住宅で近隣からの受動喫煙が多発! 実例より ~ 解決の困難さ・方法は
当サイトでも多く引用させていただいている石田記者が、今年1月にこんな記事を書かれていました。
この記事の後、3月には当機構が相談を受けていた方がマンションの規約改正に成功しましたが(末尾に過去の関連記事リンク)、『受動喫煙対策を「プライベート空間」にも』とは、伏線となるような論説です。
受動喫煙対策を「プライベート空間」にもという訴え:近隣からのタバコ煙被害の実態とは
=石田雅彦 サイエンスライター、編集者(’23)1/19(木) 11:00=
以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。
“非喫煙者も喫煙者も在宅の時間が増えているが、コロナ禍以前から近隣からの受動喫煙の被害、タバコ煙による体調不良を訴える人は多い……実態はどうなっているのだろうか”
“戸建て住宅の場合は隣近所に、集合住宅では隣室や上下階に、喫煙者がいてタバコを吸った場合、そのタバコ煙が非喫煙者の生活空間に入り込んできて受動喫煙の被害をおよぼすという事例が起きる”
“ こうした近隣からのタバコ煙の被害の実態はあまり広く知られていないが、喘息などの持病を持つ人や化学物質過敏症の患者さんなどにとっては死活問題だ”
そして、石田氏が聞いた事例は。
“事例1
Mさんは、都内のマンション在住の30代の女性で家族3人(小さいお子さん1人を含む)暮らし……入居してからすぐ下の階の住人によるベランダ喫煙で苦しんできた……規約でベランダは共有部分になり、喫煙は禁止されているが、苦情を言っても下の階の住人は規約を守らずタバコを吸い続けている……タバコ煙は、部屋の中に侵入し、もともと気管支が弱いMさんは部屋で子どもと寝ていても咳き込むようになった。広くて日当たりのいいベランダなのに、洗濯物も部屋干しにしなくてはならなくなった”“管理している公営住宅公社に相談したが、隣人トラブルに関しては介入できないといわれ、マンションの管理組合に相談しても親身になって対応してくれなかったという。Mさんは、自分の体調への不安と同時にお子さんへの受動喫煙について心配しているが、どう対応したらいいのか途方に暮れている”
“事例2
都内の木造アパートの2階に住んでいる50代の男性K氏も、同じアパートの入居者からのタバコ煙に苦しんでいる……古い木造アパートなので、建て付けの悪い隙間から階下のタバコ煙が上がってくる……階下の住人は、1日3箱のタバコを吸っていると豪語してくる始末……煙が原因で眼疾をわずらってしまった……眼科医からはタバコ煙には気をつけ、早く引っ越すように言われたそうだが、経済的な理由で簡単に引っ越しできず……階下の住人は全く聞く耳を持たず、大家もタバコの煙が問題になったことはこれまで一度もないの一点張りで全く対応してくれない”“事例3
都内のマンションに家族と住む50代の男性M氏は医療従事者だが、ご自身と数年前に他界した父親や奥さんなど家族が、一致して階下からのタバコ煙により同じ体調不良の症状を起こしている……睡眠中に息苦しくなって目が覚め、喉が渇いて動悸や頭痛が始まるというもの。皮膚がピリピリしてかゆくなり、光をまぶしく感じるなどの症状も……マンションの理事会に訴え、喫煙している住人へ注意喚起をしてもらったが、改善にはいたっていない。管理会社、保健所、警察、弁護士に相談したが、いずれも室内の喫煙に関して罰する法律がないので喫煙をやめるように強制できない、という回答だったそうだ。また、喫煙者とおぼしき人が否定している場合、喫煙の証拠を得ることは難しい”“事例4
都内の7階建てマンションの4階に住む30代、男性のO氏は、両親と3人暮らしだが、かつて隣の住人と真下の3階からのタバコ煙による健康被害を受けていたという。隣の住人は主婦だったが、換気扇の下で吸うタバコ煙が自室内へ侵入してくるという事例が5年くらい続いた。階下の住人は高齢男性で、ベランダ喫煙のタバコ煙による健康被害が3年くらい続いた……タバコ煙を吸い込むと喉や目の痛みを感じ、顔の皮膚のしびれの症状も出た……コーヒーや菓子類の香りがタバコの匂いのように感じられることも起きた”“ タバコ煙の発生源が特定できていたことから、管理会社に訴えかけて喫煙をしないようにポスティングしてもらったり、管理組合の理事会でベランダ喫煙禁止の規約を作り、換気扇の下での喫煙を続けていた隣の住人に対しては訴訟を起こすと伝えるなどした結果、これらの近隣からのタバコ煙はなくなった”
最後の例のみ解決にいたったようですが、その他のように、被害が一向に改善されない話を多く聞いています。すぐに解決しそうな人・した人は相談や報告をしてこないので、私たちの耳に届くのが深刻な例ばかりなのは当然といえば当然ですが、それにしても「どうしてうまくいかないのだろう?」と、被害者と一緒に悩む日々です。
記事は続いて、どうすればよいのか、を考察しています。
“事例からわかることは……他者への健康被害を実感できない喫煙者の存在、そしてプライベート空間での喫煙に対し、やめさせる強制力がないということだ”
“解決するには、いったいどうすればいいのだろうか。以下に被害者の側からの意見を紹介する……「喫煙者はまわりの人を病気にする恐れのある行為をしている自覚を持つべき」……「タバコ税を大幅に上げればヘビースモーカーが減って被害に苦しむ人も減るのでは」……「タバコ煙が侵入してくることを測定し、それに基づいて保健所などが調査や取り調べができるようにしなければ問題は解決しない」……「他者の生活空間を……汚染して健康を害しておきながら、何も処罰されない現状は明らかにおかしい。法律で加害者である喫煙者に厳しい罰則を科すべき……」”
どれもその通りですが、これらは「解決法」にはなりません。あくまで将来的な、撲滅への活動の一環としての、意識や目標であり、一日も早く解決したい相談者への助言にはなりません。
「人を病気にする恐れのある行為をしている自覚を持つべき」
そうですが、ではどう自覚させるか、が解決法の第一歩です。これには、管理側が動かない例もあるようですが、管理者の義務として注意をさせる、その主旨は「あなたの今の状態の喫煙は、悪臭・受動喫煙という被害を他者に与えているので、自覚して、喫煙場所を変えるなどしてください」と厳しく注意することが考えられます。
「タバコ税を大幅に上げれば」これは将来の話です。※税収があることでタバコが奨められている国なので、税は廃止して課徴金などでの「値上げ」をすべきです。
「測定し、保健所などが調査や取り調べ」これもその通りですが、現状、保健所はそんなことをしませんので、将来の話です。
「法律で加害者に厳しい罰則を科すべき」これもそうですが、将来の話です。
どうも、やはりというか、解決できない被害者は抽象的な案だけで解決策が出ないようです。
記事は続いて法的な実例などをあげています。
“ タバコ問題に詳しい弁護士は、ベランダ喫煙による受動喫煙訴訟では5万円という補償額(慰謝料)だが原告が勝った事例があり、こうした判例を出すことで抑止効果が得られるのではないかという”
“ 判決では、自己所有のプライベート空間だとしてもどんな行為も許されるわけではなく、喫煙によって他の居住者に著しい不利益を与えていることを知りながらやめない場合、喫煙行為が不法行為となり得るとし、管理組合からの再三の注意にもかかわらず喫煙を続けたこともあり、損害賠償義務を認めている……原告側の代理人弁護士を務めた北條政郎氏に話をうかがったところ、法廷での尋問で被告の喫煙者がベランダでタバコを吸っていた事実を認めたことが裁判官の心証を変えたのではないか”
“ ただ、……吸っていないと主張した場合、喫煙行為を証明するのはなかなか難しい”
“近隣との関係は特にナイーブで誰しも争いたくはないが、泣き寝入りすれば受動喫煙の健康被害はどんどん悪化する”
“ 筆者も参加するタバコ問題の集まりには、毎回のように近隣からのタバコ煙に悩む異なった相談者がやってくる。潜在的な被害者は想像以上に多そうだ”
では逆に、苦情を受けた喫煙者はどうしているのか?
“ 一方、近隣から苦情を受けたことのある複数の喫煙者に、居住空間での喫煙について聞いたところ……吸える場所が減っているので自分の家や部屋では吸わせてほしい、専有部分などプライベートな場所での喫煙は許容されるべき、という意見が多かった”
“苦情が来た後には「吸う本数を減らした」「苦情が出る場所ではなるべく吸わないように注意するようになった」「居住空間では加熱式タバコに切り替え、紙巻きタバコは公衆喫煙所で吸う」などと答えた”
“ ただ、タバコ煙による被害を受けている人に話を聞くと、加熱式タバコのほうがむしろ有害で症状がひどくなるというケースも多い”
“都市再生機構の広報課に近隣からのタバコ煙被害について、どんな対策や措置を講じているか聞いたところ「UR賃貸住宅では居室内及び共用部における喫煙は、禁止しておりません。タバコの煙に関わるお申し出があった際には、エレベーターホールや共用廊下、バルコニー等での喫煙について、配慮を促す趣旨のビラを共用部に掲示して周知をしております」”
“集合住宅や住宅地では、タバコによるリスクが生じることもある。管理組合や管理会社、自治会などにとっても、喫煙について問題視することは火災などのリスク軽減や清掃などのコスト削減につながるだろう。だが、こうした回答をみる限り、誰もが健康で文化的な生活を安心しておくることができるようになるまでには時間がかかりそうだ”
“ 喫煙者は自らが発したタバコ煙が他者にどのような影響をおよぼすのか、あまり自覚していないようだが、前述した事例のようにひどく苦しみ、重篤な病気になる人もいるということをしっかり認識したほうがいい。もし仮に近隣からタバコ煙被害の苦情がきたら、喫煙室や喫煙所、周囲に誰もいない屋外などへ移動してタバコを吸う努力も必要だろう”
石田氏が最後に指摘しているように、喫煙者は“吸いたい”が先にあり、苦情を受けても、他者への被害の自覚がないようです(管理者も)。
この意識から変えさせていくことが必要です。
被害が続いている方は、まず当機構にご連絡ください。
画像は、マンション規約を改正させることのきっかけとなった、
大阪府吹田市のチラシ。(『STOP受動喫煙 新聞』43号に詳細)
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓やカテゴリーで引いてみてください。
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