山での受動喫煙 ~ なぜ空気のきれいなところで?
当サイトでも『STOP受動喫煙 新聞』でも、今まで取り上げなかった、新しい視点の記事がありました。
山、登山での、無法喫煙、受動喫煙の問題です。
禁煙とされていない山での喫煙マナー、どう考えますか? 山の疑問・難問、山岳ガイドが答えます!
=『YAMAKEI ONLINE(ヤマケイオンライン)』2021年02月12日=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。
質問:低山の山頂でタバコを吸っている登山者を見かけます。タバコを吸わない私にとっては不快で仕方ありません。ひどいときは灰皿を持たず山頂の人ごみの中で吸っている人もいます。そういうときは、やめていただくようにお願いをするのですが、口論になった経験もあります。
山での喫煙マナーは下界よりかなり遅れているような気がします。禁煙とされていない山での喫煙、どう考えていますか?“山でも、街でも、タバコに対する視線は厳しさを増しています。……1960年代、登山者の喫煙率は非常に高かったです……山を見上げながらパイプを咥える写真が雑誌『山と溪谷』にも出ていました。当時、山に向かう重要な手段だった夜行列車の中では、タバコの煙で霞がかかったようになっていたのを忘れません”
“登山とタバコの関係では、呼吸器を激しく使う登山行為にタバコは悪影響があるのは当たり前、タバコの不始末による山火事など、悪いことはいくらでも挙げられます”
“非喫煙者が、これだけ増え、副流煙による健康被害が問われだすと「僕の身体に悪くても、僕の問題だから文句言わないで!」と言いにくい情況です”
“今、ほとんどの山小屋は小屋の中では禁煙だし、歩行中の喫煙もダメです”
“50代男性さんは、現在では多数派になっているタバコ嫌いであると同時に、山での喫煙マナーが下界より、かなり遅れていると感じているようです。タバコを吸う人は「山は禁煙じゃないんだから、いいじゃないか!」という意識を、この際、変える必要がありそうです。山で喫煙する人は、近くでタバコを吸われるのを嫌がる人がいること、それも日々、その比率が増え大多数になっていることを理解する必要があります。人が集まりやすい山頂では特に、街同様の気を使うべきだと思います。少なくともタバコの臭いが伝わるような場所では吸わない、もし、可能なら人から見える所で吸わないくらいの配慮をするべきです”
「見える所で吸わない」と聞くと、下界(街)の感覚では、隠れて吸っても、臭いが漂ってきたら意味がないではないか、とおもえますが――、これは、(その前に「臭いが伝わるような場所では」とあるので、)「隠れるところもない広い山の上で、姿が見えないほど遠い場所で」、という意味でとらえるべきでしょうか。
画像は会員提供、高尾山(東京都)の掲示(’21年2月。クリックで拡大します)。
困っている山の顔の絵がいいですね。
かなり以前からと思える掲示もありますが、しかし、「注意」ばかりで、「禁煙」は一部のようです。
新しそうな禁煙表示。
なぜきれいな空気のところで?
山できれいな空気を吸って、下界では得られない、爽快な気分になることは、山登り経験のない私でも想像がつきますが……、
なぜ喫煙者は、そんな “いい気分” のときに、それを台無しにする行為をするのでしょうか?
(ここからは受動喫煙から外れて能動喫煙のお話を少し)
画期的な卒煙方法である、「リセット禁煙」シリーズの、磯村毅医師の著作で読みましたが、(→確かこれ、『脳内ドーパミンが決め手「禁煙脳」のつくり方』)
人はみな、何か楽しいこと、ちょっとしたホッとしたことがあっても、脳内に、快楽を感じさせる「ドーパミン」という物質が出て、それで楽しくなったり、安心したりするのだそうです。
たとえば、食べ終わって満足、美味しかった、とか、いい景色を見たなあ、とか、友だちとちょっと楽しく話せた、とか、そのたびに、多少なりとも、ドーパミンが出ることで、満足感を得られているそうです。
しかし、喫煙をすると、脳内にドーパミンが、強制的に出てしまうとのこと。
ならいいじゃないか、と思えそうですが、脳はやがて、薬物に頼るのか、麻痺させられたのか、自然な状態、自力でのドーパミン放出が少なくなってきて、薬物の力を借りないと(喫煙をしないと)、ドーパミンがあまり出なくなってくるのです。
そこで、喫煙者(の脳)は、“楽しいはず” の場面になったとき、無意識のうちに、
「おかしいな、この場面で、幸せを感じない(=ドーパミンの出が悪い)ぞ……」
と感じて、
「そうだ、(ドーパミンを出すのには)タバコを吸わなくては!」
となるそうです。
磯村医師の本によりますと、“よくタバコをやめた人が「食べ物が美味しくなった」というのは、「味覚や嗅覚が敏感になった(正常に戻った)から」、と思われていますが、「それなら、まずいものにも敏感になるはず」なのに、みな「美味しくなった」と言う。ということは、味覚の復活よりも、満足感、ドーパミンの出が良くなった(戻った)のが理由である”、とのことです。
なるほど、と思いました。
もうおわかりですね。喫煙者は、空気がきれいなところに来ても、「何かが足りない!」と思って、タバコを吸いだすのです。
周囲への受動喫煙も、環境破壊も、かえりみずに。
ただでさえ、一定の時間が来たら吸い出すのに。楽しい“はず”のことがあるたびに、また吸いたくなる。
「脳がハイジャックされている」とは、受動喫煙の研究をいち早く始め発表した故・平山雄博士の言葉ですが、気の毒なものですね。
【追記】本ニュース続報
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