マンションで受動喫煙撲滅の規約が新たに! 自室も「近隣に受動喫煙被害を与えること」は禁止に ~ 兵庫県明石市

 集合住宅での長年の被害者が、身を削る思いを重ね、規約の改正をさせ、そのことが大手新聞で紹介されました。

 このかたは、当機構への’21年8月からの相談者ですが、このような規約改正は本人の提案と、努力によるものです。

 規約に“近隣への迷惑行為の禁止”が載っているだけなら他のマンションでもありそうですが、自室の喫煙も問題視しての他家への受動喫煙禁止、とした例はあまりないと思います。その点を同紙はしっかり書いていますので、これは全国の集合住宅に波及するかもしれません。

 受動喫煙防止、自室も制限 明石の分譲マンションで規約改定
  =『THE SANKEI NEWS(產經新聞)』2023/5/25 11:30 加納 裕子記者=

 以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

“ 深刻な近隣トラブルに発展しかねない集合住宅での喫煙……分譲マンションが3月、受動喫煙防止を義務付けるよう管理規約を改訂した”

“喫煙トラブルが増える中、解決策の一つとして注目を集めそうだ”

“居住者が管理会社に「隣家の喫煙で健康被害が発生している」と対応を求めた。管理会社は注意を促す文書を掲示、管理組合の理事を交えた当事者間の話し合いも行われたが、喫煙者側は「部屋の中で吸っている」と説明するなどした”

“ 上階の居住者からも子供の健康影響を懸念する訴えがあり、管理組合が管理規約細則の改訂を提案、今年3月に成立した。喫煙禁止の場所をバルコニー(ベランダ)を含む共用部分全体に拡大し、室内での喫煙も念頭に「近隣に受動喫煙被害を与えること」を全般的に禁止する”

“住民の短大教授(62)は「喫煙者にも、周囲に及ぼす影響を考えてもらうきっかけになる」”

“ 受動喫煙トラブルに詳しい岡本光樹弁護士によると、ベランダ喫煙による近隣への受動喫煙を不法行為とする判例があるが、居室内で不法行為が認められた例はない。今回の改訂は、居室内での喫煙であっても受動喫煙被害を与えることを禁止する内容で、岡本弁護士は「被害者側の説得力を増すものと期待できる。喫煙者側も、明らかな規約違反しにくくなるのではないか」”

 紙面では、1面トップに載ったそうです。

 なお、記事の写真の注意掲示は、被害を管理会社に申し出たころのものです。

 肝心の規約の改訂の部分を会員に聞きましたので、以下に示します。※文面を聞いて当機構で作成したものです。


 記事は、簡潔に書いていますが、規約の内容は案の時点で二転三転して、ここまで来るのに大変だったそうです。

 そして具体的な被害の例、ほぼ一人で頑張った相談者の声が続きます。

住み慣れた家 手放すケースも
……自宅内というプライベート空間での振る舞いをめぐる問題だけに、深刻な人間関係の悪化にも発展しやすい。喫煙者側が回数を減らしたり加熱式たばこに変更したりして「十分に配慮した」と考えたとしても、被害者側は体調が回復せず、住み慣れた家を手放して引っ越すケースも少なくない”

“ 「うちが引っ越すのが最も合理的な選択だとも考えたが、そこでも同じことが起こるかもしれない。どこかで踏ん張って解決しなければいけないと思った」。兵庫県明石市の分譲マンションで受動喫煙を訴え、管理規約細則の改訂を提案した大学講師の女性(56)は苦悩を打ち明けた”

“当初は窓を開けていなくても一日に何度もたばこの臭いが室内に漂い、そのたびに気分が悪く、が痛んだ。10代の長女も「たばこの臭いとともに肺に異物が入ったように息苦しくなり、頭痛がした」……改訂後は改善されたが、女性は「また臭ってくるのではという不安感が残っている」”

“薗はじめ医師によると、受動喫煙症が慢性化すれば、煙を浴びていなくても女性のような症状が続くようになる。発がんの可能性もあり、「遺伝子の一部が損傷し、修復できなければがんになる。煙を浴びる量が少なくても起こり得るため、受動喫煙に安全なレベルはない」と指摘。国内では年間約1万5千人が受動喫煙によるがんや脳卒中などで死亡しているとの推計がある”

“マンション管理士で建築士……によると、多くの分譲マンションでは管理規約細則で共用部分が喫煙禁止とされているが、「バルコニーや自室換気扇下での喫煙を、どこまで制限できるかは難しい」。今回の規約細則の改訂については「バルコニーでの禁煙が明記され、専有部分も含めた受動喫煙被害に踏み込んだものになった」と指摘”

 記事では多くの住民が協力したようにも取れますが、喫煙隣人家族との話し合いや、規約改正の下書きへの修正の指摘などは、彼女がほぼ一人で行なってきたものです。規約改訂について理事会を開いたら、賛同する者も案外いた、ということです。
 (しかし、やはり、というか、この最初の提案のさいには理事から“喫煙者寄り”の意見を聞かされ、細則が可決されてからも、一部の人から激しい反発があったそうです。)

 この喫煙加害の隣人は、最初はベランダで吸っていました。それは管理会社立ち合いの話し合いを行なってやめさせたのですが、その“代替案”としてやむを得ず、廊下で喫煙することを合意(廊下も共用部で違反だが、構造的にベランダより受動喫煙がマシだったので)したところ、被害は一時鎮静化しました。

 しかし、廊下で喫煙する姿が見えなくなったと思ったのと同時に、また被害者の部屋に臭いが入ってくるようになったのです。

 その喫煙者の家には、小さい子どももいるそうです。

 記事は最後に、禁煙マンションと、なぜかJTの“提案”について付記しています。

“ 居室内禁煙をあらかじめ定めたマンションも登場している。東京都住宅供給公社は近年、専有部分含め敷地内禁煙とする新築の賃貸マンション2棟を供給し、居住者から高い評価を得た……公社は「……今後も禁煙物件を増やしていく」”

“ 日本たばこ産業(JT)は民間企業や自治体に対し、分煙の手法などを無償で提案する「分煙コンサルティング」を行っているものの、マンション管理組合からの問い合わせはほとんどないという”

 JTの“分煙”は職場や施設を対象にしたもの、集合住宅とはイメージが違うでしょうし、かなり高価だそうです。マンションの問い合わせは「ほとんどない」ということは、少しはあったということですね。JTに頼んで解決した例は、はたしてあるのでしょうか?

 
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓で引いてみてください。
 ベランダ喫煙は「マンション使用細則モデル」で禁止されています ’20年1月

 ベランダ喫煙に対し訴訟、最高裁へ ~ 大阪 ’23年4月

 受動喫煙をさせないことは「法律・条例で定められています」 ~ 自治体サイト啓発=足立区 ’23年2月

 マンション管理士コラム「ベランダ喫煙は許されるのか?」 ’21年9月

 在宅でベランダ喫煙が増加! 対策を大和教授が解説 ’22年12月

 部屋をタバコで汚した場合の「責任」と退去時の「相場」 ’23年4月

 「禁煙」賃貸マンションがまたできます ’22年6月

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