鉄道(駅・列車)の禁煙化の歴史

 昔は駅や列車の中でタバコが吸われていた……、と述べる記事はときどきありますが(→末尾に過去の関連記事リンク)、鉄道の禁煙化の歴史を詳しく記した記事がでました。資料・保存版といえそうです。

 鉄道ではかつて堂々とタバコが吸えていた! 駅と車内、禁煙の歴史をたどる
  =『Merkmal(メルクマール)』2023.5.3=

 以下抜粋、「……」は文省略・太字化は引用者によります。

“ 1974(昭和49)年、首都圏の駅での禁煙タイムが設定……国電区間、新宿・渋谷・高田馬場・お茶の水・四ツ谷の5駅。午前8時から9時、夕方の17時30分から18時30分の喫煙を遠慮してもらう、という趣旨だった”

“当時まず問題とされたのは、喫煙場所でのたばこをめぐるけむりの害ではなく、ラッシュ時の歩きたばこだった……現在では考えられないが、満員電車から吐き出された乗客の多くが、駅の階段でたばこに火をつけたのである。他人のたばこでやけどをする、火や灰が落ちて衣服が汚れる、ストッキングが焦げるなどの苦情が相次いでいた”

“ 1974年の新宿駅……中央線ホームを降り立った乗客の実に70%がたばこを手にしたというから驚かされる。ちなみにこの年の日本人男性の喫煙率は「82.9%女性12.9%

“ 禁煙タイムの設定にあたり、国鉄はポスター300枚を各駅に掲示したが、あくまでお願いするだけ、ぜひ協力を、という姿勢で、強制するわけにはいかないというのが当時の考え方だった”

“営団地下鉄(現・東京地下鉄)では、1970年から駅ごとに時間を決めて禁煙を呼びかけていたが、実効性は低かった

 駅の禁煙タイムなんてあったのですね。いつまであったのでしょうか。
 続いて、新幹線の今昔。「嫌煙権」運動にも触れています。

“青梅鉄道公園では、往年の新幹線電車を見ることができる……座席配置は現在と同じだが、窓の下には大型の灰皿、中央席と通路側の乗客用にも、手すりに小さな灰皿が……通路をはさんで灰皿が5個。この車両は15列……転換式の座席なので、座席を向かい合わせにしたときのために、よく見ると手すりの裏側にも灰皿がついている……1両で軽く100個を越える……16両編成……1500~1600個の灰皿があったのだ”

“ 現在、東海道・山陽新幹線で喫煙可能なのは、N700系に設けられた喫煙ルーム3か所のみ”

“東京駅では、列車折り返し時間の7分間で清掃を終わらせる優秀なスタッフが世界的に知られているが、大量の灰皿の吸い殻を片づける作業のあった時代は、清掃時間の短縮にも限界があったに違いない。当時の清掃員の方々の苦労がしのばれる”

“ 1976(昭和51)年8月、新幹線こだまの16号車・自由席の1両に禁煙車が導入……女性客や子連れの旅行者に好評で、ひかりにも禁煙車を、との声が高まり署名運動もはじまった”

“ 1978年、「嫌煙権確立を目指す人びとの会」が発足、「たばこのけむりが苦手です」のバッジやポスターが注目され……1980年には国と日本専売公社、国鉄を相手取り、列車内の禁煙化を求める嫌煙権訴訟も起こった。これらは公共交通機関が非喫煙者の声を取り入れていく契機となった”

“ 禁煙席と禁煙車は新幹線から在来線の特急や急行にも広がってゆく。翌1981年、在来線のテストケースとして、上野~新潟間の特急ときの12号車に、初めて禁煙車が設けられた”

“ 禁煙車の設定は当初は自由席主体で、指定席やグリーン車に登場するのは1980年代半ば……1984(昭和59)年夏のダイヤ改正で、新幹線と在来線特急・急行の26%が禁煙となった。この時期の国内航空路線の禁煙席は25~35%ほどである”

 値段の高い指定席やグリーン車が後回しだったというのは、今の感覚からすると逆のようにも思えます。飲食店では、高級店ほど先に禁煙になりましたから。

 数年前にどこかの芸能人が「タクシーは高いカネ払うのだから、喫煙させるべきや」と非論理幼稚な発言をしていましたが、そのような発想だったのでしょうか?

 さらに、なんと近距離の路線にも灰皿が?!

“ 東京近郊区間、中距離を走る列車にも窓辺に灰皿がついていた。特急や急行列車以外でも乗客はたばこを吸えたわけだが、ラッシュ時には満員状態になる都心部から70~80km程度の区間は禁煙となっていた。この区間はのちに延長”

“区間や時間を限定した禁煙車は、地方でも設定……こちらは嫌煙をめぐる取り組みというより、もっぱら非行防止の側面が強かったようだ”

 そして、「大きな転機」へ。

“ 1987(昭和62)年4月の国鉄分割民営化後、JR各社は禁煙への取り組みを強化……1987年7月、山手線の原宿駅・目白駅が初めて終日禁煙となった”

“ 昭和の終わりから平成にかけて、車内禁煙にも大きな転機が……JR九州では九州内の20線区が原則禁煙となり、「禁煙車」から「喫煙車」へと表示を改めて、喫煙可能な車両を限定。1990(平成2)年にはJR東日本もこのやり方に続いた”

“ JR東海1996年、16両編成の東海道・山陽新幹線の10両を禁煙車とし、初めて禁煙車と喫煙車の比率逆転

2003年5月、健康増進法が施行。受動喫煙への対策は努力義務だったが、2020年改正健康増進法により、公共施設・交通機関・飲食店などの屋内では原則禁煙とされた。限られた喫煙ルームを除いて、駅構内や列車の座席での喫煙はついに過去のものとなった”

 画像は大昔…でもなくて、10年前、「新横浜」新幹線ホームです。

 
[当サイト関連既報] ※他にもありますので、検索窓で引いてみてください。
 新幹線が「全席禁煙」に! しかし残る問題が? ’19年6月

 まだあった喫煙車にNHKも驚きの報道…? ’20年2月

 列車の座席での喫煙はもはや時代遅れ ’20年2月

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 以前は飛行機は喫煙自由、いまでは喫煙は「日本人の恥」 ’22年1月

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☆『STOP受動喫煙 新聞』でも、嫌煙権、新幹線の禁煙化について23号36号38号に掲載があります。

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