバコ撲滅政策の理由は ~ 石田記者が解説 ’22年9月

 紙巻タバコが法律で「生涯禁止」に 電子タバコも規制 ~ イギリス ’23年10月

 タバコの「税」はなんのために? ’22年5月

 外国では、屋外も禁煙化がすすんでいます ’18年11月

 自宅内、子ども・家族への受動喫煙が法で禁止に=タイ “DV(家庭内暴力)と判断” ’19年8月

 フィリピンでは厳しい禁煙法が! 高額の罰則、禁固・懲役も!? ’23年10月

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